拠点事業紹介

iPS拠点事業

研究課題名

再生医療実現化を目指したヒトiPS細胞・ES細胞・体性幹細胞研究拠点

実施体制

研究代表者
岡野 栄之 (慶應義塾大学 医学部 生理学教室 教授)
分担代表研究者
須田 年生 (慶應義塾大学 医学部 発生・分化生物学教室 教授)
福田 恵一 (慶應義塾大学 医学部 再生医学教室 教授)
坪田 一男 (慶應義塾大学 医学部 眼科学教室 教授)
松崎 有未 (慶應義塾大学 医学部 生理学教室 特別研究准教授)
金村 米博 (独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究部 室員)
伊藤 豊志雄 (財団法人 実験動物中央研究所 マーモセット研究部 部長)
実施体制説明図 実施体制説明図

研究成果・進捗

脊髄損傷に対する幹細胞治療の開発
1) マウスiPS細胞神経分化誘導の確立とマウス脊髄損傷モデルへの移植
京都大学(山中研究室)より供与を受けたマウスiPS細胞から高効率に神経幹・前駆細胞を誘導することに成功した。それらの細胞を胸髄圧挫損傷モデル免疫不全マウスへ移植を行い、運動機能評価を行った。移植群では対照群に比べ有意な運動機能の回復を認め、マウスiPS細胞由来の神経幹・前駆細胞がマウス脊髄損傷モデルに対して治療効果を示すことを明らかにした。(Tsuji et al. PNAS 2010)
   
2) ヒトiPS細胞神経分化誘導の確立とマウス脊髄損傷モデルへの移植
ヒトES細胞と同様の手法を用いて、京都大学で樹立されらヒトiPS細胞から神経幹・前駆細胞を誘導することに成功した。同様に胸髄圧挫損傷モデル免疫不全マウスに移植を行い、ヒトiPS細胞由来の神経幹・前駆細胞がマウス脊髄損傷モデルに対して治療効果を示すことを明らかにした。これはヒトiPS細胞由来の細胞が疾患モデルに対して治療効果を示すという世界初の結果である。
   
3)

マーモセットiPS細胞の樹立と神経分化
霊長類における再生医療の前臨床研究を実現化するため、マーモセットiPS細胞の樹立を試みた。iPS細胞の樹立に成功し、現在は神経分化誘導法の確立を試みている。

実施体制説明図
iPS細胞に関する標準化
センダイウイルスベクターを用いて、少量の末梢血からゲノムへの外来遺伝子挿入のないiPS細胞を短期間に誘導する方法を確立した(Seki et al Cell Stem Cell 2010)。この方法を用いて患者さんに皮膚生検などの苦痛を強いることなくiPS細胞を樹立できると期待されている。 実施体制説明図
iPS細胞培養の技術講習会・培養および樹立トレーニングプログラムの実施
慶應拠点のヒトiPS細胞培養および樹立トレーニングプログラムは、東大・理研で行われた講習会の応用編という位置づけで行われている。iPS細胞の樹立および維持培養、さらには神経分化誘導までを一貫して訪問研究員にトレーニングし、技術移転を目指すという形で行われる。昨年度、実際にトレーニングを終了もしくは進行中の研究機関は学外3研究室、学内1研究室である。
疾患特異的iPS細胞の樹立・提供
現在までに計11疾患でiPS細胞の樹立および解析が進行中である。疾患特異的iPS細胞の樹立および解析は品質評価の標準化で検討された基準に基づき、形態・各サブクローンの導入遺伝子のサイレンシングの確認・iPS細胞マーカーなどの遺伝子発現プロファイルの確認を行い、神経分化が良好なサブクローンを決定している。提供については、来るべき疾患特異的iPS細胞バンクの設立に向けて、技術的・倫理的な検討を行うため京都大学・東京大学・理化学研究所の技術および倫理問題担当者との間で連絡体制を確立し、ネットワークを構築し、バンクへの細胞のdepositの方法・規準について検討を行っている。また、国内製薬企業からの依頼に基づき、MTAを結び、疾患iPS細胞株(3株)の提供を行った。

今後の計画

1) ゲノム挿入の起こらないセンダイウイルスを使って樹立されたiPS細胞の細胞移植における有効性と安全性の評価
2) マーモセットおよびヒトiPS細胞由来神経前駆細胞の安全性・有効性の検討
3) マーモセット脊髄損傷モデル作製と細胞移植
4) ヒトiPS由来造血幹細胞を制御する技術基盤の開発
5) ヒトiPS細胞を用いた心筋細胞の再生と臨床応用へ向けた基盤の開発
   (1)健常者および遺伝性心臓疾患からのiPS細胞の樹立
   (2)ヒトiPS細胞から心筋細胞の誘導
6) 感覚器系(角膜・網膜)のヒト幹細胞技術開発および幹細胞治療の開発

リンク情報

慶應大学 医学部生理学教室 岡野研Weblog
http://www.okano-lab.com/ja/