プロジェクト紹介

先端生命科学を促進する先駆的ELSIアプローチ

研究代表者

研究代表者:梶川 裕矢
三成 寿作
京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門 特定准教授

プロジェクトの目標

 社会的配慮や客観性、透明性を担保しながら技術革新に対する自由を尊重する「プロアクショナリー(行為支援的)」という概念を手がかりに、先端生命科学領域における①脱二元化的・世代間的見地から日本的生命倫理原則を提唱し、②行政指針の作成・改正プロセスの共創化を図ることにより、③過度な事前警戒的対応を解消するとともにオープンイノベーションを誘発するといった、一連の共創的かつ相互発展的な政策形成モデルの創出を狙う。特に、先端生命科学研究の倫理的・社会的側面における政策形成プロセスに着目し、「科学技術イノベーション政策における合理的エビデンスとは何か、それをどのように創出し、政策実務者を含むステークホルダーとどのように共有すればよいか」というリサーチ・クエスチョンを検証する。パーソナルゲノム研究やゲノム編集技術、合成生物学といった領域を中心に、学協会等の関係組織に対してガイドラインの策定に資する検討材料を提供するとともに、政策実務者や専門家を含む幅広いステークホルダーに対して生命倫理に関する基本的な見方を提示することにより、学術界や産業界の未開領域への開拓を促進する。

プロジェクトの概要

 先端生命科学研究におけるイノベーションの創出に向けて、国内外の動向を踏まえながら、これまでの「生命倫理」や「社会的配慮」における取り組みを再考し、既存の法・行政指針・ガイドライン等の有効性と限界を検証するとともに、新たな生命倫理原則、望ましい行政指針の作成や改定プロセスの改善のあり方、学習やネットワーク、アウトリーチを促進する市民参加手法やアート手法を提示する。具体的には、①パーソナルゲノム研究やゲノム編集技術のフレーミングの再考を図り、倫理的概念の連続的な階調性や意識分布形状(倫理スペクトラム)を検討し、その理論的構築を目指す。②世代間倫理や未来倫理の問題と、技術や社会の変容の長期的予見(フォーサイト)を技術の社会的影響評価(テクノロジーアセスメント)に組み込む(縦のアセスメント)。③デュアルユース的問題認識、世代間配慮、地政学的な多様性・関係性を視野に入れ、伝統的な生命倫理原則に代わる新たな日本的生命倫理原則を提唱する。④社会心理学的知見および方法論を援用した順序尺度および質問紙調査を設計するとともに、対話型鑑賞プログラムを改良し、参加者が作品や対話を通じて価値観の多義性を学び合うワークショップを設計する。⑤ワークショップを通じて、参加者の現在の価値観のマッピングを行うことに加え、過去や将来といった設定における各個人の価値観の変動を明らかにする。⑥学習支援、ネットワーク支援、メディア開発という三つのアプローチを組み合わせて政策共創モデルを構築する。⑦米国での倫理的な考慮に基づく研究評価システムを検討することにより、日本の評価システムのあり方を展望する。⑧諮問委員会を設置し、本プロジェクトにおける政策共創プロセスの効果や妥当性を検証する。

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