HOME採択プロジェクト/平成21年度採択  干潟再生(英虞湾)

採択プロジェクト

平成21年度採択

英虞湾の環境再生へ向けた住民参加型の干潟再生体制の構築

実装責任者 三重県水産研究所 水圏環境研究課 研究員 国分 秀樹

はじめに

 英虞湾では、毎年のように赤潮と貧酸素水塊が発生し、真珠養殖をはじめ海域の生物生産が低下する等の環境悪化が社会問題となっています。これまでの研究で、その主因が干潟消失による自然浄化能力の低下にあることが明らかになっています。現在英虞湾では,湾奥部の水田干拓により,70%以上の干潟が消失し,現在はその干拓地の85%以上が沿岸休耕地として放置されています。その沿岸遊休地は,環境が悪化し,生物がほとんど生息できない状態になっています。しかし、一度干拓された,沿岸休耕地を干潟に再生するためには、管轄する行政部局や地元住民の方々の理解を得る必要があります。
 そこで、湾内の沿岸休耕地(志摩市阿児町石淵(約2ha))をモデル海域として、地元住民の皆さんと連携した再生活動を実施します。この活動を通して、英虞湾発の住民参加型の干潟再生手法モデルを確立するとともに、英虞湾再生の一手法として、沿岸休耕地の干潟再生の重要性が地元住民のみなさんに理解していただき、継続的に活動できる体制の構築を目指しています。

活動内容

 湾内の沿岸遊休地(志摩市阿児町石淵(約2ha))をモデル海域として,地元住民と連携した再生活動を実施します。
 この活動を通して,英虞湾発の住民参加型の干潟再生手法モデルを確立するとともに,英虞湾再生の一手法として,沿岸遊休地の干潟再生の重要性が地元住民をはじめ広く認識していただき,継続的に活動できる体制を構築します。

平成21年度活動内容

●水門改変と沿岸休耕地への海水導入の開始
 平成22年3月にモデル海域(石淵)の潮受け堤防に設置されている水門の開放工事を実施し,沿岸休耕地への海水導入を開始しました。


モデル海域と海域とを分断する潮受け堤防

水門開放工事の状況

地元への報告会

平成21年11月に地元住民をはじめ,漁業者や行政関係者など,約40のグループで構成される,英虞湾再生協議会において実装支援事業の事業概要の説明を行い,今後の活動の協力について承認していただいた。


英虞湾自然再生協議会

EAS Congress (東アジア海域会議)(2009.11月)

 フィリピンマニラで開催された東アジア海域会議に,志摩市長をはじめ志摩市の関係者と共に,英虞湾再生の取り組みについてブース展示とプレゼンテーションにて報告した。ブース展示では,英虞湾自然再生協議会の説明をはじめ,実装支援事業の干潟再生事例と,英虞湾の概要を市民向けにまとめた「小冊子英虞湾」の紹介を行った。この活動は英虞湾の研究成果と沿岸遊休地の再生に関する取り組みについて,広くアピールし,同じ問題を抱える他の地域との情報交換と連携交流ためには絶好の機会であった。また,志摩市としては,今後英虞湾の環境と基幹産業の再生を戦略的に進めていくための一つの重要な手法として,干潟再生をアピールして頂いた。


ブース展示の概要

英虞湾の取り組みの紹介

地元志摩市環境イベント「つなぐるフェス」(2010.04月)

 地元志摩市で開催された,住民参加の環境イベントにおいて,干潟再生に関する説明と,実装支援事業の説明を行いました。




22年度以降のイベント予定

●協力機関(志摩自然学校,伊勢志摩国立公園横山ビジターセンター,環境情報センター)と連携しながら,イベントを通じて普及啓発活動を実施していく。具体的には,下記の通り。

・伊勢志摩国立公園横山ビジターセンター     
 2010.05.29;干潟生物観察と干潟再生体験     
 2010.09.11;干潟生物観察と干潟再生体験

・環境情報センター   
 2010.06.13;干潟生物観察指導者育成講座     
 2010.07.27;地元小学校の交流授業(干潟再生体験)

 また,2010年10月名古屋で開催予定であるCOP10のパートナーシップ事業として認証された。また,COP10では実装支援事業のブース展示とモデル海域へのエクスカーションも予定している。

参考資料

・事業パンフレット

・英虞湾の環境再生へ向けた住民参加型の干潟再生体制の構築