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【開催報告】3/12シンポジウム「社会的弱者を支える個人情報~新たな制度の可能性」を開催しました

2018年03月26日

3/12日に領域主催シンポジウムを開催しました。当日は約90名が参加し、講演・話題提供のあと、フロアから寄せられた意見を軸に、90分に及ぶパネルディスカッションと質疑応答を行いました。

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当日の資料はこちら(PDF)

会場の様子(山田領域総括) 会場の様子
     会場の様子(山田領域総括)                会場の様子

*** 内容要約 ***
 児童虐待の被害児童や独居高齢者を支えるためには彼らの情報が必要です。児童虐待の通告に対応するには、その児童だけでなく家庭の経済状況や家族関係に関する情報も必要になります。独居高齢者を支援するにも、認知症の進行具合や経済状況・家族関係について知らなければなりません。支援のために個人情報等を第三者提供する際に、本人に代わり同意する代諾者が必要なケースがあります。親権者など法定代理人に委ねる方法はわかりやすいですが、法定代理人が加害親で、児童本人の福祉を侵害している状況もありえます。認知症の高齢者に成年後見人がいるとは限りません。こうした状況を打開するにはどうしたらよいか、議論を行いました。
 カナダ・オンタリオ州には医療情報保護法があり、本人が同意の能力を欠く場合の代諾者として、成年後見人、任意後見人、要保護児童対策地域協議会のような組織によって指名された代理人、配偶者又はパートナー、父母、兄弟姉妹、その他親族が順位を付けて定められています。児童虐待の場合には父母には同意権限を与えないことも定められています。
パネル討論の登壇者は、わが国でも同様の法律を定める必要性について意見が一致しました。東日本大震災の際に多くの自治体が被災者の個人情報活用をためらったように、「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」には第三者提供の本人同意不要という個人情報保護法の規定だけでは、社会的弱者の保護には不十分ではないでしょうか。各自治体が条例で対応する方法では、条例間の細かな差から自治体を越えての保護が進まない恐れがあります。児童虐待・ひきこもり・高齢者と対象ごとに地域協議会の設置を求めても、結局、同じ関係者が席に着く可能性もあり、自治体の負担は増します。
 地域での社会的弱者への支援には、行政だけでなくNPOなど多様な関係者間での情報共有が必要であり、個人情報の活用には代諾のルールの法制化のほかに、NPOなど情報提供先の信用をどのように担保するかという問題もあります。今後も検討を進め社会に提言していきたいと考えます。

領域総括 山田 肇