新・仮説の検証
沈黙のジャーナリズムに告ぐ
小出五郎
水曜社 2010年
ジャーナリズムは公共財としての役割を果たしているか。その問いかけが、著者(元NHKディレクター、解説委員)をして、100年前の足尾銅山を巡る3人の足跡を追わせた。報道圧殺の時代に鉱毒を告発し続けた国会議員、田中正造、発禁書『谷中村滅亡史』を著した20歳の荒畑寒村、フォト・ジャーナリストの草分け、小野崎一徳を通して、ジャーナリストの志の源流を探る。『仮説の検証・科学ジャーナリストの仕事』(講談社、2007年)の続編。
現代の事業仕分けで、科学技術予算の削減に反発してノーベル賞学者らが記者会見し、多くのメディアが同調した。「お知らせに『心ある科学者が会見する』という一文があって、笑ってしまった」とからかうところに、著者の反骨精神がみえる。
(武部俊一:日本科学技術ジャーナリスト会議 会長)