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「CREST・さきがけ元素戦略領域合同 第1回公開シンポジウム」開催報告
2013年11月29日(金) 東京国際フォーラムホールB5

「元素資源問題はサイエンスで解決する」−CREST研究総括を務める玉尾皓平・理化学研究所 研究顧問の開会挨拶は、この力強い言葉から始まった。CREST「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」研究領域(研究総括:玉尾 皓平 理化学研究所 研究顧問)と、さきがけ「新物質科学と元素戦略」研究領域(研究総括 細野 秀雄 東京工業大学 元素戦略研究センター長・フロンティア研究機構教授)は、合同で第1回公開シンポジウムを開催した。

「元素戦略」の起源は、2004年春のJST主催ワークショップ「科学技術未来戦略ワークショップ(物質科学)〜夢の材料の実現へ〜」(オーガナイザー:村井眞二・現 奈良先端科学技術大学院大学 特任教授、議長:玉尾皓平・現 理化学研究所 研究顧問)である。そして、その議論が中村栄一・東京大学 教授によって「元素戦略」と命名され、その後文科省・経産省合同プロジェクトの発足に繋がるなど、今や「元素戦略」が我が国の科学者コミュニティーの熱い議論から科学技術政策となり世界に広がった典型的事例として認識されるようになっている。玉尾研究総括の開会挨拶では、これまでの取り組みや国内外への情報発信などが詳細に紹介され、今回のシンポジウムのキャッチフレーズでもある「周期表から産業競争力へ 元素を自在に操り平凡から非凡を生み出す」が会場の参加者と共有されるところから始まった。

その後の講演セッションでは、世界最強のネオジム磁石の発明者である佐川眞人博士(インターメタリックス梶jによる開発の経緯や今後の磁石研究への期待についての基調講演を皮切りに、4名のCREST研究者と5名のさきがけ研究者が講演を行った。また、CREST研究チーム、さきがけ研究者によるポスター発表も行われ、研究者間の良き情報交換、ネットワーク構築の場となった。

講演セッションの最後には、細野研究総括が「ありふれた元素の可能性:鉄系超伝導を例に」と題する基調講演があった。細野研究総括からは、「鉄は磁性の典型的元素で、超伝導とは相性がよくない」と信じられていた常識を覆し全世界に巻き起こった「超伝導研究フィーバー」、現在の日本・米国・中国を中心に繰り広げられている線材応用を見据えた基礎研究の事例が紹介されたが、特に線材応用の決め手となる臨界電流密度は、実用化レベルに迫る状況にまで至っているとのことであった。

欧米でも、日本の動きに追随するかたちで様々な希少元素代替材料の研究プロジェクトが実施されており、米国エネルギー省は「Critical Materials Hub」というプロジェクトを推進中である。一方、日本発の「元素戦略」は、単なる希少元素代替に留まることなく、新たな物質・材料の開発や探索を推進するもので、周期表と徹底的に向き合い、元素の新たなポテンシャルを引き出すとともに、それを戦略的に活用し持続可能な社会の構築を目指そうというものである。講演者からの発表でも、たびたび周期表が登場し、まさに「元素戦略」が研究者を中心として策定されていく様子が多く見られたのは印象的であった。

(JST戦略研究推進部 浅野佳那・大阿久裕美)