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さきがけ「光の創成・操作と展開」研究領域 さきがけフォーラム
−2010年03月18日(木)〜19日(金) 東海大学−

-さきがけ「光の創成・操作と展開」研究領域 さきがけフォーラム-
「光科学の未来を拓く」 (Frontier and New Prospects in Optical Science)
(「2010年春季 第57回応用物理学関係連合講演会 シンポジウム」特別企画)

さきがけ「光の創成・操作と展開」研究領域では、第2期生6名の研究終了にともなう成果報告会を、文化功労者の霜田光一博士ならびに第2期生と親交が深い新進気鋭の海外研究者5名に加わっていただき、2010年度春季応用物理学会講演会のシンポジウムの1つとして開催しました。レーザーの黎明期からご活躍され日本の光科学を牽引してこられた霜田光一博士に基調講演をいただくと共に、第2期生と海外研究者の発表ならびに第1期生、第3期生のポスター講演を行い、光科学の本質に基づき、将来もたらされると期待される新パラダイムを見据える討論を行いました。

さきがけ研究成果を国際レベルで世に問うと共に、今後の技術的展望が熱く議論されました。研究の内容が高く評価されると共に、講演の締めくくりとして研究者育成の為のさきがけ研究の仕組みが紹介され海外研究者からの賛辞が聞かれました。霜田博士から若手研究者への励ましと共に、参加者の皆さんから光科学の将来についての貴重な意見と展望を頂く事ができました。これらの意見、提言、そして、この経験は、若きさきがけ研究者にとって貴重な財産になるものと思われます。

今回の講演は大きく、(1)量子光学・原子光学、(2)プラズモニクス・ナノフォトニクス、(3)超高速 赤外・テラヘルツ科学、(4)光医学・光生物学の4つの分野に分けられます。

(1)では、「光量子コンピュータ 世界初の実現へ確かな道」と題して4件の発表を行いました。量子力学とよばれる物理学の基本原理を活用すると、既存コンピュータを遥かに凌駕する「量子コンピュータ」を作ることができます。量子コンピュータでは、光の基本粒子である「光子」を使って情報の基本単位である「ビット」を実現しますが、光子どうしは相互作用しない(互いに素通りしてしまう)のが悩みの種でした。本シンポジウムでは、光子どうしを相互作用させ、「光量子ゲート」を構成するための新理論と、その実現に直結する実験成果が発表されました。現実的な物理系によって光量子ゲートを実現するための、世界で初めての研究成果です。これらの要素技術は国内で完成しつつあり、世界初の量子コンピュータが、日本で誕生する日も遠くないことを実感させました。

(2)では、「金属ナノ構造による新奇光機能の発現」と題して2件の発表を行いました。プラズモニック・メタマテリアルと呼ばれる金属ナノ構造からなる新しい人工光機能材料と、それを加工するために新たに開発した、レーザー加工技術、ならびに、金ナノロッドを分散させた材料を用いて5次元空間中に記録する超大容量光メモリが講演されました。プラズモニクス・ナノフォトニクスは、ナノスケールの微細構造と光との相互作用を積極的に利用した、新しい光学技術分野です。これらの技術が切り開く新しい光学技術分野が熱くかたられました。

(3)では、「水分子間エネルギー移動の可視化」と題して2件の発表を行いました。本セッションでは、1パルス内にたった数回の電場振動しか持たない「超短パルス赤外光」の発生や、キャリア・エンベロープ位相の安定化技術など、この分野での革新的技術の開発について発表されました。これらの超短パルスを利用して、水分子中でのエネルギー移動の様子を、100 フェムト秒(1秒の10兆分の1)という短い時間スケールで「見る」ことに成功するなど、生命現象における水の役割の全容が解き明かされつつあります。

(4)では、「世界初 :光による幹細胞への“命令”」と題して3件の発表を行いました。 再生医療は、本人もしくは他人の細胞・組織を培養し、障害のある臓器を代替する細胞を用いて、失われた組織や臓器を修復・再生する医療です。骨髄から採取した幹細胞が光を照射した細胞だけ骨を形成する細胞になり、光技術を用いて幹細胞が安全に目的の細胞になることを世界で初めて確認したことを発表しました。幹細胞を用いた研究だけでなく、アレルギーの原因となる細胞やインスリンを産生する細胞といった幅広い細胞に光技術を適用し、細胞が有する機能を光によってコントロールしようという新しい研究分野を切り開く討論が熱く行われました。

各講演では応用物理学会一般参加者を含めての活発な意見交換が行われると共に、ポスターセッションも大盛況で、終了予定時刻を過ぎてもポスターの前で熱い討論が続きました。

昨年に引き続き、さきがけの公開成果報告会を学協会講演会の場で行わせて頂きましたが、参加者が380名を数え多くのセッションで立ち見が出ました。その熱気は講演者・会場を一体化し、ジャズで言う“Call and Response”を巻き起こしました。心よりお礼申し上げます。

さきがけ「光の創成・操作と展開」研究領域 さきがけフォーラム