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JSTさきがけ研究領域合同国際シンポジウム「持続する社会を先導する光科学:環境・エネルギー・機能材料」開催報告
2012年3月26日〜27日 慶応義塾大学日吉キャンパス第6校舎623教室

戦略的創造研究推進事業 さきがけ http://www.jst.go.jp/kisoken/presto/index.html


国際シンポジウム会場では熱心な討論が交わされた。

平成20〜22年度発足したさきがけ4領域、①光の利用と物質材料・生命機能(研究代表者:増原 宏 台湾国立交通大学応用化学系教授)、②太陽光と光電変換機能(研究総括:早瀬修二 九州工業大学大学院生命体工学研究科教授)、③光エネルギーと物質変換(研究総括:井上晴夫 首都大東京戦略研究センター教授)、④藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出(研究代表者:松永 是 東京農工大学学長)による標記合同国際シンポジウムは、去る3月26日〜27日、慶応義塾大学日吉キャンパスで開催された日本化学会第92春季年会の会期を利用して日本化学会と共同で開催された。

領域①では、最先端レーザー等の新しい光を用いた物質材料科学や生命科学など先端科学のイノベーションへの展開を、領域②および③では、異分野融合による自然光エネルギー変換材料および利用基盤技術の創出を、領域④では、二酸化炭素の効率的資源化の実現のため植物の光合成機能やバイオマスの利活用技術などの基盤技術の創出、をそれぞれ戦略目標としており、「光の利用とエネルギー、物質変換」を共通項として、それぞれの研究課題に取り組んでいる。

本国際シンポジウムは、①北澤宏一 科学技術振興機構顧問の特別メッセージ、②藤嶋 昭 東京理科大学学長の基調講演、③2010年ノーベル化学賞を受賞された根岸英一 米国パデュー大学特別教授による特別メッセージ、④さきがけ4領域における世界最先端研究者による特別講演、⑤研究総括による4領域の活動紹介、⑥4領域さきがけ研究者による研究の現状と将来展望の口頭・ポスター研究発表・討論、によって構成し、これにより当該分野の研究成果が結実する効率的な道筋を探るとともに、4領域の研究の現状と研究課題の重要性および研究領域への参画を化学関連若手研究者に広く情報発信し、化学関連研究者への科学的刺激と更なる研究推進に資することを目的とした。


講演される根岸英一 米国パデュー大学特別教授。会場は多くの参加者で溢れた。

北澤顧問は、さきがけ研究者にはゲームチェンジングな研究の必要性を特に強調された。藤嶋学長の基調講演では、若手研究者に必要な研究センスについて、酸化チタン光触媒の発見と光触媒研究の最近の動向を例に、時代を変えた世界的著名研究者を生んだ研究風土等の重要性が紹介された。また根岸教授は「Tandem ZACA - Pd-Catalyzed Cross-Coupling as Widely Applicable and Selective Routes to Chiral Organic Compounds」と題し、有機合成にはYield, Efficiency, Selectivityの3つが重要であり、レゴ同様エレクトロポジティブとエレクトロネガティブなものが繋がれば強力になることが考えられ、あらゆる金属元素がクロスカップリング等の触媒としての可能性を研究していることなど有機合成反応に革新をもたらしたパラジウム触媒クロスカップリング研究を例に、極めて興味深い講演がなされた。

海外からの招待講演者は、Shimon Weiss 教授 (Univ. of California, Los Angeles, USA)、Yi-Bing Cheng 教授 (Monash Univ., Australia)、Devens Gust 教授 (Arizona State Univ., USA)、Chris Bowler 博士 (Ecole Normale Superieure, France) の4名にご講演をいただいた。

Weiss 教授は教授自身が開発した計測スピードと分解能のトレードオフを解決する手法などが紹介された。Cheng 教授は、予備焼結したメソポーラスTiO2ナノ粒子を用い、冷間等方圧加圧法(CIP)を適用することにより、良好な光電変換特性を持つフレキシブルな色素増感太陽電池作製の研究結果について紹介された。Gust 教授は生物の光合成エネルギーと電子伝達プロセスを模倣する有機分子の合成を目指した人工光合成研究について紹介された。Bowler 博士は世界での尿素循環と生物分布など光合成生物の珪藻の進化と尿素サイクルの代謝の意義に関するNature(2011)に掲載された内容について紹介された。

また、各領域から研究総括とさきがけ研究者3名、合計16名により20分の領域紹介、および口頭による研究発表が行われ活発な質疑応答があった。本国際シンポジウムは一般公開とし、さきがけ研究者を含め参加者は530名に達し会場は熱気に溢れた。最終日の3月27日15時30分から約2時間にわたり日吉記念館において、さきがけ研究者90名によるポスター発表が行われ熱心な議論が交わされた。ポスターセッションでの議論と情報交換は、領域内の他分野の研究者や他領域との研究者との今後の実質的な連携に結実させることが期待される。

今回の国際シンポジウムでは、各領域が戦略目標に向けて活発な研究展開を行っており、先端的研究の視点からは大変期待できるが、地球的課題である「資源・エネルギー、環境問題」の解決実現までの道のりがまだまだ遠いことが認識された。しかし一方で、海外の招待講演者からは、さきがけ研究者の研究発表に対し大変興味深い研究であり、今後の成果が大いに期待されるとの感想を頂き、課題解決に向けそれぞれの研究が大きな可能性を秘めていることが示された。さらに、本シンポジウムの開催によって、JSTがこの挑戦的な研究課題に取り組み、世界的に見ても先駆的な成果を発信していることを海外の招聘研究者に強くアピールすることができた。今後もこのような国際シンポジウムを開催することで、4領域の研究における最先端の情報が集約され、独創的かつ挑戦的な発想が創発的に生み出される場となることが期待される。