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傷害防止のための日常生活コンピューティング国際シンポジウム(International Symposium on Everyday Life Computing for Injury Prevention)開催報告
− 2009年2月11日(水) 日本科学未来館 −

国際シンポジウムの様子_1

国際シンポジウムの様子_2 

日本に限らず、先進諸国では、1〜19歳の子どもの死亡原因の1位は「不慮の事故」です。傷害防止のための日常生活コンピューティング国際シンポジウム(International Symposium on Everyday Life Computing for Injury Prevention)では、国内外で関心が高まりつつある「事故による傷害の予防」の問題を取り上げ、傷害予防分野の世界の動向や、これを解決するための日常生活コンピューティング技術に関する最新の成果を報告しました。こうした傷害予防の国際会議の開催は、日本では初めてです。

事故予防が難しいのは、第一に、事故が複雑な現象である点にあります。学術的な観点からは、子どもの認知や行動の発達、その保護者の認知や行動、日常生活環境に存在している多様な製品などから構成される複雑なシステムの挙動の解明が必要であり、特定の分野の専門家だけでは解明が困難です。複雑なシステムの解明のための学際的(interdisciplinary)な研究体制が必要です。また、第二に、事故予防を社会で実現するためには、医療機関、研究機関、産業界、行政機関、立法機関などの様々な業種の連携が不可欠である点にあります。

JST CRESTの「先進的統合センシング技術」研究領域の「事故予防のための日常行動センシングおよび計算論の基盤技術」(Basic Technology Research on Sensing and Computational Theory of Everyday Life Behavior for Injury Prevention)では、2005年10月より、傷害予防のための基盤技術の開発を目的として、日常生活における行動のセンシング技術、大規模データの収集を用いたモデリング技術、シミュレーション技術を開発してきました。また、これらの開発技術を、実際に事故予防に適用する研究を推進しながら、コミュニティづくりの活動も推進していました。

本シンポジウムでは、傷害予防を推進しているWHOの動向、傷害予防で先進的な取り組みをしている国における研究動向、JST CRESTで推進している事故予防工学技術を紹介することを通じて、技術と社会ニーズの両側面から質の高い発表・討論の場を提供し、学際的な研究コミュニティ作りや、様々な業種間連携を加速させることを目的に開催しました。

シンポジウムでは、世界の傷害予防分野の動向に関して、WHO、米国ジョンズホプキンス大学、オーストラリアのモナッシュ大学、米国アラバマ大学から4名の海外講演者の招待講演がありました。国内からは、傷害予防の日本の取り組みや工学的な手法に関して3件の発表を行いました。大学や国立研究所、自治体、学校関係者、企業、キッズデザインを推進しているNPO法人、報道関係者など、非常に幅広い分野から106人の方にご参加頂きました。今回、日本での開催であり、研究者以外の参加者も多いことから、より一般の方にも理解して頂くための工夫として、同時通訳を行いました。

講演の部の後には、JST CRESTにおいて進められている傷害予防研究を推進している研究施設のオープンハウスがあり、開発された浴室内溺れ防止センサ、このシンポジウムの日に無償で公開された身体地図情報システム(http://www.cipec.jp/#/project/からダウンロード可能)などの実演も行われました。公開された身体地図情報システムを使うと、病院で収集された約4,000件の事故事例データベースにアクセスし、例えば、「お茶・コーヒー・味噌汁」では、左足のももや右胸、右腕の火傷が多いことが、色分けて表示され一目で分かるようになっています。国際会議の内容や公開されたソフトウェアは、新聞、TV、ラジオなどメディアで取り上げられました。

オープンハウスの様子_1  オープンハウスの様子_2  身体地図情報システム