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第1回SATREPS写真展総来場者数250名超 & 中川文部科学大臣が視察されました
-2011年10月03日(月)~14日(金)世界銀行情報センター-


会場には50枚以上の写真パネルが展示されました

JST-JICAプログラム「SATREPS(サトレップス)」では、環境・エネルギー、生物資源、防災、感染症などの、一国や一地域だけで解決することが困難で、国際社会が共同で取り組むことが求められている地球規模の課題の解決のために、日本と開発途上国の研究者が共同研究を行います。

“地球のために、未来のために”、従来のODAにわが国の優れた科学技術を組み合わせることで何ができるのでしょうか。

JSTは、写真というメディアを通して、これまでSATREPSを知らなかった人、科学技術にあまり関心が無かったような人などにも、プログラムについて共感してもらい、より深く知ってもらうきっかけとするために、世界銀行情報センターと共催で、写真パネル展&コーヒーアワー(トークセッション)を開催しました。

今回は、「地球のために、未来のために~ツバル、南アフリカ、ブータンの空・海・大地の変動に対峙して~」と題して、SATREPSの世界33カ国60プロジェクト注1)の内、気候変動への取組として、特に、地球温暖化の影響などにより沈みゆく島と言われてきた南太平洋の島国「ツバル」、異常気象の影響により被害を受けているアフリカ最南端の国「南アフリカ」、氷河湖の決壊により洪水被害が生じているヒマラヤ地域の「ブータン」を取り上げました。


「有孔虫でできたFuakea島(フアゲア島)」
ツバルのフナフチ環礁にはいくつもの小島が連なっている。そのうちの一つ、Fuakea島(フアゲア島)は有孔虫の殻が堆積してできている。殻はオレンジ色を帯びているため、遠景では島がオレンジ色に見える。
SATREPS平成20年度採択
「海面上昇に対するツバル国の生態工学的維持」
(撮影:細野 隆史氏)
Facebookのツバルヴァーチャル写真展にリンク


「秀峰チュムハリ・カン」
ポ・チュ(川)とマンデ・チュ(川)の源流にそびえる秀峰「チュムハリ・カン」(6613m)の南面。マンデ・チュの源頭(ザナム地域)に分布する氷河湖を調査中、雲間に荘厳な姿を現したところ。
SATREPS平成20年度採択
「ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究」
(撮影:澤柿 教伸氏)
Facebookのブータンヴァーチャル写真展にリンク


「夕暮れのサファリパーク」
南アフリカ共和国には各地にサファリパーク(自然動物公園)が点在している。広大な敷地に動物たちが野生に近い形で暮らしており飼われているという雰囲気はない。公園の管理者であるレンジャーがジープを運転して園内を案内してくれる。目当ての動物に会えるかどうかは運次第。この夕暮れに撮った写真にはクーズー(KUDU: 鹿の一種)が写っている。
SATREPS平成21年度採択
「気候変動予測とアフリカ南部における応用」
(JAMSTEC提供)
Facebookの南アフリカヴァーチャル写真展にリンク


トークセッションでは、定員30名をはるかにオーバーで、会場はギュウギュウに


ヒマラヤ地方の3D模型を前にブータンプロジェクトについて説明を受ける大臣

3テーマを4日間に分けて開催したコーヒーアワー(トークセッション)は、サイエンスカフェ形式で、各プロジェクトの研究者に、プロジェクトの目指すところ、プロジェクトに込めた思いを語ってもらい、クイズも取り入れながら参加者とインターアクティブに行われました。(「ツバル」では星の砂が配られ、「南アフリカ」ではワインとルイボスティーを味わい、「ブータン」ではマツタケ(ブータン名産)がクイズの景品になりました!)注2)

2週間にわたって開催された写真展の延べ来場者数は、250名超(内、写真展来場者数:120名超、トークセッション参加者数:130名超)となりました。

最終日の10月14日には、中川文部科学大臣が視察され、中村道治 JST理事長、薬師寺泰蔵 SATREPS運営統括(PD)、谷口和繁 世界銀行駐日特別代表による挨拶の後、薬師寺PDによるSATREPS概要説明、「ツバル」、「南アフリカ」、「ブータン」の3プロジェクト研究者による研究概要の説明、谷口代表による世界銀行についての説明が行われました。

「ツバル」については、茅根創教授(東京大学)が、地球温暖化の影響による海面上昇というグローバルな問題と、生活排水等のローカルな問題に直面しているツバルで、世界で初めての試みである有孔虫(いわゆる「星の砂」が生きているときの呼び名)を飼育・増殖し、有孔虫の死骸により、ツバルの陸地をつくるという生態工学的技術開発の現状と成果を紹介しました。中川大臣から研究開発技術の汎用性などについて質問があると、茅根教授は、世界にある環礁地域や、日本の沖の鳥島にも適用可能である旨、説明されました。

「南アフリカ」については、東塚知己助教(東京大学)が、海洋研究を通した気候変動の予測を減災及び農業等に役立てようとする取り組みを説明しました。南アフリカ側共同研究者のWillem Landman博士(南アフリカCouncil for Scientific and Industrial Research)から、本プロジェクトにより、大気海洋結合モデルによる季節予報をアフリカ大陸で初めて行えるようになり、科学技術水準の高い日本との共同研究は、南アフリカにとっても非常に重要であるとして、SATREPSへの謝意が示されました。

氷河湖決壊に伴う洪水の危険性評価とハザードマップ作成に取り組む「ブータン」については、高いとされている国民総幸福量(Gross National Happiness, GNH)について大臣が触れると、佐藤剛講師(帝京平成大学)から、3月11日の東日本大震災時には、ブータン国王が王宮の仏殿に邦人を招き、バターランプセレモニー(チベット仏教では寺院や仏間でろうそくの代わりに灯します)を開催したというエピソードが紹介されました。

SATREPSとの関わりを尋ねられた中川大臣によると、審査時に立ち会ったところ優れたプログラムであると感じていたとのこと。写真展全体についての感想を聞かれると、中川大臣は、「科学技術予算とODA予算を上手く融合させて、それぞれの地域で現実的に役に立つ研究を共同プロジェクトでできることは素晴らしいこと。」「アフリカ大使の園遊会では皆さんこれはありがたい、と言ってくださる。それだけ、現実的に役に立つプロジェクトができている。」「アフリカや南アメリカなどは、日本にとってODAとして取り組むのはこれから。そのような地域を見てSATREPSも広げていきたい。」と答えられました。