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ほっとコラム


公開ワークショップ「最期まで自分らしく生きる-本人の意思決定を支援するツールとその活かし方-」に参加して

成本迅

研究代表者 成本 迅
京都府立医科大学大学院医学研究科
精神機能病態学 准教授

1. ワークショップの趣旨

このたびRISTEX主催の公開ワークショップで発表の機会をいただきました。
 私たちのプロジェクトは、認知症で治療内容の理解や意思表示が難しくなられた方に、どのようにご本人の意向に沿った医療を提供していくかというテーマに取り組んでいます。
 同じく高齢者の意思決定を支援する取り組みを行っておられる東京大学の清水哲郎先生のプロジェクトと一緒に取り組み内容について紹介して、様々な方からご意見をいただこうというのが今回のワークショップの趣旨でした。

2. 発表の概要

プロジェクトを始めた背景として、認知症の人が身体疾患にかかったときに、どのように治療を進めていけばよいのかについて、医療現場でも混乱があり、必ずしもご本人の意思に沿った治療が提供できているわけではないことを紹介し、そのような状況を改善するためにプロジェクトで広く医療福祉関係者、法律の専門家、当事者や家族から意見をいただいたことや、カルテ調査を行って治療方針の決定プロセスについて実態を明らかにしたことなどを報告しました。
 結果として、病院に入院してから治療方針を決めようとするとご本人から意向を聞き取ることが難しく、意向を推測するための情報も不足しがちであることが明らかになり、治療方針の決定についても地域包括ケアの仕組みの中で地域住民、地域支援者、病院の医療従事者が連携していくことが重要であるとわかりました。
 今回のプロジェクトではそのような結果を踏まえて、医療従事者や地域支援者向けのスキルアップと連携強化のためのガイドと、地域住民や本人、家族にも受けたい医療や人生最終段階の医療について考えてもらうきっかけになるようなガイドを作成しており、その内容について最後に紹介しました。

3. 参加者との対話を通して

発表の最中から参加の皆様が熱心に聴いてくださっていることが伝わってきました。発表後の質疑やアンケートからは、ガイドの必要性について認めていただいていることがわかりました。また、本人の医療者とのコミュニケーションの様子についてより深く解析して結果をガイドに取り入れていくことや医師会、看護協会での研修で利用していくことなど今後の方向性について貴重な示唆もいただきました。

4. 今後に向けて

今回いただいたご意見も踏まえて現在ガイドの最終校正に入っており、9月30日にリリースを予定しております。プロジェクトのホームページ(http://j-decs.org/)からダウンロード可能な形にする予定ですので、是非ご覧下さい。
 この取り組みは様々な方面から注目していただいており、10月1日の日本弁護士連合会第58回人権擁護大会・シンポジウムでも発表させていただく予定です。このガイドを使用した各職種向けの研修プログラムも開発していきたいと考えており、プロジェクトは9月で終了しますが、このツールを活かす取り組みはこれからが始まりと考えています。
 認知症の人が地域で生活しやすくなるための取り組みは医療に限ったことではなく、財産管理など生活の基盤となる活動全般に取り組みを広げていきたいと考えており、JSTのセンターオブイノベーションプログラムの助成をいただいて銀行や工学系の企業、研究者、医療福祉関係者、法律関係者と拠点を形成して研究開発に取り組んでいます(http://coltem.com/)。

このような取り組みを通して認知症の人が自分の好みや希望を活かしながら生活できる地域社会の構築に貢献していきたいと思っております。

(掲載日:2015年10月9日)

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