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【開催報告】11/20 シンポジウム「安全な暮らしをつくる個人情報の保護:児童虐待対策における多機関連携」を開催しました。

2016年12月05日

11月20日に開催したシンポジウムには60名が参加し、講演・話題提供のあと、フロアから寄せられた講演への質問や意見を軸に、90分に及ぶ質疑応答・全体討議を行いました。児童虐待への対応において関係機関の連携の重要性が叫ばれて久しいですが、支援の現場では、情報共有をいかに行うか、個人情報をどのように取り扱うか、模索が続けられています。今回は、機関連携型の支援の際の情報共有や個人情報の問題にフォーカスして児童虐待問題を考えました。

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全体コーディネーター:吉田恒雄 領域アドバイザー
認定NPO法人 児童虐待防止全国ネットワーク 理事長/駿河台大学 学長。専門は民法(家族法)、児童福祉法。NPO法人として児童虐待防止のソーシャルアクションにも取り組む。

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講演者:津崎哲郎氏
NPO法人 児童虐待防止協会 理事長/関西大学 客員教授。NPO法人では、子どもの虐待ホットライン、啓発活動、関係機関との連携事業などを幅広く展開している。

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講演者:野村武司氏
獨協大学 法科大学院 教授/弁護士。地域に密着し、特に子どもの問題に力を入れている「獨協地域と子ども法律事務所」の所属弁護士としても活動中。

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講演者(話題提供):田村正博 領域プロジェクト研究代表
京都産業大学 社会安全・警察学研究所 所長/元警察大学校長。プロジェクトでは、警察の介入過程を明らかにして他機関の理解を促進し、円滑な連携の実現を目指す。


開催概要はこちら

当日の資料はこちら

***講演・討議内容***

  • 要保護児童対策地域協議会(要対協)の情報共有には課題がある......?
    山田肇領域総括の開会挨拶と領域紹介に続いて、吉田恒雄領域アドバイザーから多機関連携を制度的に確保する要保護児童対策地域協議会について説明がありました。要対協は支援に関する必要な情報を関係者間で共有する要であり、情報共有の制度は設けられていますが、守秘義務と個人情報保護に関する誤解などが適切な運用を妨げているのではないかと現状の課題を指摘します。
  • 虐待対応の最前線である児童相談所と関係機関の情報連携の模索
    児童相談所に長年勤務されていた津崎哲郎氏からは、児童相談所の虐待対応の内容について、法制度上の定めと実際の活動をからめてご紹介いただきました。実例を挙げながら、支援の現場で直面する個人情報保護の問題、司法機関や医療機関との情報共有の壁などを指摘します。また、個人情報保護の問題は、職員研修などで使用されている事例集の作成を年々困難にしていることもお話しいただきました。
  • 児童虐待対応で個人情報をどう共有していくか
    行政法、情報法、教育法を専門とする野村武司氏からは、個人情報保護の仕組みと、児童虐待対応における個人情報の取り扱いをわかりすく解説いただきました。要対協での情報共有を基本としながらも、その枠内に収まらない情報共有の際に、自治体の個人情報保護条例を基本とするシステム化、審議会の活用によるシステムの補完の必要性を指摘します。
  • 警察を含めた多機関連携で、子どもをまもる
    本領域でプロジェクトを進める田村正博氏からは、警察を含めた多機関連携を推進する上での個人情報の課題について話題提供いただきました。虐待以外の事例で警察と関係機関の連携の仕組みの好事例を挙げられたほか、連携を阻む個人情報保護以外の要因を含めて課題や限界を考えることが実効的な多機関連携を行う上で重要であると指摘します。
  • 総合討議
    多く意見が寄せられて重点的に議論した点は、警察、医療機関、NPO等民間セクターとの情報共有の問題で、それぞれ特有の課題があるなか、どのような点に留意しながら連携を進めればよいかということでした。情報共有について課題が浮き彫りになった一方で、例えば、機関間で情報の取り扱いについて協定等を結ぶことで問題を解決しようとする取り組みも、随所に見られているといいます。登壇者からは、円滑な多機関連携を行うためには、好事例に倣いつつ機微な情報の取り扱いの運用の制度化の必要性が指摘されました。さらに、機関同士がそれぞれの目的や論理を理解して信頼関係を築く重要性も共通して説かれました。「連携をするには情報が共有されていることは不可欠だが、情報を共有できたからといって、連携ができたというものではない」というコメントに、真の「連携」のためには、組織間の論理をすり合わせていく必要があることを痛感しました。
    最後に、山田肇領域総括がシンポジウムを以下のようにまとめました。
    「要保護児童対策地域協議会と警察・精神科医・民間組織などの連携を強化するため、法的手当て・覚書締結・自治体個人情報審議会の設置などの社会実装に向けて、領域として研究開発を進めたい。また、児童相談所の職員・小学校教員などの教育研修に利用できる教材開発も課題であることが明らかになりました。」
    今回は、関係省庁や自治体などで児童虐待への対応に日々あたっている方々に多数ご参加いただき、現場で直面している事例を踏まえたご意見をたくさんお寄せいただきました。シンポジウムでの議論のみならず、参加者から頂戴したご意見は今後の領域活動に活かしていきます。
    また、当領域では「安全な暮らしをつくる個人情報の保護」について、引き続き、多様な立場の方々と検討する機会を設けたいと考えております。

関連情報

児童相談所:都道府県と指定都市に設置され、子どもや家庭に関する相談援助活動を担う。児童虐待の効果的な援助を図るため、地域における関係機関のネットワーク形成に際しては、児童福祉の中核的専門機関として市町村とともに中心的な役割を果たすことが求められている。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/01.html(厚生労働省資料)

要保護児童対策地域協議会:要保護児童の適切な保護を図るため、関係機関等で構成され、要保護児童及びその保護者に関する情報交換や支援内容の協議を行う。平成16年児童福祉法改正法で規定され、現在、全国の市区町村でほぼ設置が済んでいる。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv11/05.html(厚生労働省資料)

「親密圏内事案への警察の介入過程の見える化による多機関連携の推進」研究開発プロジェクト