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研究開発テーマ「有機材料を基礎とした新規エレクトロニクス技術の開発」


顔写真

 プログラムオフィサー(PO)

 谷口 彬雄

 信州大学 名誉教授/特任教授
 専門分野
 有機材料の光・電子物性、材料化学、有機エレクトロニクス材料

■ 研究開発テーマの設定趣旨

1.研究開発テーマの概要

 本研究開発テーマは、有機化合物を利用した光電変換技術および有機化合物中の電子制御技術を応用したデバイスなどの研究開発を対象とします。具体的には、有機EL、有機太陽電池、有機トランジスタなどの有機系電子デバイスに係る技術の開発などです。
 実用的な技術の創出を目標とした研究開発であるため、本研究開発テーマで対象とする課題については、基礎研究の段階が一定以上進んでいることを前提としています。上記具体例に係る技術についても、基礎的に解決すべき課題は残されていますが、一方で、基礎研究において芽吹きつつある優秀な成果を実用化に向けて強力に推進していくことにより、激化する諸外国との技術開発競争に対応し、我が国の産業競争力を強化することを図ります。

2.プログラムオフィサー(PO)による公募・選考・研究開発テーマ運営にあたっての方針

 有機ELディスプレイや有機EL照明については、そのエネルギー効率や製造プロセスの単純さなどによる大きな製造エネルギーの削減や動作エネルギーの削減、ひいては、コスト低減が期待されています。また、有機系太陽電池についても、変換効率や寿命こそ無機系に劣りますが、有機物ならではのフレキシブル性を活かし、多用な設置方法、デザイン性も期待できるなど、その可能性は非常に大きいものです。また製造プロセスも印刷プロセス製造により、生産のためのエネルギーの低減が期待されています。有機トランジスタはプリンタブル・エレクトロニクスを支える基礎デバイスとして今後不可欠なものとなるでしょう。
 これらについては一部実用化の始まっているものがありますが、性能的にはまだまだ発展途上であり改善の余地が大きく、また、米国や欧州、韓国なども国を挙げて取り組んでいる研究開発テーマであることから、今後一層競争が激しくなっていくことは想像に難くありません。また本研究開発テーマは「低炭素社会づくり行動計画(平成20年7月29日閣議決定)」にも沿ったものであり、その緊急性・重要性は最早疑問の余地はないものと考えます。
 印刷プロセスによる、初期設備投資の削減、製造のためのエネルギーの削減を10年後の目標とします。また、有機材料ならではのフレキシブル性をいかんなく実現したデバイス作製を目標とします。しかし、プロジェクト前半では、実用的なデバイスを実現するために、ガラスのような堅い基板を用い、真空蒸着で作製したデバイスも念頭においての開発も期待します。
 本技術開発に関しては材料開発が重要な課題となります。これまで、材料は材料としての研究開発として行われる傾向がありました。これからは材料開発時点からプロセス、デバイス構造を意識した研究開発が必要です。化学、物理、電子・電気工学といった枠組みを超えた連携が必要となります。その為、研究開発実施に当たり研究体制の枠組み、組み合わせに関して、再構成を相談させて頂く場合があります。あらかじめご承知置き願います。
 我が国は上記関連技術に対する歴史をもち、その技術レベルは決して諸外国に引けをとらないものと思っています。しかしながら、実用化へ向けた取り組みについては十分と言える状況にはなく、解決すべき課題のための基礎研究ももちろん重要ですが、同時に育てるべき技術シーズは実用化に向け早期に育成していかないと、諸外国との技術開発競争に太刀打ちできなくなってしまいます。実用化に向けては幾つかの大きな壁がある技術もあると思いますが、積極的なチャレンジ・提案を期待します。
 必ずしも目標はそれぞれの最終製品でなくとも結構です。例えばある要素技術が最終製品の性能を大幅に向上できることが期待できるのであれば、目標をその技術の開発においても良いと考えています。
 10年間のプロジェクトとしての斬新なブレークスルーをもたらす提案を期待します。
 期待する技術開発の例を以下に挙げます。

