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日本生物工学会(SBJ)/JST「藻類バイオエネルギー」領域共催 “International Symposium on Biotechnology for Green Growth” 開催報告
2012年10月24日(水) ~26日(金) 神戸国際会議場


松永総括講演


講演の様子

JST CREST&さきがけ「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」研究領域(研究総括:松永 是 東京農工大学学長)は、(公社)日本生物工学会(会長:原島 俊 大阪大学大学院工学研究科教授)90周年記念大会において同学会との共催による国際シンポジウムを、10月24~26日の3日に渡り、神戸国際会議場で開催しました。

本シンポジウムは、我が国においても、この分野の研究が推進されていることをCREST/さきがけ研究者の研究成果を通じて国際的に発信するとともに、世界最先端の研究者との議論をとおして一層の研究の進展を図り、グローバルネットワークの構築を推進し、「基盤技術の創出」とその「社会への実装」の実現に向けて研究の加速を図ることを目指して開催されたものです。

国際シンポジウムは、SBJ/JST合同の4セッションのほか、同会大会実行委員会による2セッションおよび学会員の企画提案から公募選出された2セッションの計8セッションから構成され、16名のJST招聘研究者を含む合計26名の海外招聘講演者を交えて一般公開で行われました。

初日には大会実行委員会により企画された「植物ゲノム科学の進展」と「生物機能を用いた物質生産」の2セッションにおいて、世界をリードする研究者18名の講演が行われ、講演者と参加者による活発な討論が展開されました。本研究領域からは、陸生植物の機能性向上や発酵法によるバイオ燃料生産などの関連技術分野の研究者として、ドイツから3名、カナダ・アメリカ・台湾から各1名の6名に講演を依頼しました。

2日目から3日目にかけて行われたSBJ/JST合同セッションでは、本領域の主眼である藻類・水圏微生物を利用したバイオエネルギー生産に焦点を絞り、同分野で世界を牽引する10名の海外研究者を迎え、CREST代表研究者5名、さきがけ研究者3名を含む日本人研究者と共に、「基調講演」、「バイオリファイナリー」、「微細藻によるバイオ燃料生産」、「システム&合成生物工学」の4つのセッションで講演が行われました。

2日目の「基調講演」は、松永是研究総括、大竹久夫大会実行委員長および石正茂JST戦略研究推進部部長のオーガナイズにより行われました。松永研究総括により、植物、藻類などバイオマスからのエネルギー生産のための技術開発の世界動向とその課題、及び研究領域として目指す内容と領域研究者の紹介がありました。さらに、米国、ヨーロッパのそれぞれで藻類からのバイオエネルギーの利用のための大プロジェクトを率いるJonathan D. Trent博士(NASA Ames Research Center¸ USA)、René Wijffels博士(Wageningen University¸ the Netherlands)より、各プロジェクトの概要・進捗状況ならびに今後の展望が紹介されました。いずれのプロジェクトも、藻類バイオエネルギーによる資源・環境問題の解決を的確に提示したもので、その実現可能性を壮大なスケールで実証しようという印象的な内容でした。また、Mario R. Tredici博士(University of Florence¸ Italy)は藻類による燃料生産に関わる第一人者であり、代替資源としての藻類エネルギーのポテンシャルを現実的な視点で俯瞰した講演は、その社会実装に向けて我々が乗り越えるべき課題を明らかにする上で極めて示唆に富んだものでした。講演後にフロアからの質問に同氏が述べた「Be realistic」という言葉には、本シンポジウムを通じて参加した全研究者が共有すべき認識が凝縮されているようでした。

3日目には、本研究領域のアドバイザーとCREST研究代表者(平成22年度第一期採択者)による「バイオリファイナリー」、「微細藻によるバイオ燃料生産」の2つのセッションと、さきがけ研究者の企画した「システム&合成生物工学」のセッションが行われました。海外からの講演者は、ドイツ・アメリカから各3名、韓国から1名でした。国内からは、近藤昭彦教授(神戸大)、宮下英明教授(京都大)の講演の他、CREST研究代表者による現状の研究成果と今後の課題などに関する講演ならびに、さきがけ研究者による独自の成果についての講演が行われ、本研究領域における世界最先端の研究開発動向について、フロアも含めた参加者が活発な意見を交わす場となりました。また、留学生を含む学生の参加も多く、講演会場外では講演者と聴講者の間で談笑を交えつつの意見交換がなされている姿が見受けられ、バイオエネルギー分野の次世代を担う若い世代にとっても刺激的なイベントであったと思われます。

本国際シンポジウムの、3日間に渡る8つのセッション全体での参加登録者は570名超となり、のべ1300名以上の来場者を数えました。学会員以外の多くの一般聴衆を集めたことは、この分野への期待と関心の高さを示すものでしょう。さらに、バイオテクノロジー分野におけるわが国の基幹学会である日本生物工学会の90周年記念大会との共催イベントとして開催することにより、バイオテクノロジー分野全般に渡る幅広い層の研究者への成果発信を通じて、そこから創出される新たなバイオイノベーションの萌芽を期待することができました。

最後に、JSTおよび研究領域の趣旨にご理解、ご賛同を頂きました日本生物工学会をはじめ、大会の開催運営にご尽力頂きました90周年記念大会実行委員会ならび事務局の皆様に深く感謝いたします。


質疑応答の様子


JST セッションポスター