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第3回国際会議「変動する環境下における森林と水(ForWat2012)」開催報告
2012年9月18日(火)~20日(木)福岡工業大学FITホール

基調講演
基調講演

ポスター発表
ポスター発表

CREST研究領域「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」の研究課題「荒廃人工林の管理により流量増加と河川環境の改善を図る革新的な技術の開発」(研究代表者:恩田裕一 筑波大学大学院生命環境系教授)が主催する第3回国際会議「変動する環境下における森林と水(ForWat2012)」が、2012年9月18日~20日に福岡工業大学FITホールにおいて開催された。実行委員長はCREST共同研究者の大槻恭一教授・笠原玉青准教授(九州大学大学院農学研究院・農学部附属演習林)が務め、13カ国から参加登録171名、基調講演10件、口頭発表54件、ポスター発表73件を得た。会議後の2012年9月21日は、CREST研究サイト・福岡県飯塚試験流域への見学旅行を実施し、参加者約50名を得た。台風一過の晴天にも恵まれ、成功裏に終了した。

気候変動によって、生態水文過程において様々な連鎖反応が生じている。気候変動に伴う森林流域の劣化、水資源の不足、生態系の劣化等に関する関心が高まり、新しい森林水資源管理方法が求められるようになっている。森林管理者や森林政策立案者に対して、科学的根拠に基づいた環境変動に適応する森林管理指針はまだ十分に整備されていないが、情報に基づいた決定(informed decisions)を可能にする「森林と水の関係」に関する研究成果は蓄積されつつある。そこで、森林水文学、生態水文学、流域管理学、保全生態学、森林生態学、気候変動科学等に関する世界の研究者が集い、知識や経験を共有し、森林水文・水資源に関する長期的な国際共同研究を発展させるために、国際会議「変動する環境下における森林と水」を2006年から3年毎に開催している(第1回会議:中国・北京市、第2回会議:アメリカ合衆国・ノースカロライナ州・ローリー市)。

第3回国際会議では、6セッション(A.水質および炭素隔離、B.生態水文過程、C.半乾燥-乾燥地における森林と水、D.森林と大気間の水・CO2の交換、E.森林流域における水土保全、F.持続可能な森林水資源のための革新的な技術とシステム)を設けて、情報交換・討論および学術交流を行った。初日(9月18日)は、6セッションに関わる世界で活躍する研究者6名(米国・W. Brutsaert博士、米国・J. Vose博士、韓国・J. Kim博士、スウェーデン・K. Bishop博士、中国・Y. Wang博士、日本・恩田裕一博士(CREST研究代表者))を講師とする公開基調講演6課題を開催した。2日目(9月19日)はA~Dの4セッションに関わる口頭発表31件、ポスター発表34件が行われると共に、昼食後に気候・気象学に関する公開基調講演2課題(米国・H. Diaz博士、米国・T. Giambelluca博士)を開催した。2日目の会議終了後には、C、Fセッションおよび若手有志がさらなる議論と交流を求め、3つの交流会が開催された。3日目(9月20日)にはE、Fの2セッションに関わる口頭発表23件、ポスター発表38件が行われた。CREST研究課題と直接関連のあるFセッションには、関連研究の国際的な権威である2名の研究者(米国・H. Barnard博士、米国・J. Stednick博士)を招待し、CREST研究者および世界の関連研究者が集い、白熱した議論が交わされた。昼食後には流域生態水文に関する公開基調講演2課題(オーストラリア・L. Zhang博士、日本・中村太士博士)を開催した。最後に閉会セッションを開催し、6セッションの座長が各セッションの議論を紹介すると共に、今後の展望に関して議論され、第4回はカナダ・ブリティシュコロンビアで開催されることが決められ、さらなる情報交換と学術交流を行う事が決められた。

第3回国際会議翌日(9月21日)には、CREST研究サイト・福岡県飯塚試験流域の見学旅行を実施し、主要な観測ポイント3か所(流出、遮断蒸発、蒸散)において研究を実施している学生がポスターを使用して野外発表を行い、野外において参加者全員で熱心に質疑応答・情報交換・討論を行った。参加者は、国内外を問わず、スギ・ヒノキという日本の主要な針葉樹人工林で50%の強度間伐を行った直後の現場とそこで行われている総合的な生態水文観測を見学できたことに感銘を受け、机上の会議だけでは体験できない見学旅行を今後も継続することが決められた。 会議終了後、中核的な参加者が会議で発表された研究課題の学術誌への特集を企画するとともに、第4回国際会議に向けて実行準備委員会を立ち上げ、森林水文・水資源に関するより緊密な国際連携を図る予定である。

現地見学
現地見学