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公開講演会で"アマゾンの森林を守る"方法を探る SATREPSプログラムの2プロジェクトチームが参加
2013年12月01日 JICA地球ひろば 東京


JICA地球ひろばで開かれた講演会には、100人近くが参加した=2013年12月1日撮影

世界の熱帯雨林面積の半分を占める南米アマゾンの森林をどう守っていくか、をテーマとする講演会「アマゾンの森林を守る〜森林の炭素蓄積と生物多様性の保全に向けた森林研究」が12月1日、東京都新宿区のJICA地球ひろばで開かれました。この講演会は、独立行政法人森林総合研究所、東京大学、一般財団法人リモートセンシング技術センター、JICA(独立行政法人国際協力機構)、JSTの主催によるもので、SATREPSプログラムの平成21年度採択課題「アマゾンの森林における炭素動態の広域評価」が4年間の活動で得られた成果を発表し、一般市民と交流するのが目的です。

講演会には一般参加者および関係者など約100人が参加しました。

最初にあいさつに立った森林総研・REDD研究開発センター長の松本光朗氏は、「アマゾンは三大熱帯雨林の中でも最大の500万平方キロメートルの面積を持ち、生物種は全世界の1割が集中する生物多様性の宝庫といわれています。しかし、違法伐採や干ばつの影響で森林が急速に失われてきました。プロジェクトでは、気候変動枠組み条約(IPCCC)の主たる話題となっているREDDプラス(ことばを参照)の枠組みに向け、アマゾン熱帯林の炭素蓄積量の推定を、人工衛星を使ったリモートセンシングと地上調査の組み合わせを試みました」と、プロジェクトの概要について説明しました。

続いて、プロジェクトチームで両国の研究代表者を務める、森林総研・客員研究員の石塚森吉氏とブラジル国立アマゾン研究所(ブラジル・マナウス市)のニーロ・ヒグチ氏、プロジェクトの主要メンバーであるブラジル国立宇宙研究所のエジディオ・アライ氏、東京大の沢田治雄教授の4人が講演しました。

世界的に権威ある科学誌のネイチャーやサイエンスに多くの論文を投稿し、アマゾンの森林研究の第一人者として知られるヒグチ氏は、1988年からの23年間でアマゾン熱帯林面積の15%(日本の総面積に匹敵)が失われたことを指摘したうえで、干ばつと積乱雲からの激しい下降気流(ダウンバースト)による熱帯雨林への影響を論じ、「精度は荒いが、どちらも違法伐採と同じく、炭素蓄積への影響が認められる。このままではアマゾンの原生林は近い将来に消えてしまうだろう」と述べました。また、沢田教授は、「2500箇所のプロットでの地上調査を、リモートセンシングのデータを組み合わせた結果、アマゾンの森林の炭素蓄積は1070億トン。これまで不確実性が高かった西側の熱帯林に多くのプロットが設定され、精度が大きく改善されたモデルを示すことに成功した」と報告しました。

一方、人工衛星を用いてアマゾン熱帯林の違法伐採を監視するシステムを作り上げた、JICA技術協力プロジェクトの代表者で、リモートセンシング技術センター・特任総括研究員の小野誠氏と、SATREPSの平成25年度条件付採択課題「“フィールドミュージアム”構想によるアマゾンの生物多様性保全」の研究代表者、幸島司郎教授――らが、それぞれのプロジェクトを紹介しました。

講演者全員が参加するパネルディスカッションも開かれ、会場の参加者から「違法伐採はどうすればなくせるのか」「森林バイオマスやCO2フローの測定方法はどうすべきか」などの質問が投げかけられ、それぞれの研究者から現場の実情を踏まえた見解などが紹介されました。

