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科学技術と社会の関係について考えるとき、知っておくと便利なことば。
医療
一般的に「医療」とは病気を治したり、悪くなるのを防いだりする医師の行為全般を言うが、ここでは、特に、患者の気持ちや社会の状況を考慮しながらおこなわれる治療などを「医療」と呼んでいる。他方「医学」とは、医療をおこなうための科学的な知識や技術のことを言う。
ゲノムコホート研究
ゲノムとは、ある生物種を規定する遺伝情報全体のことで、この情報に従って細胞が体の組織を作り、生命活動を支える。コホート研究とは、大勢の人間集団の生活習慣や健康状態等を長年にわたって調べることによって、個人レベルではわからない病気の因果関係を明らかにしようとする疫学の研究方法。ゲノムコホート研究は、その因果関係をゲノム(遺伝子情報)にまで深めて調べる研究を言う。
バイオ・バンク
ある集団の人体組織の一部や血液、細胞、DNAなどの生体試料、生活習慣・健康診断検査など各種のデータを、研究のために保存・管理する仕組み。
生命倫理
生命科学が生み出す成果と人間社会の道徳、善悪や正義についての考え方の関係を考える営み。医学や遺伝子工学の発達により、生死の意味が変化してきていることから注目されている。代理母、脳死、臓器移植、ゲノム研究などの問題が論議を呼んでいる。
自閉症
人とのかかわりや、言語・コミュニケーションの能力に困難を生じる、何か特定の物や習慣に強い興味を示す、などの症状を示す障害。知能に遅れがある場合も、知能が平均かそれ以上である場合もある。広汎性(こうはんせい)発達障害とも呼ばれる。症状が多様なこともあって、社会の認知や理解が遅れている。先天性の脳機能障害といわれているが、発症のメカニズムなど、解明されていない点が多い。
再生医療
臓器や組織が失われたり、不具合を起こしたときに、失われた機能を再生するために、細胞や組織を再建するための医療。臓器移植にかわる新しい技術として注目されているが、多様な生命倫理的問題を伴うことへの懸念も存在する。
オキシトシン
ヒトのホルモンの一種。ヒトの生涯を通じて重要な「愛・絆・信頼」に重要な役割を果たすと考えられ、自閉症の症状緩和に利用できるのではという観点から研究がおこなわれている。日本では自閉症の治療薬としてはまだ認可を受けていない。
産業クラスター
「クラスター」とは「(ぶどうなどの)房」を意味する英語。産業クラスターとは、特定の分野に関係する企業や研究機関が近い場所に集まって、新たな効果を生み出そうと競争と協働をしている状態のこと。
テクノロジーアセスメント
アセスメントとは評価のこと。科学技術の発展が、人の健康や環境、社会に対して直接的・間接的にもたらす、よい影響・悪い影響について、独立不偏な立場で広く洗い出して分析し、それを市民や政治家、行政に伝え、問題提起したり意思決定支援する制度や活動を指す。1960年代にアメリカで始まり、ヨーロッパでは市民参加型のテクノロジーアセスメントの開発もふくめ、多様な形態のものが模索されている。
ナノテクノロジー
ナノとは1メートルの10億分の1の長さの単位。物質の分子や原子の並び方をナノメートルの大きさで操作・制御することによって、新しい機能・性質の物質を作り出す先進技術。略してナノテクとも呼ぶ。現在のところ、化粧品や電子デバイス、塗料などの商品化がおこなわれている。
バイオマス
もともと生物(bio)の量(mass)のことだが、再生可能な、生物由来の有機性エネルギーや資源(化石燃料は除く)を言うことが多い。エネルギーになるバイオマスの種類として、木材、海草、生ゴミ、紙、動物の死骸・糞尿、プランクトンなどの有機物がある。バイオマスエネルギーは環境への二酸化炭素の新たな増加を伴わない自然エネルギーで、技術開発により、化石燃料に代わるエネルギー源として期待されている。
持続可能(性)
資源を単に消費するのではなく、再利用したり、新たに生み出したりしながら次世代に手渡していくという考え方を示すことば。経済や社会など人間活動全般について、将来にわたって持続できるかどうかを考えるときに用いられるが、特に環境問題やエネルギー問題において使う。
再生可能エネルギー
石油や石炭など量に限りのある化石燃料や原子力に対して、自然環境の循環の中で生み出していくことが可能なエネルギー資源のこと。太陽光や太陽熱、水力、風力、バイオマスエネルギー、地熱などがある。
生物多様性
生物多様性とは、地球の陸上、地中、淡水、海洋に生息する3000万種とも言われる動植物や微生物などの生き物がつくる、複雑で多様な生命のつながり。地球上の生命が、環境の変化に対応しながら変異してきた結果として現れる多様性のことを言う。種、生態系、遺伝子の3つの観点でとらえられる。
自然資源
自然界に存在する、人間が利用できる資源すべてのこと。その中でも、木材や水産物などの生物資源は、増殖した分だけを利用していれば極端に減ることはない。このような性質を持つ資源を、再生可能な自然資源と言う。再生可能な自然資源の枯渇は深刻な環境問題となる。
生態系サービス
自然環境が人間にもたらす恩恵のこと。木材や水産資源などの「供給サービス」、水の浄化や大気成分の調節などの「調整サービス」、自然と人のかかわりから生まれる文化や観光・レジャーなどの「文化サービス」、それらのすべてを支える光合成や土壌形成などの「基盤サービス」に分類される。
温室効果ガス
