個別事業紹介

研究用幹細胞バンク整備領域

研究課題名

研究用臍帯血幹細胞バンク整備

目 的

 再生医療や創薬等の実現を目指す研究者、その他医学・医療の発展・進歩に貢献したいと考えている研究者に、その研究を推進する基盤として、基礎やトランスレーショナル研究に必要となるヒト由来の幹細胞を広く安定的に供給していくため、研究用臍帯血幹細胞バンクを整備・運営する。

実施体制

研究代表者
原 宏 (財団法人先端医療振興財団 再生医療基盤研究グループ 客員研究員)
分担代表研究者
土屋 滋 (東北大学大学院医学系研究科 教授)
加藤 俊一 (東海大学医学部基礎診療学系再生医療科学 教授)
大橋 春彦 (独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 部長)
長村 登紀子 (東京大学 医科学研究所 講師)
実施体制説明図

研究成果・進捗(今後の計画)

本課題は、再生医療の実現化プロジェクト第Ⅰ期で整備された研究用臍帯血幹細胞バンクを引き続き運営するとともに、第Ⅱ期では、第Ⅰ期で課題となっていた、本事業で提供する研究試料の使用目的の拡大、使用を希望する研究者の利便性に配慮した倫理審査システムの構築、研究者のニーズの多い新鮮臍帯血の供給システムの構築、研究者のニーズに応じた細胞処理法の検討などに取り組むこととしている。
このうち提供する試料の使用目的の拡大については、提供者への説明同意文書の改訂や中核機関・分担研究機関(以下「各機関」)及び協力機関(採取病院、臨床(移植)用バンク)の倫理審査承認手続きを終了し、MTAの締結を経て、あらゆる医学研究に利用可能な研究用臍帯血の収集・処理・一次保存を開始した。以下にこれまでの主な研究成果を記載する。
1.提供中の研究用ヒト臍帯血の提供 / 研究者のニーズに対応した細胞処理等の検討
研究者のニーズが高くかつ利便性を考慮し、Ficoll法処理/小容量規格(2mlチューブ入り、単核細胞数1×107個以上)の試料を作成した。なお、システムの構築に当ってはSOPの作成や管理システムを整備している。また、CD34陽性純化幹細胞試料の品質改善の検討を行い、その結果を反映した品質基準およびSOPを改定した。このことにより、より高品質な試料を供給している。
現在提供中の臍帯血は以下のとおりである (図1)。
2.提供中の研究用ヒト臍帯血の提供 / 研究者のニーズに対応した細胞処理等の検討
理研BRCからの臍帯血提供実績については以下のとおり。
  HES法試料 Ficoll法試料 CD34陽性細胞
平成20年度 52件 9件(在庫切れ) 62件
平成21年度 104件 112本 128件
申込手続きおよび試料の詳細は理研BRCのホームページをご覧ください。
理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室
http://www.brc.riken.jp/lab/cell/hcb
3.新鮮臍帯血の供給システムの構築
研究者のニーズが高い新鮮臍帯血(全血)の供給を目指し、これまで課題・問題となる事項と対応策の検討、システム設計、SOP等の書類整備等の準備作業を行い、提供できる体制を整備した。平成22年度に最終的な調整を行い、パイロットスタディとして実供給を開始する予定である。
4.研究者の利便性に配慮した倫理審査システムの構築 
本研究試料の研究者への提供に際しては、当該研究者の機関内倫理審査委員会の承認を条件としているが、特に再生医療の分野ではベンチャー企業も多く、自機関内に倫理審査委員会を設置していないため、本研究試料を利用したくても利用できない状況がある。これらの研究者も本研究試料を使用できるよう、プロジェクト実施者側で提供の可否について審査する仕組みを構築した。具体的には、研究代表者の諮問機関として、臨床研究の倫理指針等で示されている倫理審査委員会の構成基準を満たす「研究用臍帯血幹細胞バンク研究審査委員会」を設置し、提供の可否について審査する仕組みを構築し、研究者が利用し易い環境を整備した。(図2
幹細胞再生医学研究分野での臍帯血試料の需要は、現在及び今後も一定の需要が見込まれる。平成22年7月現在、現時点及び今後の需要見込みに関するニーズ調査を行っており、今後、この結果を反映し、需要と供給のバランスをとった事業規模での運営を予定している。
また、今後は臍帯血を用いたiPS細胞樹立・検定・保存方法等に関する検討を開始していく予定である。

リンク情報

研究用臍帯血幹細胞バンク
http://scb.ims.u-tokyo.ac.jp/
(財)先端医療振興財団
http://www.ibri-kobe.org/
日本さい帯血バンクネットワーク
http://www.j-cord.gr.jp/index.jsp