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植物をまるごと透明化する技術「ClearSee」の製品化

戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO) https://www.jst.go.jp/erato/index.html

植物の体をまるごと透明化できれば、細胞の働きなど全体が生きたまま観察できる――。研究者や産業界が待ちこがれた魔法のような試薬が実現しました。

名古屋大学大学院理学研究科の栗原大輔特任助教と東山哲也教授らが開発した植物組織透明化技術「ClearSee(クリアシー)」が、和光純薬工業から植物透明化試薬「ClearSee®」として昨年12月に製品化されました。開発技術の発表(2015年11月)をきっかけに同社が事業化を計画し、栗原特任助教と連携して、試薬製品化へとつなげたものです。

植物の体はさまざまな器官を持ち、その形態や役割も多種多様です。それらの役割を解明するには植物内部構造の詳細な観察が必要ですが、解剖ではありのままの状態を観察することは困難でした。 と、植物の蛍光観察時の妨げになるクロロフィルという色素を取り除いて植物をまるごと透明化するので、深部にある細胞1つ1つまで観察が可能となります。その結果、植物を傷つけることなく、本来の3次元構造を保ったまま内部で起こっている現象を観察できます。この試薬は、蛍光たんぱく質の観察のみならず、蛍光色素による染色との併用も可能です。

今後、植物を蛍光観察するための基本的技術として、細胞レベルの現象と個体全体をつなぐシステムの解明や、めしべにおける生殖過程の解明など、植物科学研究を加速すると期待されます。


植物(シロイヌナズナ)を、ClearSee処理すると、下のマス目が透けて見える。


シロイヌナズナのめしべをClearSee処理後、2光子励起顕微鏡で撮影。