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ライフイノベーション

再生医療や創薬の発展に期待

iPS細胞を樹立

画像:山中 伸弥
山中 伸弥(京都大学 iPS細胞研究所 所長/教授)
CREST免疫難病・感染症等の先進医療技術「真に臨床応用できる多能性幹細胞の樹立」 研究総括(H15-20)
山中iPS細胞特別プロジェクト研究総括(H20-24)
iPS細胞研究中核拠点再生医療用iPS細胞ストック開発拠点」  拠点長(H25-)
※当事業は、2015年4月1日より、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構に移管されました

そして再生医療は実現へ!

2007年11月20日、科学誌「Cell」に山中伸弥教授らによって「成熟細胞が初期化され、多能性を獲得し得る現象の発見」の発表がなされた。この発表は世界中の人々を驚愕させ、再生医療や難病治療などの臨床応用の未来に強い期待が寄せられた。それからわずか5年、世界を驚かせたこの発見に2012年度ノーベル生理学・医学賞が授与された。

iPS細胞の樹立は、一度分化した細胞は初期化しないというこれまでの常識を覆し、また生殖細胞を利用する胚性幹細胞(ES細胞)が抱える倫理的問題をも飛び越え、世界にイノベーションを起こしつつある。そして、2014年9月理化学研究所の髙橋政代プロジェクトリーダーらは「滲出型加齢黄斑変性症」の患者にiPS細胞由来の色素上皮を移植する臨床研究を世界で初めて行った。

皮膚細胞から、骨、心臓、肝臓、神経、血液などができる!

iPS細胞は多能性幹細胞である。多能性幹細胞とは培養すれば骨・心臓・肝臓・神経・血液など、その他人間の体を構成するどのような細胞にも分化する「万能性」を持った細胞のことである。今まで皮膚などを構成する細胞が多能性幹細胞になるということは考えられなかった。なぜならそれはタイムマシーンのように、時計の針を逆戻りさせて、細胞を受精卵と同様の状態に戻すことにほかならないからだ。

しかし、皮膚の細胞にわずか4つの遺伝子を導入するだけで、この時計の針を戻すという一見不可能な技術が実現できたのである。

ヒトiPS細胞の作製(※当初の方法)
ヒトiPS細胞の作製(※当初の方法)

再生医療が直面していた大きな障壁を乗り越える!

現在の医療では、機能不全に陥った臓器の治療は、他の人からの移植などで治療するしか方法がない。しかし、臓器移植は拒絶反応が起こるリスクやドナー不足の問題がある。また、iPS細胞と同じく多能性を持ったES細胞は、受精卵を使用することから、やはり倫理的に問題であると議論されていた。受精卵は人になりうる細胞であり、この生命の芽生えを消失する行為そのものが問題となったのである。アメリカではブッシュ政権時代、公的研究費による新たなヒトES細胞の樹立を禁止していたという事実が問題の大きさを物語っている。

人の皮膚細胞からつくられるiPS細胞は、これらすべての問題を解決しうる世紀の発見である。人類の夢であった再生医療につながるiPS細胞の研究が発表された後、JSTは直ちに「iPS細胞等の細胞リプログラミングによる幹細胞研究戦略事業プログラム」を創設してオールジャパンの研究体制を整備した。その一環として、国際シンポジウムの開催や、戦略目標「細胞リプログラミングに立脚した幹細胞作製・制御による革新的医療基盤技術の創出」のもと、山中iPS細胞特別プロジェクトを始め、CRESTおよびさきがけへの新たな領域を設定し、さらに、2012年に立ち上がった再生医療実現拠点ネットワークプログラムでは、iPS細胞研究中核拠点として、再生医療用iPS細胞ストック構築の支援を開始し、多角的にiPS細胞研究を加速し、再生医療の実用化を推進している。

iPS細胞研究

iPS細胞が実現する新たな医療

iPS細胞が実現できることは再生医療だけではない。創薬にも大きな期待が寄せられている。

例えば、世界中に数えるほどしかいない原因不明の難病患者のiPS細胞をさまざまな組織の細胞に分化させ、正常な細胞と比較することで発症原因を探り薬剤を開発したり、組織の検査が出来ない心筋や中枢神経などの細胞をiPS細胞で再現し、原因解明に利用することが期待されている。また、これまで生命科学研究で広く行われていた動物実験の必要もなくなる可能性が指摘されている。

現在、京都大学が保有する基本技術に関する特許は主要国をはじめ世界各国にて成立している。これらの特許のうちiPS細胞の樹立方法という権利は、樹立されたiPS細胞の医療や創薬への使用等にも権利が及ぶ。さらに、日本ではiPS細胞という細胞そのものを対象とする権利が成立している。このような影響力の高い特許を公的機関が保有し、広く特許を許諾することで、iPS細胞研究や薬剤候補物質のスクリーニングなどのiPS細胞技術による医療応用のための研究開発に、多くの企業が参入することが可能となった。このような企業の参入により、新しい治療薬や治療方法がより多くの方へ提供されるようになることが期待される。

ヒトの皮膚細胞から生み出された人工多能性幹細胞(iPS細胞)
画像:ヒトの皮膚細胞から生み出された人工多能性幹細胞(iPS細胞)
提供:京都大学iPS細胞研究所
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