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領域について総括メッセージ

東京都市大学環境学部 教授 大守 隆

大守 隆

領域総括
元 内閣府 政策参与/元 大阪大学 教授

「持続可能な社会」の重要性が人々に認識されてから相当の時間がたちました。この間、様々な科学技術が進歩し、資本の蓄積や制度の整備もかなり進みましたが、残念なことに、我々の社会の持続可能性が高まったとは言い難いように思います。地球環境問題の中には悪化を続けているものが多くあります。日本の財政の累積赤字も経済成長率を上回る勢いで増加しています。過疎化によって多くの地方自治体の将来が危惧されています。貧富の格差も多くの先進国で拡大してきました。

人々の幸福度や生活満足度は、ある程度の所得水準に達した後は、所得が増加してもあまり改善しないことが知られています。日本もそういう段階に入ったと思われますが、人々の生活不安度が上昇傾向にあることは見逃せません。また、昔に比べて「世の中がすさんできた」とか「世知辛くなった」といった声も耳にします。こうした漠然とした不安感も持続可能性の問題と深くかかわっているように思います。

持続可能な社会を構築するためのアプローチには様々なものがあると思います。多くの方々が、それぞれのテーマに関しそれぞれの方法で尽力されていることに敬意を表します。本領域では、「多世代共創」という方法で持続可能な社会を構築しようという試みに焦点を当てます。持続可能とは同じことを繰り返していくことではなく、変わっていくべきものと維持すべきものを精査していくことが必要で、様々な不確実性の中で、これから生まれてくる世代に何を引き継ぐべきかという観点も含め、社会の中での合意形成が必要です。

かつては、生産と生活の場が一体化していて、家庭や地域社会で多世代が様々な形で協力していました。そうした中で、自分達が悠久の歴史の中で「今」を託されているとの意識も形成されたように思います。大量生産、核家族化、都市化、国際化などに伴ってそのような機会は少なくなりましたが、一方で、最近の情報通信技術の発展によって、人々が新しい形で絆を深め助け合うことが可能になったとも思います。

人類の繁栄はこれからも続いていく、と安心できるような新しい暮らし方と、そのための社会技術を求めて努力を続けたいと思います。

プロフィール

国家公務員として国土庁では地方都市整備に取り組み、経済企画庁では科学技術を初めて採り上げた経済白書を執筆した。国立環境研究所の研究会にも参加した。
内閣府発足後は、GDP統計の改善を行ったりOECDの対日経済審査の首席代表を務める一方で、ソーシャルキャピタルや幸福度に関する研究を経済社会総合研究所の一つの柱として立ち上げた。
退官後は、外資系証券会社のチーフエコノミスト、APEC(アジア太平洋経済協力)の経済委員会議長、東京都市大学環境情報学部教授を歴任。オックスフォード大学経済学博士。

※前領域総括:植田 和弘(京都大学大学院経済学研究科 教授) ~平成28年1月

領域について