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音から光へ レーザー検査速度が従来の50倍に向上トンネル内部のひび割れを効率よく発見

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)

JSTnews 2016年3月号掲載

ひび割れなど外からは見えないトンネルコンクリート内部の欠陥を、レーザーを使って従来の50倍の速さで検出することに、日本原子力研究開発機構の長谷川登研究副主幹とレーザー技術総合研究所の島田義則主任研究員らの研究グループが成功しました。トンネルコンクリート内部の欠陥は崩落事故などにつながる危険があるため、目視と触診、打音法による定期点検を5 年に1回実施しています。国土交通省によると、道路と鉄道のトンネルは全国で約14,400カ所、総延長は約7,000キロメートルに及びます(2009年時点)。ハンマーでコンクリート壁面を叩く音の違いで欠陥を見抜く打音法は、高所作業で危険が伴ううえ、一晩で数十メートルしか進まず、膨大な時間と労力がかかります。

レーザー欠陥検出法はハンマーの役割をするレーザーを壁面に照射することで振動を与えて(振動励起レーザー)、同じ場所に照射された計測のためのレーザー(計測用レーザー)で振動の違いを検知して異常を検出する仕組みです。従来の方法では、検査を高速化しようとするとレーザー素子に過剰な熱が生じてレーザーの質が低下するため、計測の速さは2秒に1回と限られていました。

研究グループは、機器の冷却装置を改良し、効率よく熱を除去してレーザーの質の低下を抑えました。さらに振動励起レーザーと計測用レーザーの両方を高速かつ正確に壁面に当てる装置を開発し、従来の50倍にあたる1秒に25回の速度で検査できるようになりました。実証実験ではトンネル中央から天井までの距離に相当する約7メートル離れた場所からでも欠陥を検出することに成功しました。2年以内に鉄道のトンネルで性能を検証する予定で、打音法に代わる検査技術として実用化が期待されます。

岩手発 「ホタテや鮭の中華まん」「似合うヘアスタイルがわかるアプリ」 宮城発 「わかめで育てた羊肉」

JST復興促進センター

JSTnews 2016年3月号掲載

被災地域の企業と研究機関の連携を支援する復興促進センターの活動は、地元の新たな産業だけではなく、東北以外の暮らしも豊かにする新しい製品や技術を続々と生み出しています。

海の幸を包んだ中華まんじゅう(釜石海まん)は、世界の三大漁場である三陸産の魚介類を具材とし、津波に耐え岩間に咲く釜石市の花・はまゆりの酵母を皮に使ったこだわりの一品です。藤勇醸造株式会社(釜石市)、三陸いりや水産株式会社(釜石市)と北里大学が共同で開発し、釜石復興のシンボルの名産となることをめざします。

土地が海水に浸かった災いを福に変えたのが、南三陸産わかめで育てた羊の肉です。一般社団法人さとうみファーム(南三陸町)と宮城大学は、塩害地で栽培したソルトブッシュ(好塩性植物)や海藻を餌にした羊肉の生産に取り組んでいます。成分検査では通常の羊肉よりもミネラル分が多く、味覚センサーによる評価では味に厚みがあり、さらに羊肉特有のくせが少ないことがわかりました。「南三陸産わかめ羊」としてブランド化をめざし、試験販売しています。

「ビューティエキスパート」は、株式会社花耶(盛岡市)、株式会社ネオーラMB 研究所(仙台市)らと岩手大学が美容室向けに開発した、似合うヘアスタイルを提案するアプリです。タブレット型端末で顔写真を撮影し、同社の美容データに基づき、顔の形を8 パターン、目鼻のバランスを3 パターンに類型化し、似合うヘアスタイルを表示します。実証実験では顧客の満足度と再来店率が上がりました。

美容室でアプリを使って新しいヘアスタイルに挑戦できる日も、そう遠くないかもしれません。

人間のiPS細胞で作った腎臓組織をマウスに移植 尿を作る機能へ大きく前進

戦略的創造研究推進事業 CREST

JSTnews 2016年1月号掲載

人間のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った腎臓組織をマウスの腎臓の表面に移植すると、人間の糸球体にマウス生体の血管がつながることを、熊本大学発生医学研究所の太口敦博助教、西中村隆一教授らが明らかにしました。移植された腎臓組織では、マウスの血液をろ過する兆候も観察されました。