 1)有機EL関連技術
  現在、有機ELテレビが発売されるに至っています。再度原点に立ち戻り、発光量子効率、エネルギー変換効率、耐久性を同時に成り立たせることが課題となっています。生産性の点では、歩留まりの低さと生産コストに依然大きな問題を抱えています。有機材料、デバイス構造、動作メカニズムの革新的なイノベーションの必要性が増しています。また、10年後を見据えると、印刷による製造プロセスの実現により、製造エネルギーの激減が期待されています。それらを見据えた斬新な提案を期待します。
  また、印刷プロセスによる10nmオーダーの膜厚制御技術、電子移動を可能とする膜表面の物性制御技術と関連する学問的な取り組みが必要となっています。有機EL素子開発と並行しながら、有機薄膜制御技術の蓄積を図る提案を期待しています。
  照明技術に関しては、蛍光灯、LEDに代わる光源としての演色性、劣化機構の解明、高効率化の課題への挑戦を期待しています。
  植物工場が日本の産業としての重要性が増す中で、植物の生育に必要な波長領域のみで効率的に発光する光源は有機ELの得意とする領域であり、期待しています。プロジェクトの後半にはプリンタブルプロセスによる大面積光源実現のための基礎技術の提案を期待します。

 2)有機太陽電池関連技術
  色素増感系、有機薄膜系の新たな挑戦的提案を対象とします。当該技術についてはエネルギー変換効率と耐久性に依然大きな問題を抱えています。高効率化を図るためには光吸収から電荷分離、電荷収集のすべての過程に高効率化が必要です。利用可能な光波長に関しても近赤外、赤外領域の光電変換効率を飛躍的に向上する必要があります。このためには長波長色素の開発、有機半導体の伝導帯準位のコントロール、電子収集ロスの少ないタンデム構造などの提案、電荷収集プロセス、光閉じ込め構造の研究などが必要になります。
  薄膜印刷製造の技術革新も十分とは言えません。デバイス構造、材料をも含めた製造技術の革新的提案を期待します。

 3)有機トランジスタ関連技術
  有機トランジスタは、OPCや有機ELの次に到来する大きな新市場を切り開く切り札として期待されています。電子ペーパー、無線タグ、大面積センサなど多くの用途が実験室レベルで試作され、その一部は実用化目前となっています。しかし、電気的性能と機械的耐久性の両立、ハイスループット製造技術、歩留まりや均一性など向上に依然大きな問題を抱えています。また、酸化物半導体やシリコンなど既存技術との差別化が不明確です。有機トランジスタの高速化=大型化(高移動度材料、新デバイス構造、有機分子の新物性を活用した新機能創発)生産性の飛躍的な向上(分子の自己組織化、凝縮などを制御した印刷製造技術の確立)などが課題です。
  移動度がa-Si以上の高性能の材料開発と共に、印刷でデバイスが形成可能な、材料、プロセス技術を期待します。

 1)〜3)に係る共通基盤技術として、各デバイスとも印刷プロセスによる10nmオーダーの膜厚制御技術、電子移動を可能とする膜表面の物性制御技術に関連した提案も期待します。


■ プログラムオフィサー(PO)及びアドバイザー

  氏名 所属・役職
PO 谷口 彬雄 信州大学 名誉教授/特任教授
アドバイザー 安達 千波矢 九州大学 大学院工学研究院 教授
アドバイザー 小山 珠美 昭和電工株式会社 安全性試験センタ―長
アドバイザー 鈴木 博之 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR) 常務取締役 経営統括部長・事業開発室長
アドバイザー 府川 伊三郎 株式会社旭リサーチセンター シニアリサーチャー
アドバイザー 柳田 祥三 大阪大学 名誉教授
有機系太陽電池技術研究組合(RATO)理事

