私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。
島村英紀
講談社文庫 2007年
大阪地検特捜部の事件報道を見て、「まだ検察を信頼している人がずいぶんといるんだ」と、私は意外だった。本書には、検察のでっち上げのひどさが、巻き込まれた当人である地震学者ゆえの冷静・客観的な分析によって、とてもていねいに描かれている。筋書き通りの供述をとろうとする強引さは、かつての公共事業そのもので、検察内部の証拠操作など当然されていると私は思っていた。検察OBの弁護士が現役検察官に「昔はシロをクロというようなことは無かったぞ!」と叫んだ逸話(佐藤栄佐久『知事抹殺』平凡社、2009年)にも、検察の質の低下は現れている。被害者からの告発本ゆえ、多少割り引く必要はあっても、科学者が検察や法曹界への信頼を失った事件であることは確かである。
(渡部潤一:国立天文台天文情報センター 教授)