プロジェクト紹介

政策過程におけるエビデンス記述・解釈に関する調査研究

研究代表者

研究代表者:梶川 裕矢
梶川 裕矢
東京工業大学環境・社会理工学院 教授

プロジェクトの目標

①エビデンスの再定義
政策担当者が参照可能なエビデンスの見取り図を提供する。また、エビデンスレベルの再設計により、政策担当者が政策立案にあたって活用すべきエビデンスの指針を提供するとともに、研究者が政策のための科学の研究を推進するにあたって考慮すべき、提供すべきデータやエビデンスの指針を提供する。

②エビデンスプロセスの分析
エビデンスに影響する組織的・システム的なバイアスを明示的に示し、政策担当者が政策過程において影響されがちな要因を容易に把握することを可能とする。また、研究者に対し、正しいエビデンスを提示するのに留まるのではなく、その使われ方にも目を向けることが重要であるということに対する気付きを与える。さらに、エビデンスを効率的・効果的に活用するための中間組織の在り方について政策担当者に提言を行う。

③エビデンスの継承とアカウンタビリティを担保するフレームワーク構築
政策担当者にエビデンスを政策や政策イシューと明示的に関連付けて、組織内で共有、継承するための方法論を提供する。また、広く国民に対し、透明性のある政策へのアクセス、ならびに、エビデンスに根差した合理的な政策のもとでの社会を構築するための契機を提供する。

プロジェクトの概要

「科学技術イノベーション政策における『政策のための科学』推進事業」(以下、本事業)は、「『客観的根拠(エビデンス)』に基づき、科学技術イノベーションをもたらす政策を科学的方法によって策定するための、体系的な知見を創出することを目的」と実施されている。既に本事業を通じ、様々なデータが収集され、分析やシミュレーションを通じ作成され、格納化されることによりデータベース化されている。また、それらが政策立案や評価においてエビデンスとして活用されることが期待されている。

しかし、そこでは、研究成果をエビデンスとして活用する政策サイドの個人の存在が期待されている傾向があり、十分に政策策定に反映されているとは言い難い。また、エビデンスの解釈や選択に関する検討が不足している。すなわち、データ分析やシミュレーション等のエビデンスを作る科学に比べて、エビデンスとして活用する知見や仕組み、科学が不足している。科学技術イノベーション政策の科学を、政策のための科学として最大限活用するためには、政策過程や政策決定におけるエビデンスに対する本質的な理解や、科学としての体系化が必要不可欠である。

上記の課題認識のもと、本研究では、具体的な科学技術イノベーション政策として、エネルギー技術政策を事例として取り上げ、その立案過程および実施過程における、エビデンスの収集、作成、活用、継承のプロセスを調査する。また、組織における意思決定や判断の構造、ステークホルダーネットワークやイノベーションエコシステムに関する先行研究の体系的な調査を通じて、政策のための科学におけるエビデンスの記述や解釈に関する理論的枠組みを構築する。以上を通じて、政策策定におけるエビデンス活用に対する理解を深めるとともに、エビデンスの活用を通じて政策の効果を高めるための規範的な枠組みを構築する。

プロジェクトイメージ

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