  • 【関連するリンク】
  • SATREPS
  • http://www.jst.go.jp/global/
  • 地球規模課題対応国際科学技術協力(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)の略語。独立行政法人科学技術振興機構(JST)と独立行政法人国際協力機構(JICA)が共同で助成し、地球規模課題解決のために日本と開発途上国の研究者が共同で研究を行う3〜5年間のプログラムです。これまでに39カ国77のプロジェクトが実施されています。
  • SATREPS平成21年度採択プロジェクト「アマゾンの森林における炭素動態の広域評価」
    研究代表者、石塚 森吉(独立行政法人 森林総合研究所 客員研究員)
  • http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2101_brazil.html
  • アマゾン等の熱帯林の減少・劣化によるCO2排出量は、人為的な総排出量の約20%と見積もられています。現在、森林破壊の防止を国際的な地球温暖化対策に位置づける動きがありますが、その実現には、森林破壊の防止によってどの程度CO2を削減できるかを評価する技術の確立が必須です。本研究では中央アマゾンの森林を対象に、広域レベルの森林の炭素蓄積量とその変化量を測る評価技術の開発に挑みます。
  • これまでに中央アマゾンの約1500箇所で森林のしくみや炭素蓄積量等の調査を実施しました。さらに衛星データを利用した測定技術により、雨季の水位上昇による森林の浸水など、アマゾン特有の環境と森林の炭素蓄積量との関係が明らかになってきています。今後はアマゾンの炭素蓄積量マップの開発を目指します。
  • SATREPS平成25年度条件付採択プロジェクト「“フィールドミュージアム”構想によるアマゾンの生物多様性保全」
    研究代表者、幸島 司郎(京都大学 野生動物研究センター 教授)
  • http://www.jst.go.jp/global/kadai/h2503_brazil.html
  • アマゾンのマナウス近郊では、急速な都市拡大によって世界で最も生物多様性の高い貴重な生態系が脅かされています。この地域の生態系を保全し地域社会の持続的発展をはかるために、日本の先端観測技術を駆使した共同研究によってアマゾンの代表的生物と生態系の科学的解明を進め、その保全法を確立するとともに、研究・保全・環境教育に不可欠なばかりでなく、エコツーリズムなどを通じて地域経済にも貢献できる自然観察研究施設と保護区のネットワーク「フィールドミュージアム・ネットワーク」を整備します。あわせて、最新の科学的知見と地域文化の理解にもとづいた環境教育とエコツーリズムのプログラム開発、自立的運営と活用のための組織整備を行います。
  • JICA技術協力プロジェクト
    「日本の人工衛星で監視するアマゾンの違法伐採防止(アマゾン森林保全・違法伐採防止のためのALOS衛星画像の利用プロジェクト)」
  • http://jp.alos4amazon.com/project
  • http://www2.jica.go.jp/hotangle/america/brazil/000820.html
  • ブラジル政府は中国と共同で打ち上げた人工衛星などを利用して、以前から森林破壊の対策に積極的に取り組み、ブラジル連邦警察(DPF)と環境再生天然資源院(IBAMA)は、年間1,000件以上の違法伐採などの環境犯罪を摘発してきました。しかし、雨期を中心にアマゾン地域上空は6ヵ月間以上にわたって厚い雲に覆われるため、従来の人工衛星では違法伐採を監視できない状況にありました。そこで、本プロジェクトは、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星(ALOS:Advanced Land Observing Satellite、通称だいち)のレーダー観測を利用し、天候や昼夜を問わず違法伐採を監視する技術を移転するもので、ブラジル政府の要請を受け2009年から2012年にかけて行われました。
  • 【ことば】
  • REDDプラス・・・REDDは「Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation in Developing Countries(開発途上国における森林減少・劣化等による温室効果ガス排出量の削減)」の略称。開発途上国における森林減少・劣化の抑制や森林保全によるGHG排出量の減少に、経済的なインセンティブを付与することにより、排出削減を促進させようという国際的な取り組み。REDDが森林減少や劣化の抑制だけを対象とするのに対し、REDDプラスは森林保全、持続可能な森林経営および森林炭素蓄積の増加に関する取組を含む。
  • 現在、気候変動枠組条約(UNFCCC)においてREDDプラスの枠組み等に関する議論が行われており、まだ国際的なルールは決まっていないが、様々なパイロットプロジェクトや開発途上国の能力開発支援が、先進国や国際機関、民間企業、NGOによって行われている。
  • REDDプラスに関しては、主に(1)参照レベルの設定、(2)モニタリング手法の確立、(3)ガバナンス、先住民族や生物多様性への配慮――などの課題が指摘され、VCS(Verified Carbon Standard)やCCBスタンダードなど自主的なガイドラインが作られている。しかし、熱帯泥炭地に蓄積されるCO2関しては、科学的なモニタリング手法が十分に確立されているとは言えなかった。
  • 詳しくはJICAの冊子を参照: http://www.jica.go.jp/publication/pamph/pdf/redd.pdf