多くの腎臓疾患では、尿を生産する糸球体のろ過機能に支障がでます。その機能が低下することから老廃物や毒素が体内にたまり、やがて尿毒症になります。糸球体は、血管が糸球のように集まっており、血管に接する「ポドサイト」がろ過機能を担います。 腎臓の機能は一度低下すると移植以外では回復が難しいため、患者は人工透析治療を一生続けなければなりません。そこで、さまざまな細胞への分化が可能なiPS細胞への期待が高まっています。

太口助教らは2013 年に人間のiPS 細胞から試験管内で腎臓の組織を作ることに成功していますが、作られた組織が生体のものとどの程度似ているか、また生体内で機能するかは不明でした。今回は腎臓組織中の糸球体に焦点を当て、その構造と機能を詳しく検証しました。まず、iPS 細胞を遺伝子操作してポドサイトを観察しやすくした腎臓組織を試験管内で作り、糸球体ができる過程を解明しました。この時できたポドサイトは、実際の腎臓が作られる初期段階のポドサイトに非常に似ていましたが、血管と接していないために未成熟の状態でした。

そのため、この人間の腎臓組織をマウスの腎臓の表面に移植して観察を続けたところ、移植後10日目には人間のiPS細胞由来の糸球体にマウスの血管が入り込み、20日目にはポドサイトの形態が複雑化し、より成熟したろ過膜が形成されました。さらに、ろ過膜の外側にある糸球体の空間が拡がり沈殿物が見られたことから、血液がろ過されている可能性が示唆されました。

人間のiPS細胞由来の糸球体が生きたマウスの血管とつながったのは世界初の成果です。iPS 細胞の腎臓づくりは、患者の機能回復と共に、腎臓病の原因解明や新薬開発にもつながるものです。

小さくても強力な鉄系高温超伝導磁石

戦略的創造研究推進事業 さきがけ

JSTnews 2015年12月号掲載

新しい鉄系高温超伝導物質を磁石化することに、東京農工大学の山本明保特任准教授らが成功しました。

超伝導は特定の物質を極低温に冷却することで、電気抵抗がゼロになる現象です。永久に電気が流れ続け、強力な磁力を発生させることができます。リニアモーターカーや医療用磁気共鳴画像装置(MRI)などに利用されています。また、供給が不安定なレアアース元素から作るネオジム磁石らの強力な磁石は、ハードディスクドライブや電気製品のモーターなどに使われています。

超伝導磁石の冷却には、ここ数年の需要増大で世界的に不足している液体ヘリウムを用いることが多く、高値で入手しにくくなっています。より高温で超伝導を発現させるための研究が進められてきましたが、これまで鉄系高温超伝導物質の磁石化は技術が確立されていませんでした。

山本特任准教授らは、レアアース元素を含まず、液体ヘリウムの沸点(マイナス268.95 度)まで冷やさずに使える材料として、バリウムカリウム砒(ひ)化鉄という化合物に着目しました。この結晶をナノサイズ(ナノは10億分の1)に微細化し、工業プロセスで生産しやすい、多結晶の塊状(バルク状)にすることで、鉄系高温超伝導物質の磁石化に成功しました。

直径1センチメートルと小粒でも、ネオジム磁石の2倍以上の強い磁力を発揮し、硬く割れにくい特性があります。さらに、マイナス235 度以下で磁化できるので、小型冷凍機が使え、持ち運びに向いています。

将来は、小型のMRIや省エネ用のモーターなど、たくさんの応用が期待されます。

長生きの秘訣はアミノ酸の代謝促進

戦略的創造研究推進事業 CREST

JSTnews 2015年11月号掲載

健康で長生きすることには誰でも関心があります。生活習慣や運動など、長生きにつながると予想される要因はさまざまですが、マウスでさえ寿命は 2 〜 3 年もあるため実験に時間がかかり、寿命を延ばす仕組みの解明は難しい研究です。

