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「研究と支援の融合とは:〜SATREPSの経験を通して」セミナー参加報告
2013年10月11日(金)兵庫県神戸市 JICA関西


セミナー会場風景(JICA関西)

JICA関西・国立民族学博物館(みんぱく)・大阪大学グローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)が共同で運営している「研究者と実務者による国際協力セミナー」で、SATREPSのベトナムプロジェクト「薬剤耐性細菌発生機構の解明と食品管理における耐性菌モニタリングシステムの開発」の研究者(住村欣範准教授)が、SATREPSの経験をもとに、研究と支援の融合、「地球規模課題」という問題設定と地域との関係、ODAの要請主義と研究プロジェクトのあり方などについて考察し、参加者と議論を行いました。

当日は、国際協力、教育、ベトナム史学、環境学等、様々な分野の研究者や学生、企業の方など、約15名が参加し、各自の自己紹介から始まるアットホームなセミナーとなりました。

経験者は語る  〜SATREPSならではの苦労と意義〜
現在、SATREPSベトナムプロジェクトで人類学・人材育成グループのリーダーの住村准教授は、SATREPSは、JST/文科省、JICA/外務省の連携(研究と支援の融合)であり、文系と理系、あるいは相手国と日本とで、立場や推進方法の違いもあり、運営に当たっては、他のプログラムには無いような独特の苦労があるのかもしれないとの感想を語りました。

科学技術外交と研究現場の国際化  〜こんな真面目な学生がうちにもいたらなあ〜
住村准教授は、総合科学技術会議による 「科学技術外交の強化に向けて」(2007年04月24日)から、下記提言を引用し、2008年度にスタートしたSATREPSは科学技術外交の目玉であることを説明しました。

「今後は、科学技術を外交に生かす『科学技術外交』なる新たな視点に立ち、これを強化することにより、オープンな日本を実現しつつ、世界のイノベーションへの貢献を目指していくべきであると考える。特に、我が国の科学技術力を最大限に活用し、持続可能な社会の実現に向けた世界の諸課題に積極的かつ継続的に取り組むことで、我が国のソフトパワーを高めるとともに、研究協力や技術協力を外交と連携させることが重要である。」

また、ベトナムからの真面目で優秀な研修生や現地学生に接すると、優秀な研究者を日本に呼び込み、あるいは日本人学生・研究者を現地に送り出すことを通じて、大学を含む研究現場を国際化するのにSATREPSは有意義であると感じるそうです。

見えないニーズ、未来のニーズ  〜リスクコミュニケーションが大事〜
このSATREPSベトナムプロジェクトで取り組んでいる、薬剤耐性菌(薬に対して抵抗力を持ってしまい、薬が効きにくくなった菌)の脅威について、ベトナム現地の人は理解できていないことが多く、国と地域で理解度にギャップがあると、住村准教授は指摘しています。SATREPSでは、“開発途上国の社会的ニーズを基に”プロジェクトが生まれますが、現地の人に必ずしも自覚化されていない“膨満するリスク/忍び込むリスク”をいかに伝えるのか、リスクコミュニケーションもまた、欠かせないものとなっています。

社会実装に向けて  〜インターフェースとしての人文社会科学、フィールド科学・工学〜
SATREPSでは、具体的な研究成果の社会還元=「社会実装」を目指しています。しかし、市場とインフラが未整備の開発途上国にあっては、企業を現地に連れて行く、あるいは日本の技術を現地にそのまま持っていけば社会実装が達成されるというわけではありません。技術はその先で何が起きるのか分かりにくく、時にはブーメラン効果(あるいは負のしっぺ返し)も考慮に入れなければなりません。技術を社会実装し、持続的に利用するためには、技術の現地への適応化や、技術についてのリスクも伝える現地との十分なコミュニケーション等を通した、現地社会の組織化が極めて重要なのです。この点で、人文社会科学やフィールド科学・工学は、科学技術と社会の間のインターフェースになり得ると、住村准教授は考えます。

新たな知見の獲得/キャパシティ・ディベロップメント 〜SATREPSによってできること〜
SATREPSにより得られるものとして、住村准教授は、「他分野共同による統合知」、「場所にまつわる、場所における、場所のための知」、「未来の見えないリスクに対する基礎力」、「研究の教育への還元」といったことを挙げています。

最後に・・・
開発途上国との国際共同研究によりイノベーションの創出を目指すSATREPSでは、現地のニーズ、地球規模の課題に取り組む中で、何のために科学技術を発展させる必要があるのか?という根源的な問いに直面せざるを得ないようです。

SATREPS
国際科学技術共同研究推進事業 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)。
文部科学省・科学技術振興機構(JST)、外務省・国際協力機構(JICA)が共同で推進する、開発途上国との科学技術協力。日本の優れた科学技術とODAとの連携により、環境・エネルギー、防災、感染症、生物資源分野で、地球規模課題の解決と科学技術水準の向上を目指す。平成20年度に開始し、平成25年度までに、39カ国77のプロジェクトを採択。