■ 課題

課題名 課題概要 PM
(※1
開発リーダー 評価結果
研究リーダー
新しい高性能ポリマー半導体材料と印刷プロセスによるAM-TFTを基盤とするフレキシブルディスプレイの開発 エレクトロニクス分野で有機材料を用いたデバイスの展開を図るには、電気的性能と機械的耐久性を両立させ、ハイスループット製造技術を確立することが重要課題となります。その要素技術として「高性能なポリマー半導体材料」、「印刷法によりトランジスタを製造する技術」及び「トランジスタの集積化技術」の開発が必須です。本課題は、新規開発高性能ポリマー半導体材料を三次元FETなどの新構造FETの開発に展開し、界面解析・界面制御技術の活用でAM-TFTの開発及び大面積フレキシブルディスプレイへの応用を目指します。 竹谷 純一
パイクリスタル株式会社 研究開発本部 最高技術責任者
中間評価(ステージT)−平成23年度実施−

中間評価(ステージU)−平成27年度実施−
瀧宮 和男
国立研究開発法人 理化学研究所 創発物性科学研究センター グループディレクター
フレキシブル浮遊電極をコア技術とする新太陽電池分野の創成 従来の色素増感太陽電池は透明導電膜が必須でした。本課題ではこの常識を覆し、透明導電膜を必要としない画期的なフレキシブル色素増感太陽電池の製造を目的とします。具体的には、フレキシブルメッシュ電極、色素を複合化したポーラスチタニア自立浮遊電極などをコア技術とした、軽量、低コスト、カラフル、フレキシブルを生かした、高効率で耐久性が高い新規なシリンダー型やファイバー状の色素増感太陽電池の製造を目標とします。 永吉 英昭
株式会社フジコー 開発センター センター長
中間評価(ステージT)−平成24年度実施−
早瀬 修二
九州工業大学 大学院生命体工学研究科 教授
印刷で製造するフレキシブル有機EL照明の開発 本課題では、白熱電球や蛍光灯を代替する高効率・長寿命な白色有機EL照明の開発を目的とします。その為に、印刷・塗工可能な高効率リン光材料群の開発、高効率・長寿命化を支える印刷・塗工プロセスに適したホール及び電子輸送材料やホスト材料の開発、多積層マルチフォトン構造を可能とする材料不溶化技術や溶解性制御技術、大面積薄膜印刷・塗工プロセスの高精度化や高速化技術の開発を実施し、ロールツーロール印刷・塗工プロセスの可能性検証も行います。また、超バリアフィルム基板の検討も実施します。 前田 博己
大日本印刷株式会社 研究開発センター 印刷エレクトロニクス研究所 第1研究室 室長
中間評価(ステージT)−平成24年度実施−
城戸 淳二(※2
山形大学 有機エレクトロニクス研究センター 卓越研究教授
塗布型長寿命有機太陽電池の創出と実用化に向けた基盤技術開発 本課題では最高レベルの性能を持つ有機半導体の設計・合成技術とナノからマイクロスケールでの分子組織体の階層構造制御技術をコア技術とし、柔軟・頑丈(長寿命)・簡便(プリンタブル)・便利(高効率)な次世代型新構造有機薄膜太陽電池を創出することを目的とします。バルクへテロ接合層をナノメートルオーダーで構造制御するp-i-n接合3層構造(剣山構造)の構築・解析、界面制御、性能劣化原因の解明等を合わせ実施します。更に、薄膜印刷技術やフレキシブル基板材料などの開発を行い、実用化に向けた工業的基盤技術の確立を目指します。   山岡 弘明
三菱化学株式会社 理事 情報電子本部 OPV事業推進室長
中間評価(ステージT)−平成24年度実施−
中村 栄一
東京大学 大学院理学系研究科 教授
1PM(プロジェクトマネージャー):各課題の取りまとめ役
2PM・研究リーダー 城戸 淳二教授は、JST地域卓越研究者戦略的結集プログラム平成21年度採択プロジェクトの在籍卓越研究者です。
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