個別事業紹介

幹細胞操作技術開発領域

研究課題名

ヒト間葉系幹細胞を機能性肝細胞として、移植医療に使用するための低分子化合物・細胞シートによる分化誘導技術の開発

目 的

 肝不全患者への肝細胞移植治療による再生医療の実現のため、ヒト間葉系幹細胞を機能性肝細胞へ分化させる、真に臨床応用可能な効率的な分化誘導技術を開発する。
具体的には、ヒト間葉系幹細胞から機能性肝細胞へ真に臨床応用可能な分化誘導技術を開発するため、(1)Wnt/beta-catenin経路抑制性低分子化合物のうち、最も有効性の高い化合物を選択し、(2)最も有効な化合物と組織シートを組み合わせ、最大の分化効率を得る培養法を開発し、4年以内に産業財産権を複数出願し、実施許諾による権利行使を企業と交渉できる状態とすることを達成目標とする。

実施体制

研究代表者
汐田 剛史 (鳥取大学 医学系研究科機能再生医科専攻 教授)
分担代表研究者
森本 稔 (鳥取大学 生命機能研究支援センター 准教授)
実施体制説明図

概 要

 幹細胞の分化・増殖にWnt/beta-catenin経路が重要である。我々はヒト間葉系幹細胞から肝細胞への分化誘導時にWnt/beta-catenin経路が抑制されており、この経路をRNA干渉により抑制すれば肝細胞へ分化すると報告した。そこで我々は、ヒト間葉系幹細胞から肝細胞へ分化させ、これを細胞移植に使用する再生医療を構想している。最近、4,000種類以上の大規模化合物ライブラリーのスクリーニングから、Wnt/beta-catenin経路抑制性の低分子化合物5種類が同定された。低分子化合物は蛋白製剤や核酸製剤に比べ、安定性、安全性などのフィージビリティにおいて優れ、再生医療の実現に有力な方法と期待される。本申請の目的は、第一に、同定された5種類と既に市販されている3種類の合計8種類のWnt/beta-catenin経路抑制性の低分子化合物について、ヒト間葉系幹細胞から肝細胞への分化誘導能を、RNA干渉と比較検討する。第二に、細胞シートと低分子化合物と併用して移植医療に使用できる機能性肝細胞への分化誘導技術を4年間で開発する。

平成20年度の計画と目標

(1) 現在市販されている3種類のWnt/beta-catenin経路抑制剤(ケルセチン、イオノマイシン、イマチニブ)の肝細胞分化誘導作用を検討する。ヒト骨髄由来間葉系幹細胞UE7T-13細胞を用いて、上記の効果を以下の点について、検討する。
1.肝特異的転写因子発現
2.肝特異的蛋白発現
3.グリコーゲン合成
4.尿素合成
5.TCF活性によるWnt/beta-catenin経路のシグナル強度をルシフェラーゼ活性で評価する。
   
(2) その他の5種類のWnt/beta-catenin経路抑制性の低分子化合物NSC668036、PKF115-584、CPG049090、PNU-74654、ICG-001を合成する。

リンク情報

鳥取大学医学部大学院医学系研究科 遺伝子医療学部門
http://www.med.tottori-u.ac.jp/p/igaku/daigakuin/kinou/idenshi/idenshi/