プロジェクト紹介

家族を支援し少子化に対応する社会システム構築のための行動科学的根拠に基づく政策提言

研究代表者

研究代表者:黒田 公美
黒田 公美
理化学研究所脳神経科学研究センター親和性社会行動研究チーム チームリーダー

プロジェクトの目標

<アウトプット>

達成目標A:日本の子育て困難事例調査の研究報告提出
達成目標B:子育て支援のための公私連携システムの試験的実装調査の報告とりまとめ
達成目標C:A、Bの成果と親子関係の行動科学的根拠に基づく、コンフリクトがなく生物科学的に妥当でかつ予算的・人的・法的に日本の地方自治体で実施可能な対少子化・家族支援政策案の提言
達成目標D:上記A-Cの成果を関係省庁の通達・地方自治体の条例等作成の際の資料や文例として使用できる形態にまとめ、ステークホルダーとの意見交換によってさらにブラッシュアップする。そして最終案を研究会、シンポジウムや報告書の形式で公開し、政策形成プロセスへ浸透させることを目指す。

<アウトカム>

●日本の対少子化政策を生物科学的に妥当に、かつ他の家族に関わる政策との間にコンフリクトのないように調整することで実効性を高め、結果的に出生率の低下を抑制する。
●日本の学校教育の中で、児童生徒が将来生活するうえで必要な出産・育児に関する生物学的・心理学的社会学的知識が得られる教育内容の提供を推進する。これにより、中長期的に科学的根拠に基づいた個人の実生活上の判断、また行政運営や政策形成ができる人材を育成する。

プロジェクトの概要

日本では、20年以上にわたり様々な少子化対策が施策として試みられてきたにも関わらず、少子化を抑止できていない。一人当たりGDPが日本より低くても、少子化の抑制に成功している国もあることを考えれば、我が国のこれまでの対少子化政策形成プロセスは見直しをはかるべき時期に来ていると考えられる。

日本の対少子化政策が効果的でなかった背景には、政策形成プロセスにおいて子育てと子どもの発達に関する生物科学的・行動学的知見が必ずしも十分に参照されておらず、実際の政策が科学的根拠を欠いたまま立案・実施されているという現状がある。また、出産・育児は必然的に女性の就労を促進する現在の労働政策や、家庭介護を推進する高齢化対策との間にトレードオフの関係を有する。これらの家族に関係する様々な政策の間に生じている矛盾「政策コンフリクト」は、親の家庭での労働時間を増加させ、結果的にもっとも大切なはずの子ども達にしわ寄せが来る恐れがある。

本プロジェクトでは、子育て困難事例の実態調査と、公私連携による各種子育て支援の試験的実装により、現代日本における子育て困難の要因とそれぞれに応じた適切な支援のあり方を具体的に探究する。また、これらの成果と、子育て・子どもの発達に関する生物学的・行動科学的知見を総合し、根拠に基づいて既存の少子化対策を評価・検討するとともに、日本の家族に関わる政策間コンフリクト解消を試みる。

そして、限られた予算的・人的資源と法的な制約の元でも政策として実行可能で、かつ画一的ではなく、個々の家庭の事情に柔軟に対応できる子育て支援のあり方を提示する。これにより、最終的に産み育てやすく、子どもが健やかに育まれる社会の実現を目指す。


プロジェクトイメージ

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