最新情報

JSTトピックス

JST-CREST支援国際シンポジウム「ISGD 2012」開催報告
2012年11月5日(月) 〜2012年11月9日(金)  放射光施設SOLEIL(フランス)

CREST研究領域「次世代エレクトロニクスデバイスの創出に資する革新材料・プロセス研究」(領域総括:EIDEC 渡辺久恒)において推進中の研究課題「グラフェン・オン・シリコン材料デバイス技術の開発」(研究代表者:東北大学電気通信研究所 尾辻泰一)では、2012年11月5〜9日の5日間にわたりフランスパリ近郊Saint Aubinにある仏国放射光施設SOLEILにおいて、国際シンポジウム:ISGD2012 (3rd International Symposium on Graphene Devices: Technology, Physics and Modeling) を企画開催いたしました。本シンポジウムは、急速な進展をみせている新材料グラフェンのデバイス応用に関する技術と物理およびモデリングをテーマとして、2008年11月(会津大開催)に第1回を開催以来、2010年10月(東北大開催)の第2回に続く第3回目として企画開催されました。第二回会議での成功を受けて内外の研究者の間で国際的な組織として発展させようとする機運が高まり、JST-CREST GOSチームの日本側メンバーに仏・米・露の代表者を加えた国際組織委員会が昨年設立されました。そして、仏パリ第11大学Patrick Soukiassian教授を議長とするフランス国内の現地組織委員会の下で、初めて日本を離れて欧州フランスにて開催されました。

内外の第一線で活躍する研究者21名(うち日本からは6名)を招聘し、最先端の研究成果を招待講演いただくとともに、33件の一般口頭講演(うち日本からは5件)と27件の一般ポスター講演(うち日本からは9件)を含め、合計81件の講演を集め、120名の参加者を得ました。講演件数は第1回(36件)の2倍以上、第2回(51件)の1.6倍に増加し、大変盛会でした。グラフェンの特異な電子輸送、光応答、スピン、熱伝導特性を中心とする物性、結晶成長・評価分析技術、トランジスタ、センサー、レーザー等の電子・光デバイス、論理ゲート、信号処理デバイスなど、グラフェンデバイスを基軸として幅広い領域の最先端の研究成果が5日間のセッションに集約され、終始、深い議論が交わされました。

Walt A. De Heer 教授(米ジョージア工科大)、 Ulrich Starke博士 (独Max Plank Inst.)、Albert Fert博士(仏Thales)、Stephane Roche教授 (西Catalan  Inst.)、をはじめ海外より15名、そして日本からは松本和彦教授(日・阪大)、塚越一仁博士(日・NIMS)、荻野俊郎教授(日・横浜国大)、ならびにCREST-GOSチームより尾辻泰一教授(日・東北大)、リズィーヴィクトール教授(日・東北大)、末光眞希教授(日・東北大)の6名、合わせて21名の第一線で活躍中の研究者が招待講演者として招聘されました。講演では、De Heer教授およびUlrich  Starke博士らよりSiC上へのエピタキシャル成長技術、界面制御・レイヤー制御技術、結晶評価解析技術、ならびにそれらの材料によるトランジスタデバイス応用に関する最先端の研究状況が報告されました。エピタキシャルグラフェンの結晶構造解析に関しては、GOSチームの末光眞希教授、吹留博一准教授(東北大)のグラフェン・オン・シリコン技術に加え、乗松航博士(名大)より炭化ボロン:BCの熱分解による新しいグラフェン成長と不純物Bのドーピング作用という最新の重要な研究成果が報告されました。グラフェン化温度は1600℃とGOSに比してかなり高温ですが、B不純物のドーピング制御が可能であるという大きな特徴を有しており、今後の展開が注目されます。

塚越一仁博士からは、グラフェントランジスタで重要課題となるオンオフ比向上とドレイン電流飽和特性の実現を二層グラフェンによるバンドギャップ開口で果たした実験結果が報告され、注目を集めました。ゲートスタック技術としてアルミナの自然酸化膜の有効性も示されました。松本和彦教授からは、グラフェンFETの超高感度バイオセンサー応用に関する研究成果が発表され、その極めて優れたセンシング性能に高い注目が集まりました。一方、開催国のフランスからは、Albert Fert博士やM.B. Martin博士(パリ第11大学)をはじめとしてスピントロニクス応用の理論と実験の成果についての発表が際立ちました。R. Sodan教授(伊・ミラノ工科大)グループの大学院学生E. Guerriero氏からは、グラフェン擬似相補論理インバータの多段接続動作の成功が発表されました。オフ電流が大きくCMOS等価動作とは言い難いものの、論理多段動作をグラフェンFET論理で成功させた初の成果であり、CREST-GOSチームと競合する優れた成果でした。

シリコン基板上に独自技術でヘテロエピタキシャル成長したグラフェン(GOS: Graphene On  Silicon)による高周波FET、論理回路およびテラヘルツ・プラズモンデバイスの開発をめざす当CRESTチームからは、GOSによるグラフェン成長・積層様式・結晶品質のSi基板面方位依存性、GOS材料によるトップゲート型FET動作、グラフェンテラヘルツレーザーに関する理論・実験結果など、招待講演4件(うち共同研究による米国研究者主著1件)、一般口頭発表オーラル4件(うち共同研究先の露研究者主著2件)、ポスター発表9件(うち共同研究先の露研究者主著2件)併せて17件の発表を行い、研究成果を大いにアッピールするとともに、多くの参加者と深い議論を交わしました。特に、一般口頭発表において、鷹林将博士(東北大)よりダイアモンドライクカーボン(DLC)をゲートスタック材料として、DLC内にδドープした酸素不純物によるグラフェンへのホールリモートドーピングの実験結果が報告され、グラフェンによる高電子移動度トランジスタ動作実現を示唆する成果として高い関心を集めました。また、共同研究者のS. Popov教授(露・コテルニコフ研究所)は、グラフェンメタルリボンアレイ構造におけるテラヘルツ帯での超放射現象ならびにプラズモンレーザー動作の理論的発見についての最新成果を発表し、高い関心を集めました。いずれもグラフェン超高速・高周波デバイス実現に有効な要素技術として、今後の発展が期待されます。

5日間の会議期間を通して、多くの参加者よりグラフェンデバイスに特化した本シンポジウムの意義を高く評価する声が多く寄せられました。クロージングでは、第4回ISGDの2014年米国開催計画がアナウンスされました。今回のシンポジウムを契機として、海外研究者コミュニティとの交流をさらに発展させ、グラフェンデバイス研究でイニシアチブを発揮できるよう、研究開発をより積極的に推進していく所存です。