個別事業紹介

幹細胞治療開発領域

難病や生活習慣病等の治療を目指し、ヒトiPS細胞やヒトES細胞等を用いて、細胞移植等に使用する細胞の分化誘導法がある程度確立されている治療開発研究について、前臨床研究段階を目標とした治療技術の開発を行います。
本領域では、成果の社会への還元のため、5年以内に得られた成果を「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(平成18年度厚生労働省告示第425号)に基づいた臨床研究を実施するために機関内倫理審査委員会での議論が開始可能な状態への移行を目指します。

重度先天性骨代謝疾患に対する遺伝子改変間葉系幹細胞移植治療法の開発

大串 始

大串 始(オオグシ ハジメ)
独立行政法人産業技術総合研究所 健康工学研究部門 招聘研究員

我々は間葉系幹細胞を用いた骨再生医療技術を開発し、2001年より臨床応用をおこなっています。しかし、この技術は自己の細胞を用いたものであり、患者自身の細胞の遺伝子変異による疾患には適応できません。
今回、重度先天性骨代謝疾患(低ホスファターゼ症)の細胞に正常遺伝子を導入するとともにiPS細胞を作製し、本疾患に対する再生医療技術開発を行います。

筋ジストロフィーに対する幹細胞移植治療の開発

武田 伸一

武田 伸一(タケダ シンイチ)
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 神経研究所
遺伝子疾患治療研究部長
トランスレーショナル・メディカルセンター長

我々は、筋ジストロフィーのなかでも、もっとも頻度が高く重症のジストロフィン欠損によるDuchenne 型筋ジストロフィー(DMD)の治療法の開発を目指しています。本プロジェクトでは、DMD患者由来のiPS細胞に正常なジストロフィン遺伝子を導入し、筋前駆細胞に誘導して、疾患筋に移植する次世代の細胞移植治療の開発を行います。また、筋組織から筋細胞に分化しうる幹細胞を単離し、ジストロフィン遺伝子を導入した後、疾患筋に移植する治療法の開発も合わせて行います。

iPS細胞を用いた自家角膜再生治療法の開発

西田 幸二

西田 幸二(ニシダ コウジ)
大阪大学 大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学講座(眼科学) 教授

良好な視機能を保つ事はQOLの維持にきわめて重要です。
角膜内皮疾患や上皮疾患に対しては従来から同種の角膜移植術が行われてきましたが、拒絶反応のため予後は不良であり、自家細胞の移植が待望されています。
本研究ではヒトiPS(人工多能性幹)細胞を用いて角膜内皮および上皮を再生し、iPS細胞を自家細胞源とした角膜再生治療法の臨床応用を目指します。

iPS細胞由来血管前駆細胞を用いた新規血管再生医療の展開研究

室原 豊明

室原 豊明(ムロハラ トヨアキ)
名古屋大学 医学系研究科病態内科学講座 教授

本研究では、iPS細胞から血管前駆細胞を分化誘導し、さらにこれらの細胞から内皮前駆細胞および血管平滑筋前駆細胞の分化誘導研究を行います。
これらの細胞群を用いた新規の細胞移植血管再生療法、磁気ビーズを利用した細胞シートの作成とシートによる小口径動脈グラフトの開発研究を行います。

脳室周囲白質軟化症の幹細胞治療の実現化

澤本 和延

澤本 和延(サワモト カズノブ)
名古屋市立大学 医学研究科再生医学分野 教授

幹細胞を多く含み発達途中にある子供の脳は、再生医学の応用が期待できる対象です。
本研究では、新生児の虚血性脳疾患の幹細胞治療を目標として、内在性幹細胞の活性化と細胞移植という二つの再生方法を同時に研究し、脳の再生医療の実現に必要な細胞メカニズム解明と基盤技術の開発を目指します。