魚介類や乳製品に含まれる必須アミノ酸のメチオニンは、食事から摂取する大切な栄養素ですが、これを制限することによって寿命が延びると報告されています。

東京大学大学院薬学系研究科の三浦正幸教授らは、寿命が約 60日と短いショウジョウバエの実験で、メチオニンから合成されるS アデノシルメチオニン(SAM)の代謝が長寿の鍵であることを明らかにしました。

三浦教授らは、老化したショウジョウバエ(以下、「ハエ」)の体内では SAM が大幅に増えていることを発見し、この代謝異常が寿命を短くすると考えました。さらに、加齢に伴って SAMを消費する代謝調節酵素Gnmt が一層活性化し、余分な SAMを消費して一定量に保とうとする現象を見いだしました。普通のハエが食事制限すると、飢餓のストレスで Gnmt がたくさん作られて長寿になることから、Gnmtを過剰にして SAM代謝能力をより高めたハエを作ったところ、SAM の増加が抑えられて、通常の約 1.2倍に寿命が延びました。一方で Gnmtを作らないハエでは、食事制限をしたにもかかわらず寿命が伸びず、Gnmt によるSAM 量の調節が長寿につながることがわかりました。

人間やマウスなど哺乳類にも SAMを一定量にする仕組みがありますが、種を超えて共通するかどうかは今後の検証が必要です。SAM の代謝を活性化することで、食べる量や質を変えなくても、食事制限と同様の効果が得られる薬や健康法が開発されるかもしれません。

マグロの乱獲を超えて 世界初、キハダを卵から幼魚まで飼育に成功

国際科学技術共同研究推進事業 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)

JSTnews 2015年10月号掲載

キハダの完全養殖をめざす近畿大学水産研究所の澤田好史教授らが、卵から幼魚まで育てることに世界で初めて成功しました。

完全養殖とは、人工飼育によって、成魚を産卵させ、稚魚から成魚に育てて再び産卵させること。2002年にクロマグロの完全養殖に成功した近畿大学の技術を生かして、パナマ共和国水産資源庁と全米熱帯マグロ類委員会が共同で挑戦しています。クロマグロとは遊泳行動や生息する海洋環境が異なるため、いけす網の構造や稚魚の輸送方法など新たな技術が必要です。

パナマには天然キハダの産卵場があり、謎が多いマグロの生育過程の研究に最適な環境です。6月、人工ふ化させて陸上水槽で育てた平均全長12.1センチメートルの稚魚238尾を海面いけすに移しました。全長5センチメートルを超えると遊泳速度も速くなり、狭い水槽では壁に衝突して死んでしまうためです。

稚魚は刺激に敏感で、水槽では光の調節や温度管理が必要でしたが、海でも荒天や海鳥に狙われる試練が待ち受けています。約 4 週間後、いけすには平均全長18.7センチメートルまで成長した幼魚68尾が泳いでおり、当初目標の20%を超える28.5%の生き残り率を達成しました。

キハダは乱獲や消費増大で減少し、準絶滅危惧種に指定されています。生育過程が解明されれば、資源量の保護や変動予測が可能になり、パナマにとって重要な漁業を持続させることができます。養殖技術が確立されれば、さらに経済発展への道がひらけます。

成魚になる2年後には、稚魚誕生のニュースを聞けるかもしれません。

がんの取り残しを手術中に見つける希望の光 蛍光イメージング試薬で微小がんを数分で検出

戦略的創造研究推進事業 CREST

JSTnews 2015年9月号掲載

東京大学大学院薬学系・医学系研究科の浦野泰照教授と九州大学別府病院の三森功士教授らは、がん細胞で活性が上昇している特定の酵素を検出するスプレータイプの蛍光イメージング試薬で、人間の乳がんを識別することに成功しました。

