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SATREPSプロジェクトがザンビア国のエボラ出血熱対策を支援
2014年08月17日 ザンビア共和国ルサカ

シエラレオネやリベリア、ギニアを中心に西アフリカでエボラウイルスの感染が過去最大の規模で拡大しています。

2014年8月17日、ザンビアでのSATREPSプロジェクト「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の調査研究」の研究代表者 高田礼人教授(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター)が、エボラウイルスの感染が疑われる患者の検査体制を検討するためにザンビアへ向かいました。

エボラ出血熱の致死率は50~90%と出血熱の中で最も高く、現時点(2014年9月3日)で承認された予防ワクチンや、感染後エボラウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬はまだありません。この事態を受け、世界保健機関(WHO)は2014年8月8日、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」だと宣言し、感染防止に国際的な協力を訴えています。

SATREPSプロジェクトが実施されているザンビアでは、これまでエボラ出血熱の発生は確認されていません。しかし、ザンビアは過去にエボラ出血熱もしくはマールブルグ病の発生報告のある国(コンゴ民主共和国、アンゴラおよびジンバブエ)に囲まれているため、ヒトの移動や、ウイルスを保有する自然宿主(しゅくしゅ)動物によってウイルスがザンビア国内に持ち込まれる、あるいはすでに存在している可能性が高いものと考えられます。さらに、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行を受け、早急に対策を確立する必要がありました。

このような中、ザンビア国保健省はエボラ出血熱の発生に備え、“The Ebola Virus Disease Rapid Response Preparedness Committee”を設置しました。

ザンビア大学付属教育病院(UTH: University Teaching Hospital)および北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターザンビア拠点が設置されているザンビア大学獣医学部は、この委員会(Committee) からの依頼を受けて、ザンビア国内のエボラウイルス感染者の早期発見と診断に係る対策及びその対応を実施することとなりました。

今後、ザンビア国内でエボラウイルスの感染が疑われる患者が発生した場合、ザンビア大学へ血液などの検体が輸送されます。ザンビア大学獣医学部には、SATREPSで派遣されている研究員がおり、同研究員が、封じ込め実験室であるバイオセーフティレベル3(BSL-3)の実験室において、検体から核酸を抽出しエボラウイルスのゲノムを検出することになります。

ザンビアでのSATREPSプロジェクトでは、ザンビアを取り囲む国々で毎年のように発生しているエボラ出血熱およびマールブルグ病、ザンビア国内で2008年に発生した新種のアレナウイルスによる出血熱、もしウイルスが侵入した場合にはザンビアの養鶏業界に深刻な打撃を与えるであろう高病原性鳥インフルエンザ等について、野生動物、家畜およびヒトの検体を収集し、保有ウイルスを調査することによって、自然宿主、宿主域および伝播経路の解明に取り組んでいます。また、野生動物が保有する未知のウイルスを探索し、病原体としてのリスクを評価しています。

エボラウイルスに関しては、自然宿主を突き止めるべくコウモリなどを捕獲し、血液や臓器中のエボラウイルスや抗体の有無を調べる疫学調査を行い、エボラウイルスの人間社会への侵入経路の解明に取り組んでいます。これまで検査したコウモリからエボラウイルスは検出されていませんが、エボラウイルスに対する抗体は検出されており、これらのコウモリが過去にエボラウイルスと接触をもったことが推察されています。また、すでにこれまでに知られている全てのエボラウイルスに反応するモノクローナル抗体の作出に成功しています。現在は、これまでに作出した抗体を用いた診断法の開発を試みています。

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)の略語。
科学技術と外交・国際協力を相互に発展させる「科学技術外交」の一環として、文部科学省、外務省とJST、JICAが連携して実施する3~5年間のプログラム。地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行います。

「アフリカにおけるウイルス性人獣共通感染症の調査研究」
(研究代表者:高田 礼人 北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 教授/採択年度:2012年度/研究期間:5年間/相手国:ザンビア)
https://www.jst.go.jp/global/kadai/h2409_zambia.html


ザンビア大学付属教育病院(UTH)で
打ち合わせを行う高田教授


ザンビアのテレビ局による取材


防護服を着たSATREPS研究員の
検査風景


SATREPSプロジェクトでの活動。
コウモリが持つウイルスの調査。