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東京工業大学・細野秀雄教授の成果「透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)の発見」に世界の産業界が注目

透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)
東京工業大学 細野秀雄教授

現代社会に、テレビやパソコン、携帯電話からの情報は不可欠なものとなっています。これらの情報を送り出すフラットパネルディスプレイには薄膜トランジスタ(TFT)が内蔵され、これが電気的にオンオフを繰り返すことが動作の源になっています。

これまでのTFTでは、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)という材料が使われています。しかしながら、今後のフラットパネルディスプレイの高度化(高精細・3次元・フレキシブル)にはa-Si:Hを用いることが適さないことが以前から指摘されており、a-Si:Hに代わる新たな半導体材料の創出が待ち望まれていました。

東京工業大学の細野秀雄教授は、JSTのERATO(1999年10月から2004年9月)およびERATO-SORST(2004年10月から2010年3月)において研究プロジェクトを率いてこられました。約10年におよぶプロジェクトの成果には「新しい高温超伝導体の発見」や「電気を通すセメント」などがありますが、それ以外にも「透明アモルファス酸化物半導体(TAOS)の発見」があり、発見の2004年当初からa-Si:Hに代わる可能性があるとして、世界のディスプレイメーカーが競って実用化へ向けた研究を加速させていました。

細野教授による発見は、ここ数年の間に、実用化へ向けていよいよ現実味を帯び始めています。韓国や台湾のディスプレイメーカーが製作デモンストレーションする液晶ディスプレイ(TAOSをTFTに使用)は年々大型化してきており、中でも昨年、サムスン電子(株)は70インチの液晶ディスプレイをデモンストレーションしてみせました(高解像度および3次元化も可能)。一方の国内では、シャープ(株)が今年の4月に、中小型の液晶パネルにTAOSを用いたTFTを搭載し、年内の実用化を目指すという発表をしました。

細野教授には、TAOS発見の功績が認められ、Society for Information Display(SID)より「Jan Rajchman Prize」という賞が贈られることが決定し、5月15日からアメリカ・ロサンゼルスで開催される「SID Display Week 2011」で授賞式が行われます。これまでの受賞者には、a-Si:H TFTの発明者のLeComber教授(1994)や有機ELの発明者Tang博士(2001)らがいます。細野教授は受賞に際し、「新たな地平を切り拓くのは、革新的な材料である」とコメントされています。JSTの戦略的創造研究推進事業(ERATO, CREST, さきがけ等)を中心とした課題解決型基礎研究でも、今後いっそう、既存の枠にとらわれない新たな可能性に資する物質・材料研究の支援を続けていく所存です。