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第5回 神経局所回路国際会議JSTセッション “Microcircuitry of Cortex” 開催報告
−2010年06月29日(火)〜30日(水) 日本科学未来館−

第5回 神経局所回路国際会議JSTセッション “Microcircuitry of Cortex” 開催報告_1 
第5回 神経局所回路国際会議JSTセッション “Microcircuitry of Cortex” 開催報告_2 

戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「脳神経回路の形成・動作原理の解明と制御技術の創出」川口チームは、「The 5th International Neural Microcircuitry Conference, Tokyo JST session, "Microcircuitry of Cortex"」を2010年6月29日 (火)〜30日(水)にかけて日本科学未来館にて開催した。

大脳皮質に存在する局所神経回路は、神経細胞の種類も多く、他の領域からの神経線維の出入力も複雑で、未だにその構築が理解されていない。本CREST研究領域は、まさにこの課題を主題としている。この局所神経回路の解明に近づく最良の戦略の一つとして、この研究に携わる各分野の研究者達が、より緊密な協力関係の元で、解明のためのアプローチを行う事が考えられる。その為にも、各分野の最先端の情報を共有する事が、必要不可欠であると考える。そのような目的の下、今夏、東京のお台場の日本科学未来館を会場に、我々CREST研究参加者に加えて、日本を含む世界各地の神経科学研究者16名が集い、大脳皮質、海馬、線条体の神経回路に関する最新の研究成果を2日間にわたり発表し、議論を重ねた。参加者の総数は55名で、うち13名の外国人(米国、ドイツ、オーストリア、オーストラリア、フランス、中国の6カ国)と42名の日本人研究者であった。

初日の午前中のセッションで発表したNelson Spruston、Peter Jonas、Greg Stuartは、いずれも、皮質神経の中の抑制性神経細胞に関する解析をテーマにした発表であった。いずれも、非常に面白く新しい重要な概念であった。午後からのセッションでは、藤山文乃による線条体の神経細胞の形態特性、杉山(矢崎)陽子による視覚野の経験に基づく抑制性神経回路の発達という日本人の女性研究者の発表が続いた。さらに米国の女性研究者Gina Turrigianoにより、単眼遮蔽時の5層の錐体細胞の興奮性が落ちるという話が紹介された。休みを挟み、磯村宣和、村山正宣らにより、in vivoにおける神経活動が紹介された。翌朝、塗谷睦夫により神経の膜電位のimaging、Bartlett Melにより生理実験と理論解析の2つの観点から樹状突起上での信号の加算処理に関する新しい考え方の提案と続いた。Mazahir Hasanは、新しい遺伝子操作動物の作製とその可能性に関して、分かりやすく解説してくれた。Sacha Nelsonは、Rett 症候群の原因遺伝子であるMecp2欠損動物の大脳皮質は、シナプス形成数がかなり少なく興奮性が落ちる事を紹介した。午後のセッションでは、Yousheng Shuは、マルチノッチ細胞を介した軸索演算に関する解析を発表した。松崎政紀が、2光子顕微鏡を使ったGABAのアンケージング法による錐体細胞への抑制性入力を機能的な解析を報告したが、新しい技法として注目を浴びる事が予想された。Allan Gulledgeは、モデル細胞によるシミュレーション解析により、棘突起の存在意義に関する興味深い発表をした。最終発表者である窪田芳之は、非錐体細胞の樹状突起の形や大きさに関する法則を3つ見いだした事を報告した。いずれも未発表データを躊躇なく報告し、各発表に対して数多くのするどい質問があり、とても興味深い会議となった。参加者達からの反響はとても良く、質の高い国際研究集会となった。

第5回 神経局所回路国際会議JSTセッション “Microcircuitry of Cortex” 開催報告_3

余談ではあるが、2日目のランチタイムに、ホンダロボットのASIMOのショーを、日本未来科学館で見る機会を設けたが、参加者達は、興味深い最先端ロボットASIMOの人間そのものの動きにしばし目を奪われ、会議のつかの間のリフレッシュとなった。