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ナノテクノロジー・材料

情報を投影できる新媒体

透明なスクリーン用フィルムを開発

画像:戸木田 雅利
戸木田 雅利(東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 准教授)
戦略的イノベーション創出推進プログラム
「フォトニクスポリマーによる先進情報通信技術の開発」
「高分子ナノ配向制御による新規デバイス技術の開発」プロジェクトマネージャー(H26-30)

ほぼ無色透明なスクリーン用フィルムを開発

高度コミュニケーション社会を実現して、安心安全でエネルギー消費の少ない低炭素社会を実現するためには、現存の情報通信技術の限界を超えた革新的な情報通信技術開発が不可欠だ。JSTの戦略的イノベーション創出推進プログラム(S-イノベ)で進める研究開発テーマの中には、「フォトニクスポリマーによる先進情報通信技術の開発」というテーマがあり、21世紀の情報通信技術の根幹をなすと言われている「フォトニック通信」の技術を革新することにより高度なコミュニケーション社会の基盤技術を確立しようと、研究開発が進められている。

このテーマの中で取り組まれている課題の一つに、「高分子ナノ配向制御による新規デバイス技術の開発」があり、大きな成果を上げている。戸木田雅利准教授らが、ほぼ無色透明なフィルム状のスクリーンを開発し、商品化に成功したのだ。すでに各地のイベント施設などで使われるなどの実用実績があり、今後の展開の多様性や社会における情報表示への貢献が期待されている。

ダイヤモンドのような高屈折率ナノ粒子を均一に分散させる

像を投影できる透明フィルムはこれまでにもあったものの、その透過率は、70%程度に留まっていた。今回、戸木田准教授らは、透過率が90%以上と従来よりもはるかに透明なスクリーン用フィルムの開発に成功した。このスクリーンを窓に貼れば、例えば外の景色を見ながら、そこへ映る広告などの情報を同時に見ることが出来る。従来品と比較して、全く新しい情報表示ツールとして利用することが可能だ。

透明であるのにも関わらずスクリーンとして利用できるのは、ダイヤモンドのように屈折率の高いナノ粒子を、フィルムの高分子中に均一に分散させる技術を開発できたからだ。マトリックスの高分子とナノ粒子の屈折率の差が大きければ、より多くの光を散乱させることができるので、像を映し出すことができる。ナノ粒子がまばらに散らばっていれば、フィルムの裏側が透けて見えるようになる。フィルムが透明になるように、また可視光を均等に散乱するようナノ粒子を高分子中に分散させるのは非常に難しい課題であったが、これを戸木田准教授らはクリアした。

JX エネルギー(株)(現JXTGエネルギー(株))は、このスクリーン用透明フィルムの技術を用いて商品化に挑み、『KALEIDO SCREEN®』という商品名で上市させることに成功した。

図1
透明度が高く、映像が投影されたスクリーンの後ろにある植物プランターがはっきりと見える。

これまでにない機能を持つ大画面のディスプレイ

今、多くの企業で、大面積で安価な高機能性高分子フィルムの開発が課題となっており、激しい競争が展開されている。戸木田准教授らは、大面積・高性能な各種光学素子を開発しようと、さまざまな光機能を持つ光学フィルムやデバイスを生み出すことに挑んでいる。すでに、独自の技術で赤・緑・青すべての光を選択的に反射したり、鏡のようにすべての可視光を反射する有機ポリマーフィルムの開発や、液晶ディスプレイの視野角拡大フィルムなどに期待される技術を開発している。また、アルミニウムのナノメートル幅の細線のネットワークがフィルム上に接着した、透明性と導電性を持つフィルムの開発にも成功した。これらの技術を使った製品が世に出回れば、さらに新機能を持った媒体を作り出すことが可能だ。

この技術の用途を拡大しながら次の技術を開発

商品化した『KALEIDO SCREEN』は社会からも多くの関心を集めており、これまでにさまざまな場所でデモンストレーションが行われている。例えば、東京タワーや八景島シーパラダイスでは、窓ガラスや水槽に貼り、大規模なプロジェクションマッピングイベントが開催され、大変な好評を得ている。今後は、こういった空間演出用途のみならず、公共情報や商品広告などを表示するサイネージ用途にも拡大していく予定である。

また、現在のフィルムは前方への散乱が大きいフィルムだが、粒径などを制御して後方への散乱を強くすれば、今後、需要の伸びが期待される自動車用ヘッドアップディスプレイの素材としての応用が期待できる。共同研究を進めている企業も実用化に向けて努力を重ねており、これからの技術の展開に対する注目度は高い。

図2
東京タワー展望台
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