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採択プロジェクト

平成21年度採択 研究開発成果実装支援プロジェクト

震災後の建物被害調査と再建支援を統合したシステムの自治体への実装

実装責任者 富士常葉大学大学院 環境防災研究科 教授 田中 聡

はじめに

 災害が発生すると、被災者の生活再建に向けてさまざま災害対応業務が発生する。災害対応業務とは、ほとんどの自治体にとってはじめての経験となるため、地域防災計画にあらかじめ業務分担や手順が明記されていても、限られた時間と資源を有効に活用して、一定レベル以上のサービスの品質を保つことはきわめて難しい。中でも建物被害認定調査とそれに基づく罹災証明書発行は、被災者の住宅再建のみならず生活再建全般の起点となる重要な業務であるが、1)通常業務とは全く異なる業務である、2)短期間で大量の建物を調査しなければならない、3)調査には正確性・公平性が求められる、4)応援を含む多数の未経験者が調査に加わる、5)調査内容・結果を被災者が理解し納得しなければ生活再建は始まらないなど、行政・被災者の双方に大きな混乱をもたらし、再建方針が判断できずに住宅再建がなかなか進まない状況が過去の災害において発生した。
 この問題に対してH19-20年度 国土交通省建設技術研究開発助成(研究課題:住宅に対する建物被害調査・再建支援統合パッケージの開発)において、主として2007年に発生した能登半島地震および新潟県中越沖地震における被災自治体の対応を分析し、建物被害認定調査から被災者の生活再建支援にいたる一貫した業務システムのプロトタイプを構築してきた。この研究成果は、能登半島地震における輪島市・穴水町、新潟県中越沖地震における柏崎市・刈羽村などの災害対応において実際に適用され、高く評価された。
 本事業ではこの成果を静岡県下の自治体へ実装する活動をとおして、自治体への実装事例データを蓄積し、より多くの自治体への普及を目指す。

概要

 大規模災害時に自治体の建物被害認定業務が直面する課題は、1)調査棟数が多い、2)調査員が足りない、3)被災者が調査結果に納得しない、4)調査は公平でなければならない、5)早く正確に罹災証明書を発行する、の5つがある。これらの課題を行政職員だけで解決しようとすることは、特に大規模災害時には困難である。
 そこで本事業では、自治体の災害対応業務の中に被災者による建物被害自己診断-自己申告システムを実装することによって、主体的に活動できる被災者にも参画を求めてこれらの課題を解決し、より効果的な災害対応を実現することを目的とする。
 特に本事業では、静岡県下のタイプの異なる複数の自治体に本システムを実装することによって自治体への実装事例データを蓄積し、多くの被災経験のない自治体への自立的実装の促進をすることを目的としている。