開発した蛍光イメージング試薬の有効性は、がんのモデルマウスで証明されてきましたが、人間のがんの性質は極めて多様で、実際の手術に使えるかどうかはわかりませんでした。乳がん部分切除手術で摘出して間もない臨床検体に、この蛍光イメージング試薬をスプレーしたところ、1ミリメートル以下の微小がんでも数分で選択的に光らせて、周囲の乳腺や脂肪などの正常部位と乳がんを識別できました。手術現場での実用性と人間の臨床検体での効果を初めて実証しました。

切除部位の断端(切り口)に微小がんの取り残しがないかを手術中に判断することが重要ですが、断端全面にわたる病理検査は困難で、がんを見逃してしまう可能性も指摘されてきました。この試薬を使えば、簡易かつ迅速に手術中にがんの取り残しを検出できるので、がん再発を劇的に低減できると期待されます。臨床医薬品としての市販化をめざし、産学医が共同して安全性・薬効試験を進めています。

見る角度で異なる画像を表示できるディスプレイを開発

戦略的創造研究推進事業 先端的低炭素化技術開発(ALCA)

JSTnews 2015年8月号掲載

東北大学大学院工学研究科の川上徹産学官連携研究員は、NTTメディアインテリジェンス研究所と共同して、独自の「空間結像アイリス面型ディスプレイ」技術をベースに、視聴角度を変えることで異なる画像情報を表示できるディスプレイを開発し、製品化しました。

この技術は、見る人の両目近くに設けた仮想の「空間結像アイリス面」に光を集めて網膜上に画像を結像します。空間結像アイリス面を複数設けることで、見る角度によって異なる情報を表示できます。さらに光の方向を限定することにより、消費電力を低減することも可能です。

NTTアイティ株式会社では、この技術をデジタルサイネージ(電子看板)に応用した「ひかりサイネージマルチビュー」を6月に製品化しました。

東京の名所情報を日本語版・英語版・中国語板の個別画面で同時に紹介する多言語観光案内や、視聴者が見たいエリアの映像を選択して視聴できるパブリックビューイング、駅などで利用者の動線方向に応じた行き先情報表示などの活用が期待されます。

マルチビューの最新研究結果は、8月27日〜 28日に東京ビッグサイトで開催される「JSTフェア2015」(NEWS 01)に展示される予定です。

新しい導電性インクでプリント スポーツウェアが画期的なセンサーに

戦略的創造研究推進事業 ERATO

JSTnews 2015年8月号掲載

身につけられる情報端末、ウェアラブルデバイスがブームとなり、腕時計型やメガネ型など続々と新製品が発表されています。

ウェアラブルデバイスに求められる最大の機能は、運動効果の確認や健康維持のための生体情報の取得です。より正確な生体情報を素早く、かつ継続的に計測するためにテキスタイル型(布状)のウェアラブルデバイスが注目されていますが、これまでの導電性の繊維や糸では、電子素材を細かな形に並べて、電極や配線を精密に作ることが困難でした。

東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授と博士課程の松久直司さんらは、新開発の導電性インクを使って繊維にプリントするだけで高い導電機能を持ち伸縮性のある導体の開発に成功しました。

導電性インクは布地などに簡単にプリントでき、3 倍の長さに伸ばしても高い導電性を示します。染谷さんらはスポーツウェア用の布地にプリントして作製した伸縮性導体を、フレキシブルな有機トランジスターの増幅回路と組み合わせて腕のサポータータイプの筋電センサーを試作し、微弱な筋電信号を約18 倍に増幅できることを確認しました。

導電性インクはフッ素系のゴム材料と導電性粒子の銀フレークおよび界面活性剤を溶剤に混ぜて作成します。界面活性剤を入れることで、銀フレークがフッ素系ゴム材料の表面に高密度で並ぶため、高い導電性を維持しつつ、伸縮性を保つことができます。

電極や配線を精密に配置したウェアラブルデバイスの実現によって、全身を覆う多点の筋電センサーシステムで、より正確な生体情報をストレスなく計測できるようになり、スポーツやヘルスケア、医療分野で応用が期待されます。

