目 的
再生医療や創薬等の実現を目指す研究者、その他医学・医療の発展・進歩に貢献したいと考えている研究者に、その研究を推進する基盤として、基礎やトランスレーショナル研究に必要となるヒト由来の幹細胞を広く安定的に供給していくため、研究用臍帯血幹細胞バンクを整備・運営する。
概 要
本事業は、再生医療の実現化プロジェクトⅠ期において、再生医療の実現を目指す研究者に品質が保証されたヒト幹細胞を広く、安定的に供給するインフラを整備することを目的とした「研究用幹細胞バンク整備」事業として実施してきたものである。具体的には、既存の5つの臍帯血バンクと連携して移植適応外の臍帯血を収集し、研究材料として分離・調製、凍結保存し、理化学研究所バイオリソースセンターを通じて再生医療の実現を目指す研究者に供給するバンク事業を実施してきた。平成15年度に生命倫理に則ったバンクシステムを構築し、平成16年度から実際に非営利の学術研究機関を対象としてHES法で処理・保存した凍結臍帯血の提供を開始した。その後、平成18年5月からは企業の研究者にも門戸を開放し、さらに同年12月からはCD34陽性純化幹細胞の提供、平成19年からはFicoll法で処理した凍結臍帯血の提供を行ってきた。これまで、延べ約2300検体の試料を収集・保存し、延べ17研究機関、28研究課題に対し、約800検体を提供してきた。主な研究内容は、血液幹細胞の多分化能維持機構や生存・増殖機構に関する研究、血管・神経・皮膚等の再生に関する研究、免疫細胞に関する研究などである。生命倫理への配慮としては、臍帯血の提供者に対するインフォームドコンセントの取得は、臍帯血バンクの採取協力病院において移植用臍帯血提供のインフォームドコンセントの取得と同時に適切に行なわれ、また個人情報の保護については臍帯血バンクにおいて匿名化が行なわれ研究用バンクに個人情報は提供されない。また、本事業に参画する全ての機関において、機関内倫理審査委員会での審議を終えている。さらに本研究材料を使用する研究機関において機関内倫理審査委員会の承認を義務付けているとともに、本研究材料を臨床に用いること(ヒトに直接投与すること)、遺伝子多型解析に用いることは禁止している。一方、本研究材料の利用を希望する研究者からは、利用するための手続きが煩雑で利用しにくい、再生医療以外の研究に利用したい、新鮮臍帯血を提供して欲しいなどといった声がある。
今回の事業では、プロジェクトⅠ期で構築・整備された研究用臍帯血バンクを引き続き維持・運営していくとともに、使用できる研究目的の拡大、倫理審査手続きの簡素化、提供する細胞処理の多様化といったⅠ期での課題等への対応を行うことで、より研究者のニーズに対応したバンクへの展開を目指している。
具体的には、(1)再生医療研究以外の創薬等を目指す企業の研究者へ提供をすることにより、企業への更なる利用促進を図る、(2)再生医療や創薬等の実現を目指すベンチャー企業の研究者や医学部以外の研究者など、自機関内に倫理審査委員会を持たない研究者が利用できる仕組みの構築、(3)研究者のニーズの高い新鮮臍帯血供給システムの構築、(4)CD34以外のマーカーで純化した幹細胞の提供などを目指している。