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さきがけ「光の創成・操作と展開」研究領域 さきがけフォーラム− 「光科学の未来を拓く」 (Frontier and New Prospects in Optical Science)開催報告
(「2009年春季 第56回応用物理学関係連合講演会 シンポジウム」特別企画)
−2009年3月31日(火)〜 4月1日(水) 筑波大学−

さきがけ「光の創成・操作と展開」研究領域では、第1期生10名の研究終了にともなう成果報告会を、ノーベル物理学賞受賞者John L. Hall 博士ら世界最高水準の学者4名に加わっていただき、2009年度春季応用物理学会講演会のシンポジウムの1つとして開催しました。

さきがけ研究成果を国際レベルで世に問うと共に、今後の技術的展望が熱く議論されました。研究の内容が高く評価されると共に、講演の締めくくりとしてさきがけ研究者がパネラーを務めての総合討論が行われましたが、Hall博士、Corkum博士から若手研究者への励ましと共に光科学の将来についての貴重な意見と展望を頂く事ができました。これらの意見、提言、そして、この経験は、若きさきがけ研究者にとって貴重な財産になるものと思われます。

さきがけ「光の創成・操作と展開」研究領域 さきがけフォーラム−「光科学の未来を拓く」(Frontier and New Prospects in Optical Science)

今回の講演内容は大きく、(1)光周波数コムと光原子時計、(2)光シンセシス、(3)アト秒-オングストローム科学、(4)コヒーレント光制御の4つの分野に分けられます。
(1)では、レーザー周波数安定化の生みの親である米国のJohn Hall博士が、研究の歴史と今後の産業応用について展望されました。博士の極限的な周波数安定性を持つ光への追求が、光をものさしにした"1m"の再定義、17桁もの精度での"1秒"の決定、何万個もの周波数の光が整然と並ぶ"光周波数コム"に結びつき、それを用いたまったく新しい医療診断法の開発などへ波及した事が紹介されました。さきがけからは、これに呼応して熊倉研究者の「原子の波で回路を創る」など、2件が発表されました。
(2)では、英国のKishan Dholakia博士が、光をピンセットのように使って生体物質を操作する「光トラップ現象のバイオ研究への応用」を紹介されました。さきがけからは、尾松研究者が微小物質の多様な操作や加工を可能とする新たな光源を発表すると共に、桂川研究者からは、1本のレーザー光から50色ものレーザー光を作り出し、それらをあたかも鍵盤の1つ1つの音から和音を合成するシンセサイザーように、「光のシンセサイザー」として利用する新技術が発表されました。
(3)では、「アト秒科学の父」といわれるカナダのPaul Corkum博士が、分子(酸素、窒素など)の内部構造が見え、原子を周回する電子の運動すら止まって見える、時間・空間ともに極微の世界、「アト秒・オングストローム科学」の最新の研究を紹介されました。さきがけからは、石川研究者が、同分野の理論研究であるアト秒領域で生じる物理現象を正確に予測するための新しいコンピューターシミュレーション法や、より高強度のアト秒パルスを発生させるために必要な条件の理論予測を紹介するなど、2件が発表されました。
(4)では、ドイツのJure Demsar博士より、超伝導現象の解明のために超短パルス光を用いた時間分解測定が有効であることが紹介されました。さきがけからは、久保研究者が金属表面に光を照射したときにできる「光と電子の波」が、高速で表面を移動し干渉を起こす様子をとらえた世界初の動画像を紹介するなど、光物性の追及に絡む新研究とその応用展望の発表が4件行われました。 各講演では応用物理学会一般参加者を含めての活発な意見交換が行われると共に、さきがけ第2期生・3期生14人が発表を行ったポスターセッションも大盛況で、終了予定時刻を過ぎてもポスターの前で熱い討論が続きました。

さきがけの公開成果報告会を、学協会講演会の場で国際的環境の中で行うのは初めての試みでしたが、のべ320名もの方々に参加いただき、その熱気は講演者・会場を一体化し、ジャズで言う"Call and Response"を巻き起こしました。