太陽からの熱を大気圏に封じ込め、地表を暖める働き(温室効果)を持つガスを、温室効果ガスという。人間活動によって温室効果ガスの大気中の濃度が上昇し、必要以上に温暖化が加速していることで、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素(一酸化二窒素)など6種類のガスが、国際的な取り決めの中で削減対象になっている。
里海
「人間の活動の影響を受けながらも、豊かな生態系が保たれている山」を指す用語「里山」から新たにつくられた環境用語。人間の手で適切に管理され、人と自然の共生が実現されている、生物多様性と生産性の高い沿岸海域のことを言う。
木質ペレット
バイオマスエネルギーのひとつで、おがくずや木くず、製材廃材等を砕いて直径6~8ミリ程度の小粒の円筒状に固め、扱いやすくした固形燃料のこと。専用のボイラーやストーブの燃料として、暖房や給湯などに利用する。
低炭素社会
社会に大きな影響をもたらす地球温暖化の防止を目的として、その原因となる温室効果ガスのうち、大きな割合を占める二酸化炭素の排出を低く抑えた社会。エネルギーの使い方や、産業や生活様式を変えることで、その実現を目指す。
サイエンス・カフェ
カフェなど気軽な雰囲気の場所で、一般の人々と科学の研究者等が語り合い、科学技術や関係する話題についてみんなで考えていこうとする集まり。一般的には、科学者や専門家が話題提供をおこない、そのあと議論をおこなう。規模が小さく、親しみやすい雰囲気が特徴。科学技術の研究者が自分の研究の社会的意義を考えるきっかけのひとつとなったり、研究者・市民ともに科学をいろいろな角度からながめて議論することができる、などの効果が期待される。
リスクコミュニケーション
自然災害や食品安全、環境問題など、社会に危険を与える恐れがあり、さらに関係者のあいだで意識共有が必要とされることがらについて、市民、行政機関、企業、専門家など利害関係者のあいだでおこなう情報の共有や意見の交換。
公共コミュニケーション
社会で生じる問題を解決するために、市民、行政機関、企業、専門家や政治家など、さまざまな立場の人が交わり、私的利害をこえた立場から論じ合うこと。
ディベート
あるテーマについて、参加者が異なる立場(賛成・反対の立場)に分かれておこなう討論ゲームのこと。参加者が各自の意見を出し合う一般的な議論とは区別される。それぞれの意見の筋道や、意見が異なる理由や背景がわかりやすく示される、などの特徴がある。
ステークホルダー
もともとは、企業活動等において金銭的な利害を持つ株主などを指す「利害関係者」という意味で使われた言葉だったが、いまでは、あることがらに対して、直接的・間接的に何らかのかかわりを持つ幅広い人や組織を指す。
社会実証実験
新しい制度や技術を開発して採り入れようとするときに、期間や場所を限定して、実際の社会のなかで試してみること。社会実験とも言う。本領域では、研究室の中での実験にとどまらず、実社会の関係者と一緒になって新しいものごとにチャレンジし、いろいろ試して失敗しつつ完成に近づけていくことを意味している。
科学技術社会論
科学技術と社会のあいだで生じるさまざまな問題を対象に、人文・社会系の学問から理学・工学・医学などの自然系の諸科学にまたがって、科学技術と人間・社会の間に新たな関係を構築することを目的とした比較的新しい学問分野。科学技術を社会で活用するために考慮すべき事柄を幅広く洗い出し、それらを社会の福利の増大という目的に照らして、改善していこうとする学問で、経済的観点や倫理的側面もふくめて、科学技術研究のあり方を考察することを目的としている。英語のScience, Technology and Societyを略して「STS」と呼ばれている。
科学裁判
環境問題や医療にかかわる問題など、科学技術やその製品などがもたらす社会へのさまざまな影響に関しておこなわれる裁判。たとえば、公害問題や薬害エイズ問題、遺伝子組換え食品や電磁波の健康影響、原発の安全性などに関する訴訟などがあたる。
暗黙知
言葉などではっきりと表現できないが、経験や勘にもとづいて体得された知識や技術のこと。
市民陪審
国や地域の問題について市民が自ら吟味し見解を述べることを目的に、裁判の陪審員制度を参考に考え出された市民参加型会議のひとつの手法。一定の地域から無作為に選ばれる十数名の市民の代表者が、専門家(証人)からの情報をもとに数日かけて議論をおこない、結果を判決文(提言)としてメディアに公表する。イギリスをはじめとする欧米では、新しい科学技術に関して行政がルールを定めるときなど、市民の声を反映させるためにこの市民陪審をおこなうことがある。
BSE 問題
1986年にイギリスで、牛海綿状脳症(略してBSE)という新しい牛の病気が特定された。そして、この病気にかかった牛の肉の感染部位を食べると、人間にも感染することが次第にわかってきて、国際的な議論を巻き起こした。プリオンがBSEの原因とされているが、人間に感染した場合の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれる病気の治療法は、まだない。現在は人間への新たな感染を防ぐことができているが、牛の検査方法や食肉の輸出入など、食の安全をめぐる議論が続けられている。
遺伝子組換え作物
微生物や植物などから、寒さに強い・病害虫に強いなど有用な性質のもととなっている遺伝子を取り出し、細胞に組み入れて作られた新しい性質を持つ植物を、遺伝子組換え作物という。品種改良を目的に遺伝子組換えはおこなわれているが、食品となる場合の人の健康への影響や生態系への影響などについて、さまざまな議論がある。
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2012年9月30日をもちまして、領域の活動は終了致しました。