環境にやさしい医薬品合成で国際競争に勝つ

戦略的創造研究推進事業 ACT-C

JSTnews 2015年6月号掲載

手のひらの薬の錠剤と地球環境。一見何の関係もないようですが、実は深くつながっています。

医薬品など化学製品の製造には、複数の化学反応が必要で、原料を反応容器に入れて、1つの化学反応が終わるたびに生成された物質を取り出し、不要な副産物を除去したうえで、別の容器に移し替えて次の反応をさせる、という工程を繰り返しています。バッチ反応法と呼ばれるこの手法は製造現場で主流ですが、時間と労力がかかり、廃棄物が多く環境負荷が高いことが問題でした。

東京大学大学院理学系研究科の小林修教授らは、「フロー精密合成」という多段階連続流通法を開発しました。この手法は、化学反応を促す触媒を入れた複数のパイプ状の容器(カラム)に原料を流すだけで、複数の化学反応を連続で進行させ、目的の化合物を得るものです。小林さんらは、抗炎症剤の医薬品原薬であるロリプラムの合成で実証するため、流通法に適した新たな不均一系触媒を開発し、効率よく高い純度で合成することに成功しました。ここで開発された不均一系触媒は、高性能で寿命も長く、不要な副産物の生成も抑えることができます。バッチ反応法と比べ、触媒の反応効率の大幅な向上、合成時間の短縮、製造コストや廃棄物の低減、反応装置の小型化を実現しました。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は2011年、今後25年で医薬品合成がクリーンで効率のよい「連続製造」に移行することを予測しました。今回の成果は「連続製造」を先取りする日本発の画期的な基盤技術です。医薬品に限らず、香料、農薬、電子材料などファインケミカルの製造にも用いることができます。今後、この技術を展開して、化学・製薬産業で日本が世界をリードしていくことが期待されます。

A-STEPの成果から医療系ベンチャー2社が誕生

研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム A-STEP

JSTnews 2015年5月号掲載

最先端の研究成果を医療分野で実用化するためにベンチャー企業2社が誕生しました。重症心不全の治療薬である心筋細胞再生製剤を開発した「Adipo Medical Technology」社(大阪府)と、新材料を用いた多目的接着性人工骨を開発した「メディカルクラフトン」社(岡山県)です。

慢性心筋梗塞では、何度も心筋梗塞を起こしたことによって、心筋細胞のもととなる心筋幹細胞が減少、消失しています。医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬資源部部長の松山晃文さんらは、心筋細胞を再生させるため、皮下脂肪などにほんのわずかに含まれ、さまざまな細胞へと変化する能力を持つ幹細胞を原料とした心筋細胞再生製剤と、この幹細胞を心筋細胞に分化させる薬剤を開発しました。併せて、効率的な幹細胞増殖技術や凍結長期保存技術などの関連技術も確立しました。

この技術を市場に出すために設立されたAdipo Medical Technology社はこれから企業治験を開始し、3年後に製造販売承認申請、5年後に年間売上5億円を目指しています。

一方、人工骨にはこれまで顆粒状やペースト状のリン酸化カルシウムが使われてきましたが、骨への吸収・置換が遅いという課題がありました。北海道大学大学院歯学研究科の吉田靖弘教授らは、これらの課題を克服するため新素材リン酸化プルランを含んだ新しい人工骨を開発しました。プルランは日本が世界シェアを独占している天然多糖類で、食品や医薬品にも使われています。そのリン酸化物であるリン酸化プルランは歯や骨に強固に接着します。吸収・置換が早く、安全性も高い人工骨開発に必要な新材料です。

歯周病は中高年の8割以上がかかっており、歯を失う最大の原因となっています。また、寝たきりにつながる高齢者の骨折は、今やすべての骨折患者数の7割近くに達し、今後も増え続けるのは確実です。短期の骨再生・再建につながる多目的接着性人工骨には大きな期待が寄せられています。この人工骨を開発したメディカルクラフトン社は今後、歯科から整形外科へと事業を拡げる方針で、年間6.5億円の売り上げを目指しています。

JSTは、起業する意欲のある研究者に実用化のための支援を行っています。ベンチャー設立数は、100社を超えました。