【プロジェクト訪問】BaSSプロジェクト主催シンポジウム全国ツアー2018『公共施設マネジメントのススメ方~持続可能な"公共資産"整備の実現に向けた取り組み~』

開催日:2018年(平成30年)1月27日(土)
会場:池田市役所大会議室(大阪府池田市)

『持続可能な多世代共創社会のデザイン』領域 (RISTEX)
「地域を持続可能にする公共資産経営の支援体制の構築」(平成28年度採択)
研究代表者:堤 洋樹(前橋工科大学工学部 准教授)

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土曜日の池田市役所は、ひと気もなく静か。この7階会議室でこれから、まちづくりについての激論が交わされるところです。配布されたパンフレットには、現在このプロジェクトチームと協働する9市それぞれの、公共施設再編計画が紹介されていました。会津若松市、鴻巣市、前橋市、長野市、秩父市、御前崎市、犬山市、池田市、廿日市市。地域ごとに個性豊かな再編計画がまとまりつつあります

高度経済成長期に集中して造られた日本の建物や道路は、いま一斉に、補修や整備を必要とする時期を迎えています。
堤プロジェクトは、そうした「公共資産」を整備・活用する手法の開発に取り組んでいます。たとえば、管理部署の異なる複数の施設を統廃合するときには、耐久性を計測し、活用度などを数値化した客観的な指標で評価すれば、判断の基準が「見える化」できます。こうした手順が確立すれば、複数の関係部署や住民の皆さんの意見調整も、よりスムーズになるはずです。
プロジェクト協力自治体は全国9市。今回は、池田市でプロジェクトの進捗を報告するとともに、今後の展開へ向けて市民の皆さんと直接議論する場を設けました。

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パンフレットで解説されている、池田市の公園再整備案。これまでにも1年かけて、現地調査や他市の視察、整備案のプレゼン、市民ワークショップなどを行ってきました

「すっごく厳しくて大変」な会議を開催
みなさんの意見を伺います!

「まちづくりの会議は、すっごく厳しくて大変よ~~」
開会を待つ会場の隅で、領域アドバイザーに耳打ちされました。確かにシンポジウム会場は、ワークショップや成果発表会とは違った緊張感に包まれていました。
税金を使って自分のまちを大きく変えようという話ですから、真剣になるのは当然です。「夢を語っているだけではないのか」「本当に実現できるのか」「ちゃんと市民の意向が反映されているのか」......厳しいまなざしが注がれます。
開会挨拶に続き、プロジェクトの内容が簡単に紹介されました。そのあといよいよ、池田市のまちづくりについて。いま池田市では、高齢者福祉施設などが集まった「敬老の里エリア」の再整備を検討しています。交流施設の併設で多世代の交流を促し、ウォーキングエリアの充実により健康を増進、さらに大学との協働なども計画に盛り込まれています。
一方で、老朽化した住宅をはじめ、今後の継続を考えなくてはならない施設もあります。施設ごとの活用度や人気、安全性など、プロジェクト主導の多角的な検証を経て、具体的な計画が出来上がりつつあります。
「私たちのお手伝いは、必要なシステムの構築と運用の部分だけです。住民のかたに本気になっていただかないと、計画は進められません!」
 堤代表のこの言葉こそ、プロジェクトの核でもあります。持続可能な形で公共資産を活用するには、国や自治体に「おまかせ」ではなく、さまざまな世代の住民が自ら発案し、動き、合意形成のうえで方向性を決めていく必要があります。「すっごく厳しくて大変」でも、こうして意見を伺うのは、決して外せないステップなのですね。

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開会の挨拶をする倉田薫市長(左)と堤洋樹代表(右)。会場は地元住民のみなさんで埋まっていました

全国自治体に共通の課題
「公共資産をどう維持するか」の答えを探す

後半のパネルディスカッションでは、プロジェクトに携わるメンバーと、さまざまな立場から市政に関わってきたみなさんとが、意見を交わしました。続いて質疑応答の時間。待ちかねたように会場から手が挙がります。
「この施設についての評価を見比べたけど、ふたつの調査で結果が異なっている。これは矛盾してませんか?」
「調査の結果が納得できない」
次々と、強い口調の意見や指摘が飛び続けます。

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左から、倉田薫氏(池田市長)、池澤龍三氏(Bassプロジェクト/建築保全センター)、前田修氏(こども食堂「寺子屋・mae」/建築保全センター)、齋藤宏太氏(池田市職員/敬老の里プロジェクトメンバー)、今給黎一徳氏(池田市職員/敬老の里プロジェクトメンバー)。会場では、食い入るようにパンフレットに見入る姿が。説明の言葉ひとつひとつに、首をかしげたり考えこんだりと、簡単には頷いてもらえそうにありません

「会場から、ずいぶん厳しい意見が出ていましたね......」
シンポジウム後、プロジェクトに携わる学生さんからそんな感想が漏れましたが、堤代表は、「いやいや、まだまだこれから!」と力強く一言。厳しいのは当然のこと、自分の街について真剣に考えていただいている証でもあります。今後さらに、さまざまな層の市民の皆さんに意見を伺い、ワークショップ等を通じて計画を煮詰めていきます。
「さまざまな層の市民の皆さん」といえば、池田市役所の中で組織横断的に結成されたプロジェクトチームは、「市民でもある自治体職員」として、なんとも頼もしい存在です。20~30代の複数の若手がメンバーに入っているのは、ちょっと羨ましいですね。

縮小する市町村の財政で、公共資産をどう維持していけばいいのかは、今や全国の自治体に共通の課題です。たとえば、サービス水準だけは公共が決定することにして、設置と運用は民間に任せてしまうなど、新たな手法も試みられています。
9市の取り組みからも、地域の暮らしを豊かなものにする、公共資産の新しいマネジメント手法が生まれてくるかもしれません。

※所属・役職は、取材当時のものです。
(文責:RISTEX広報 公開日:平成30年9月25日)