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CREST symposium in Hanoi 参加報告—ベトナムの水資源開発、CREST「水利用」領域プロジェクトに大きな期待
2012年11月7日 ベトナム・ハノイ

CREST「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」領域
http://www.water.jst.go.jp/


開会挨拶をする主催者の古米教授

これまでの水資源の多くは、主に河川やダムの水に依存してきた。それが気候変動の影響や、食糧増産などの人間活動の拡大によって、極端な水不足になることが懸念されている。水資源を安定的に確保するための方策として、雨水や地下水、下水処理水を高度処理した再生水など、新たな水利用のありかたが注目を集めるようになった。これらの水質や水量を調査して、水利用の可能性を探るプロジェクトが、日本とベトナムの両国で進められている。この度、ベトナム・ハノイ市内で開かれたシンポジウムに参加し、現場を視察した。

このプロジェクトは、JSTのCREST「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」研究領域の中で、東京大学・古米(ふるまい)弘明教授が「気候変動に適応した調和型都市圏水利用システムの開発」のテーマとして進めている。

調査は、東京の荒川とハノイのホン川の2つの都市河川の流域で実施している。荒川流域は安定成長の段階にある先進国の都市流域圏のモデルとして、またホン川流域は人口増加や水インフラの整備が今後も求められる新興市街化地域流域圏のモデルになっている。

都市の風土や発展形態が異なる両河川流域では、それぞれの水事情も大きく異なる。

ベトナムは、昔から川や池、地下水などの水資源が豊かにあった。しかし、人口急増による水需要の増加や、水質汚染、気候変動の影響などによって、昨今は極端な洪水や渇水が頻発するようになり、また幾つもの国境をまたぐ国際河川の複雑な管理の難しさも抱えている。この古米プロジェクトによって、今後ベトナムでどのような水利用が必要となるかに大きな関心が集まっていた。


熱心に講演に耳を傾ける
各国からの参加者


ハノイ市最大の下水処理場を見学


全体の集合写真

公開シンポジウムは11月7日、ベトナム・ハノイのホテルで開催された。

現地の期待の高さは、シンポジウムの参加者の多さに表れていた。東南アジアなど7カ国から130名以上の参加者があり、当初100名程度を見込んでいた会場は、満員で一時立ち見者が出るほどだった。また、現地の新聞に10件も大きく記事が掲載され、 テレビ報道も3件あった。

シンポジウムでは、まず古米プロジェクトの活動紹介があり、基調講演としてハノイ工科大学のトラン・ドゥク・ハ 准教授が、ベトナムの水資源の現状と今後の取り組みについて紹介した。ベトナムもこれまでの水利用を抜本的に見直す時期に来ており、2005年に制定された環境保護法をはじめ、2012年に改正された水資源法、2020年に向けた水資源戦略など、各種の法律や基準などが新たに制定されたり、見直されたりしている。

ハ准教授は、「このCRESTプロジェクトがベトナムで行われている機会をとらえ、日本と協力して研究を進め、また世界各国の事例からも学びつつ、ベトナム独自の最適な管理方法を模索していきたい」と意欲を語った。

現場視察ツアーでは、ハノイ市内のイェンソーポンプ場及び下水処理場を見学した。下水処理場は、市内に4つあるうちの最大規模のもので、今年から稼働を開始したことにより、これまでの約5倍の量の下水を処理できるようになった。それでもハノイ市全体の約3分の2の下水は未処理のまま放置されており、今後も、新たな処理場の建設が計画されている。施設内には見慣れた日本企業の水処理装置が立ち並び、日本とほぼ同じレベルの処理がなされていることは驚きであった。

古米プロジェクトのベトナム側コーディネーターが在籍しているベトナム国立建設大学の関係者は、「日本とは水の分野での交流だけにとどまらず、その他の学術分野でも幅広く積極的に協力していきたい」と期待を表した。

経済発展の上昇気流に乗って、ベトナムでは水に限らず様々な分野の国際共同プロジェクトが進んでおり、国際協力自体が各国からの激しい競争にさらされている。

それだけに日本には、ベトナム側がより魅力と実効性を感じるような働きかけが求められている。これまでのような単なる支援レベルで終わらせず、戦略のある明確な目的を設定し、研究成果や実務的な提言を発信していくことが必要になるだろう。

(戦略研究推進部 CREST水利用領域担当・吉田有希)