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情報通信技術

スーパーハイビジョンから監視・暗視カメラまで

イメージセンサーで超高性能カメラを

左:青山 聡 代表取締役社長/右:川人祥二 会長
株式会社 ブルックマンテクノロジ(左:青山 聡 代表取締役社長/右:川人祥二 会長)
研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)
実用化挑戦タイプ(中小・ベンチャー開発)「超高感度高速度イメージセンサー」開発実施企業(H21)

次世代「超小型8Kスーパーハイビジョンカメラ」のイメージセンサーを開発

2020年東京五輪を目標に開発や普及が進められている「8Kスーパーハイビジョン」。現在放送されているハイビジョンの16倍にあたる3,300万画素の超高精細映像だ。2次元の映像であっても、3次元の3Dテレビに匹敵するような臨場感を得られると期待されている。すでに超小型8Kスーパーハイビジョンカメラが開発されており、2014年のサッカーW杯ブラジル大会では、このカメラを使った映像が披露された。選手たちの鋭い動きや鮮やかな色彩を見事に再現した技術に、多くの人が驚かされた。そんな、映像メディアの次世代を担う超高性能カメラに搭載されているCMOSイメージセンサーをNHK技術研究所と共に開発したのが、株式会社ブルックマンテクノロジ。静岡大学電子工学研究所の川人祥二教授が設立した大学発ベンチャー企業だ。

CMOSセンサー
画像:CMOSセンサー
小型のビデオカメラを取り付けた、高感度タイプのCMOSセンサー。レンズをはずすと、すぐ奥に受光部が見える。

人間の網膜にあたるイメージセンサーの性能を左右する「電子シャッター」「A/D変換」技術

カメラを人間の視覚にたとえると、イメージセンサーは、取り入れた光を電気信号に変える網膜にあたる。CCDとCMOSの2種類の方式があり、CCDが電気信号をバケツリレーのように順々に運んでいくのに比べ、CMOSは電気信号を一括処理するため、高速かつ最適に信号を処理できる利点がある。

イメージセンサーの性能は、超高精細の映像を、いかに「超高感度」かつ「超高速」で撮影できるかで測られる。川人教授は、高性能化を実現させるため、フィルムカメラのシャッターの役割を果たす「電子シャッター」と、光の情報をアナログからデジタルに変換する「AD変換」技術の開発に取り組んだ。その実用化のために、大学発ベンチャーとして株式会社ブルックマンテクノロジを設立。2009年にはA–STEPにも採択されて研究開発を重ねた結果、革新的技術の開発と実用化に成功した。

図:イメージセンサーは、人間の眼の網膜にあたる。被写体をセンサーの受光面に結像させ、その光の明暗を電気信号に変換して画像を映し出す。
イメージセンサーは、人間の眼の網膜にあたる。被写体をセンサーの受光面に結像させ、その光の明暗を電気信号に変換して画像を映し出す。

月明かりでも被写体の色と動きを鮮明にとらえ明るいシーンまでしっかり表現

成果のひとつが、「CMOSグローバル電子シャッター」。従来の CMOS イメージセンサーの電子シャッターは、画素ごとに露光タイミングが異なる「ローリングシャッター」のため、動画を撮影した時のひずみが大きかった。CCDイメージセンサーで使われているグローバル電子シャッターなら、露光を同時に行うため、ひずみのない画像を実現できるが、CMOSイメージセンサ―ではリセットノイズと呼ばれるノイズが原理上除去できず、きれいな画像が得られなかった。しかし、独自技術を用いることでリセットノイズの除去に成功。CMOSでもグローバルシャッターの使用を可能にした。

また、従来のCMOSイメージセンサーが抱えていた、照度1ルクス(ろうそく1本の明るさ)程度では撮影が難しく、ダイナミックレンジ(扱える明暗差の幅)が狭いという2つの課題を、独自のAD変換技術などによって同時に解決した「超高感度・広ダイナミックレンジCMOSイメージセンサー」を開発。0.1ルクス(月明かり程度)でも被写体の色と動きを鮮明にとらえられ、明るいシーンまでしっかり表現することに成功した。この技術は、2012年には、中小企業優秀新技術・新製品賞の最高賞である中小企業庁長官賞を受賞している。


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月明かり程度(照度0.1ルクス)の場所で撮影した画像。肉眼ではほとんど色の識別ができない暗さの中でも文字まではっきり見えるため、監視カメラなどに利用されている。下はCCD撮影。家庭でも超高速撮影ができる。ブルックマンテクノロジのホームページ(http://brookmantech.com/sample.html)の動画でミルククラウンの美しい現象を体感できる。

第1回「大学発ベンチャー表彰」の科学技術振興機構理事長賞に輝く

こうして開発した技術は、すでにさまざまな形で実用化されつつある。冒頭で紹介した超小型8Kスーパーハイビジョンカメラの開発に、NHK放送技術研究所や静岡大学と協力して取り組んでいるほか、超高感度・広ダイナミックレンジCMOSイメージセンサーは、監視カメラやテレビ番組の撮影用暗視カメラに利用されている。こうした点が評価されて、2014年には、新しく始まった「大学発ベンチャー表彰」の科学技術振興機構理事長賞に同社が選ばれた。

同社のある浜松では、昭和元年、静岡大学工学部の前身の浜松工業高校の高柳健次郎助教授(当時)が、世界で初めてブラウン管に「イ」の文字を映し出すことに成功した。日本のイメージング技術開発の原点ともいえる土地で、90年近い年月を超えて、今、独創性あふれる技術を核としたイノベーションが生まれようとしている。

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