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先導的物質変換領域シンポジウム 「次世代の触媒科学研究への挑戦〜CO2を活用したものづくり〜」開催報告
2012年5月21日(月)東京国際フォーラム ホールB5


基調講演:根岸英一先生

JSTは、5月21日(月)、東京国際フォーラムにて、先導的物質変換領域シンポジウム「次世代の触媒科学研究への挑戦〜CO2を活用したものづくり〜」を開催し、300名を超える参加を迎え、成功裏に幕を閉じました。

本シンポジウムは、今年の4月に戦略的創造研究推進事業において新規研究領域「低エネルギー、低環境負荷で持続可能なものづくりのための先導的な物質変換技術の創出」(研究総括:國武豊喜 研究総括)が発足したことを受け、本研究領域が目指すところを多くの方々に知っていただくとともに、次世代の新しい触媒科学研究への期待と課題、将来展望などについて議論する目的で開催されました。シンポジウムでは、画期的なカップリング反応の発見により産業界に大きな変革をもたらし、2010年にノーベル化学賞を受賞された根岸英一先生(パデュー大学 特別教授)による基調講演と、研究界・産業界の有識者を交えたパネルディスカッションが行われました。

まず、シンポジウムの前半には、先導的物質変換領域(ACT-C)の研究総括補佐でもある根岸英一先生より、「21世紀の課題解決に向けた次世代の触媒化学研究 〜CO2とH2Oを活用したサステイナブルなものづくりを目指して〜」と題して講演いただきました。根岸先生は、今日身近になった化学繊維(ナイロンやポリエステル)などの物質が触媒化学の力によって作られてきたことを例に挙げながら、触媒化学の重要性をお話くださいました。また、クロスカップリング反応を考案された時のエピソードを交えながら、触媒化学の面白さと重要性についてお話いただきました。特に世界が直面している「CO2をどうするか」という問題については、CO2を還元することで有用物質に変換していくことが重要であり、それにはGreen Chemistryの観点から、YES(ES)の発想(Y=High Yields, E=Efficiently, Economically, S=Selectivity, Safely)をもって不斉炭素−炭素結合等を直截的に生成する触媒的な物質変換の技術が求められていくだろうと述べられました。さらに、触媒反応を用いることにより優れた機能を持つπ電子系分子を合成することが熱力学的な問題の解決へとつながる可能性を秘めているなど、この先において低エネルギー、低環境負荷で持続的なものづくりを意識することの重要性を強調されていました。

シンポジウムの後半のパネルディスカッションでは、科学コミュニケーションで活躍されている美馬のゆり先生(公立はこだて未来大学教授)をモデレーターに、國武豊喜先生(公財北九州産業 学術推進機構 理事長/ACT-C研究総括)、堂免一成先生(東京大学教授)、永原 肇 氏(旭化成ケミカルズ株式会社 取締役兼常務執行役員)、そして根岸英一先生をパネリストに迎えて、「触媒科学が切り拓く未来」をテーマに意見を交わしました。最初に各パネリストによるショートプレゼンが行われ、國武先生はACT-C研究総括として、堂免先生は大学の研究者として、永原氏は産業界からの視点で、触媒科学研究の動向や今後の可能性についてお話くださいました。続いて、美馬先生から、日本科学未来館の常設展示の「2050年の未来予創図」が示され、これをもとに、50年後の暮らしを支える科学技術に触媒科学の成果はどのように貢献していくのか、議論を進めていきました。特に、食糧問題に取り組む上で必要な水やバイオマスを得ること、化学原料としてのメタノールをCO2から製造すること、などに触媒開発が必要であるとの意見が出されました。また、今回発足したACT-Cの特長や目指す方向性について、國武先生と根岸先生にお話しいただき、その中で、企業との関わりの重要性、国際的競争力維持のための若手研究者育成の重要性も述べられました。最後に、登壇者それぞれの立場から、ACT-Cで実現したいこと、期待することについて参加者へのメッセージとしてお話いただきました。

今回のシンポジウムには、研究者・企業関係者から一般の方まで多数の参加があり、触媒科学研究への関心と期待の高さが伺えました。


有識者を交えたパネルディスカッション


シンポジウムの様子