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国内の構造材料研究プロジェクトの関係者が一堂に会してシンポジウムを開催
2013年07月09日 京都大学楽友会館

「例年、祇園祭が始まる頃、京都は非常に蒸し暑くなります」――との挨拶から、気温36度を超える猛暑の中、「京都大学 構造材料元素戦略拠点平成25年度第2回シンポジウム〜構造材料研究プロジェクトの新展開〜」が開幕しました。

このシンポジウムは文部科学省元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>の4拠点のうちの京都大学 構造材料元素戦略拠点が主催し、JST・CREST「元素戦略を基軸とする物質・材料の革新的機能の創出」研究領域(CREST「元素戦略」)や、JST・産学共創基礎基盤研究「革新的構造用金属材料創製を目指したヘテロ構造制御に基づく新指導原理の構築」(産学共創)、JST・先端的低炭素化技術開発(ALCA)「耐熱材料・鉄鋼リサイクル高性能材料」技術領域、科学研究費補助金・新学術領域研究「シンクロ型LPSO構造の材料科学」(シンクロLPSO)、科学研究費補助金・新学術領域研究「バルクナノメタル〜常識を覆す新しい構造材料の科学」(バルクナノメタル)、東北大学 金属材料研究所 計算材料科学研究拠点(CMRI)が共催したものであります。またシンポジウムの会場となった楽友会館は、1925(大正14)年に京都大学創立25周年を記念して建てられた鉄筋コンクリート2階建の瓦ぶきで、スパニッシュ・ミッション様式を基調とした外装からなる大正建築の特徴ある建物で、1998(平成10)年に国の登録有形文化財に指定されています。

シンポジウムの登壇者の一人として、CREST「元素戦略」の研究代表者である古原 忠 教授(東北大学金属材料研究所)は、「元素のクラスタリングを利用した鉄鋼の高強度化」と題する講演を行いました。古原教授は、2010(平成22)年度よりCREST「元素戦略」で、「軽元素戦略に基づく鉄鋼材料のマルチスケール設計原理の創出」という研究課題を推進中です。本研究課題では、軽元素を鉄鋼材料に添加することによってもたらされる著しい機能向上あるいは機能劣化に対して、最先端実験解析と計算材料科学を駆使して鉄のナノ構造と軽元素との相互作用を解明し、ナノ−メゾ−マクロにわたるマルチスケールでの材料設計原理の確立を目指しています。

シンポジウムの講演の中で、古原教授は、構造材料中の転位(結晶中の欠陥の一つで、変形や加工性に影響を及ぼすもの)と、固溶(元の結晶構造の形を保って固体状態で混じり合っている状態)やナノクラスタリング、析出といった現象との関係性の解明に向けた研究事例を紹介するとともに、「ここで得られた知見は、他のプロジェクトの研究にも有益な情報となる。」と他の構造材料プロジェクトとの連携についても言及されました。

シンポジウムではこの他に、文部科学省HPCI戦略プログラムの拠点の一つである計算物質科学イニシアティブ(CMSI)傘下のCMRI拠点長で産学共創の研究代表者である毛利哲夫 教授(東北大学 金属材料研究所)、新学術領域「シンクロLPSO」の領域代表者である河村能人センター長(熊本大学 先進マグネシウム国際研究センター)、新学術領域研究「バルクナノメタル」計画班代表である堀田善治 教授(九州大学 大学院工学研究院)からも各プロジェクトの研究進捗状況・今後の計画について報告があり、日本全体の構造材料研究の方向性を互いに確認する格好の場となったように感じました。

最後のセッションでは、京都大学 構造材料元素戦略拠点の各グループリーダーからの研究進捗の報告もありました。拠点長の田中 功 教授(京都大学 大学院工学研究科)からは「拠点内の垂直連携に加え、国内の他プロジェクトとの水平連携も図りたい。また、国内外の多様な研究者とも幅広く連携することで、電子論・材料創製・解析評価の三位一体の最先端研究を実施したい。」という力強い言葉もあり、盛況のうちに閉会となりました。

構造材料は、今年の06月に閣議決定された「科学技術イノベーション総合戦略」の中でも、重点的取組の一つとして挙げられており、そのような中で構造材料を研究する複数のプロジェクトが進行している状況にあります。開催者・講演者側からは、今後も複数の研究プロジェクト同士が一同に会する場を設定し、互いに協調して効率的・効果的に研究を推進していくとのメッセージが発せられましたが、引き続き本研究分野の動向に注目するとともに、このような国全体の取り組み・連携のあり方の中での、CREST「元素戦略」の果たす役割についてもしっかりと考えて行きたいと感じました。

(JST 戦略研究推進部 宮下 哲)