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震災からの復興

津波塩害農地をエコで復興

菜の花プロジェクト

中井 裕(東北大学大学院農学研究科 教授)
RISTEX
東日本大震災対応・緊急 研究開発成果実装支援「東北被災地の農地・農業を復興」実装責任者(H23)

東日本大震災の復興に科学で貢献

RISTEX(社会技術研究開発センター)は、「社会における、社会のための科学」という理念のもと、社会が抱えるさまざまな問題の解決を目指して、研究成果の活用を支援している。東日本大震災の復旧・復興では6件のプロジェクトを遂行。その1つが「津波塩害農地復興のための菜の花プロジェクト」であった。

耐塩性のあるアブラナ科作物で復興

東日本大震災による津波は、宮城県だけでも水田1万ヘクタールに被害を与えた。津波被害の田畑の復旧は、一般には膨大な費用と時間をかけた土木工事が行われる。しかし中井裕教授らは、農民自らが農業をしながら農地を復興させる施策も必要ではないかと考えた。予備調査の結果、農地に砂や泥土が堆積した地帯では、堆積物除去が必要であることがわかった。また堆積物は無く海水の浸水被害のみの地帯でも、土地を真水に浸す潅水による除塩ができない場合、すぐに作付けはできないが、1年間の降雨によって除塩されて復旧可能な農地があることもわかった。さらに海岸からの距離、地形などにより、耕作地ごとに被害状況は異なることが確認できた。中井教授らは塩害に強いアブラナ科作物を用いて、それぞれの農地の被災状況に合わせた土壌改良や農業の復興プロジェクトを宮城県に提案したのだ。

菜の花

菜の花プロジェクトとして継続

中井教授が所属する東北大学大学院農学研究科はジーンバンクを所有し、そこには世界で唯一、アブラナ科作物が登録・保存されている。そこでの研究成果は、被害状況に応じた土壌改良に適したアブラナ科作物の選定に活かされたのだ。プロジェクトの最終目標は、アブラナ科作物の安定的生産方法、ナタネ油の販売方法、ナタネ油によるバイオディーゼル燃料の生産と消費システムの確立とした。

プロジェクトは開始早々、社会的に注目を集めた。全国から集ったボランティアや東北大学の学生などの協力で、農地に堆積したヘドロ除去、うね立てや種まきなどがスムーズに運んだのだ。またプロジェクトが仙台市の復興計画の中に明記され、その趣旨に賛同・協力する企業が予想以上に増加したのである。青果卸売業者の助言を得ることで、当初の目標には無かった食用アブラナとしての価値も生まれ、実際に仙台市のスーパーなどで販売されたのだ。ナタネ油の販売やバイオディーゼル燃料の生産・販売についても、協力企業での体制が整っている。

菜の花が5月に満開となり、その景観は農家のみならず被災地の人々に希望を与えている。菜の花写生会・撮影会などのイベントも好評であった。RISTEXから巣立ったこのプロジェクトは、2015年度に日本農学賞および第52回読売農学賞を受賞。菜の花プロジェクトの活発な活動は現在も継続している。

※遺伝資源保護を目的として、種子等を保存・管理する施設

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