事業成果

科学を伝える

科学技術と社会を結ぶ 「未来」をつくるプラットフォーム2023年度更新

ミュージアム環境をいかしたインクルーシブな未来社会への貢献

日本科学未来館は2001年の開館当初より、先端科学技術に取り組む大学等が未来館をフィールドに研究開発を推進する「研究エリア」を設けてきました。2021年4月に浅川智恵子新館長が就任するにあたり、さらに未来をつくる拠点としての役割を強化する目的で、未来館自らが研究室を設け、視覚障害者のアクセシビリティ向上に資する研究開発を推進しています。本研究室は、2022年4月に「未来館アクセシビリティラボ」として本格運用をはじめ、障害や年齢、国籍といった違いに左右されることのないインクルーシブな未来社会の実現を目指して、障害者の社会参加を支えるアクセシビリティ技術の研究開発を進めています。また、「未来館アクセシビリティラボ」だけではなく、未来館全体としても、障害の有無にかかわらず未来館を楽しんでいただけるよう、サービスの拡充やイベント等におけるアクセシビリティの向上の取り組みを試行しています。

<関連イベント>
「AIスーツケース」実証実験・体験会

視覚障害者のための自律型ナビゲーションロボット「AIスーツケース」の技術開発や実証実験を進め、未来館の展示フロアや、新千歳空港、屋外でのAIスーツケースによるナビゲーション体験や実証テストを実施しました。

未来館の来館者向けには、5階常設展示エリアをAIスーツケースの案内に従って歩いてめぐる体験会を複数回開催しました。また、より実用的なシチュエーションでの検証として、国内の空港で初めて新千歳空港の協力のもと実証実験を実施。一般搭乗客や大きな荷物カートなどが多く行き交う空港独特の環境のなか、体験者がAIスーツケースの誘導によって土産物店や航空会社出発カウンターなどへ向かうナビゲーションを試行しました。

さらに、AIスーツケースにとって初めてとなる「屋外」でのナビゲーション実証テストを、東京都などが主催する先進モビリティ体験イベントの一環として実施しました。屋外走行を実現するため、より正確な位置推定を可能とする人工衛星を利用したシステムや、車道と歩道の段差などを乗り越えることができる屋外走行モジュールを新たに開発。公共交通機関と目的地を結ぶまち歩きを想定して、未来館を起点に新交通ゆりかもめ「テレコムセンター」駅付近まで体験者を誘導して走行しました。

協力:一般社団法人次世代移動支援技術開発コンソーシアム

ろう・難聴者とともに楽しむ展示ツアー

研究エリアに入居する「xDiversity(クロスダイバーシティ)プロジェクト」とのコラボレーションという形で、透明パネルに話者の言葉をリアルタイム表示する「See-Through Captions(シースルーキャプションズ)」という研究成果を用いながら、ろう・難聴者の方が科学コミュニケーターとともに展示をめぐるツアーを開催しました。透明パネル上の字幕と相手の表情やジェスチャーなどを同時に見ることができるため、コミュニケーションがとりやすいという利点があります。日常的に手話でコミュニケーションをとる方のために手話通訳を付ける、また、ろう・難聴者・聴者が同じツアーに参加する等の工夫を重ねながら、複数回実施しました。