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元素のポテンシャルを最大限に引き出す物質・材料科学が実感できるシンポジウム・ワークショップ、11月下旬に都内で相次いで開催


C12A7単結晶(左)と還元処理により得られたC12A7エレクトライド単結晶(右)


ネオジム磁石上で浮上する鉄系超伝導物質(液体ネオンで冷却)


ルテニウムを担持したC12A7エレクトライド触媒を用いたアンモニアを合成の様子(写真上)と、鉄系超伝導物質により作製された超伝導線材(写真下;物質・材料研究機構提供)

東京工業大学・細野秀雄教授は、「IGZO系酸化物半導体TFT(In-Ga-Zn-Oを中心とする酸化物半導体を活性層とする薄膜トランジスタ)」の発明でよく知られている。細野教授はこれを皮切りに、様々な元素の本質を理解し、それらを操ることにより、次々と新たな物質を見つけている。中でも、「C12A7エレクトライド」や「鉄系超伝導物質」は有名だ。

「C12A7エレクトライド(12CaO・7Al2O3:e-)」は、ありふれた元素(酸素、カルシウム、アルミニウム)からなる低コストのセメント化合物を還元処理することで簡便に作製できる物質で、2002年に細野教授のグループが発見した。熱的・化学的に安定で、かつ電子を放出しやすいという性質があり、この成果を利用した様々な応用展開が図られている。その期待の1つは、アンモニアを合成・分解する触媒。またこの成果は、希少元素を代替する材料開発を進める国の科学技術政策「元素戦略」の典型例の1つにも位置づけられている。

「鉄系超伝導物質」は、細野教授の透明酸化物研究の派生から進展した。2008年に同グループが発表した論文(最初の論文は2006年)は、多くの超伝導研究者に驚きをもって受け入れられ、世界中で新たな鉄系超伝導物質探索の競争が開始。今年9月細野教授には、論文・引用データからノーベル賞クラスの研究者を選出・発表することでも知られる「トムソン・ロイター引用栄誉賞」が授与された。鉄系超伝導物質における超伝導転移温度の最高は、2008年に発表された56 ケルビン(セ氏 マイナス217度) より更新はされていないが、新物質がその後続々と発見され、超伝導の新大陸を形成しつつある。また、線材への応用に関する基礎研究が急速な進展を見せており、日本(物質・材料研究機構)、アメリカ(フロリダ大)、中国(中国科学院)を中心に、実用化を睨んだ競争が繰り広げられている。

こうした最先端研究の現状や「元素戦略」の取り組みなどを、細野教授をはじめ世界のフロント研究者や精鋭の若手研究者らが紹介するシンポジウムとワークショップが、この11月下旬、都内で相次いで開催される(下記参照)。11月29日(金)に開催される元素戦略合同シンポジウムの基調講演は、世界最強のネオジム磁石の発明者である佐川眞人博士。新材料の生み出すインパクトを実感できるチャンスだ。

  • 最先端研究開発支援プログラム FIRST細野プロジェクト 国際ワークショップ
    「International Workshop on Novel Superconductors and Super Materials 2013」 (JSTは共催;※使用言語は英語・同時通訳なし)
  • http://www.supera.titech.ac.jp/ns22013/index.html
  • 開催日:2013年11月21日(木)~22日(金)
  • 会場:東京都港区 / ザ・グランドホール・品川
  • Mail: ns2-2013@lucid.msl.titech.ac.jp
  • CREST・さきがけ元素戦略領域合同 第1回公開シンポジウム (JSTは主催;※使用言語は日本語)
  • http://www.element-jst.com/
  • 開催日:2013年11月29日(金)
  • 会場:東京都千代田区 / 東京国際フォーラム・ホールB5
  • Mail: elesympo@jst.go.jp