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資料3:中間評価結果

リサーチコンプレックス名:
健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス(平成27年度採択)
中核機関:
国立研究開発法人 理化学研究所
提案自治体:
神戸市、兵庫県
提案機関:
塩野義製薬株式会社、シスメックス株式会社、日本電気株式会社、阪急阪神ホールディングス株式会社、株式会社三井住友銀行
オーガナイザ:
渡邉恭良(国立研究開発法人理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター・センター長)
総合評定:
「進捗に一部不足はあるが、より一層の計画の改善等の努力とその加速により十分なリサーチコンプレックスの構築が期待できる。」

1.拠点の概要

(1) 概要
先端医療技術の研究開発拠点である神戸医療産業都市を中核として「科学的データや理論に基づく“ヒト”の理解を深めて健康を科学し、個別健康の最大化を進める」ため、国内外の大学及びトップレベルの研究者等を集結させ、学際的なアプローチに基づく研究開発や、得られたビッグデータの活用を行うとともに、事業化サポートと人材育成を行い、持続的に発展し続ける拠点を構築する。
(2) 実施状況

 平成27年11月に本事業に採択された後、平成28年度内までに、中核機関である理化学研究所主導のもとで「健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス(以下、本リサーチコンプレックス)」の運営体制が構築され、研究開発、事業化に対する拠点整備がなされるとともに、人材育成を含めた事業が着手された。その実施状況を平成28年度評価(平成29年3月1日)にて確認し、本リサーチコンプレックスを運営するガバナンス・マネジメント体制を強化するとともに、参画機関との情報共有のもと本リサーチコンプレックスの目標、計画、評価指標を設定すべきことを指摘した。

 この指摘も踏まえ、平成29年度の取組として、本リサーチコンプレックスの最高意思決定機関である「協議会」の下にあって、事業方針、計画等を立案する「幹事会」の再編と参画企業との連携強化、理化学研究所内のマネジメント体制強化等の体制変更を行った。また、こうした体制構築・変更と並行しつつ、参画機関との情報共有による目標の再設定、計画および将来構想の策定を行った。

2.評価結果

1.の経緯を踏まえ、中間評価では体制の機能状況、計画・構想の内容および事業の推進状況と成果を評価した。

平成28年度評価における指摘を受けて本リサーチコンプレックスの推進体制を再構築したことにより、自治体が幹事会を主導し、提案企業等が事業推進に強く関与するようになったこと、エコシステムとして発展するための機能構築を進め、特に基幹事業と位置づけた「ヘルスデータHub事業」、「データ取得・解析/評価サービス事業」を構想し、活動に着手したことは評価できる。一方、本リサーチコンプレックスならではといえる成果が少なく、ヘルスデータの取り扱い等解決すべき課題も多い。残すところ2年あまりの支援期間で、リサーチコンプレックス発の成果を創出し、ビジョンの実現、エコシステムの構築に向けて取組を推進・加速することが求められる。

以上から、「進捗に一部不足はあるが、より一層の計画の改善等の努力とその加速により十分なリサーチコンプレックスの構築が期待できる。」と評価する。

3. 指摘事項について

(1) ガバナンス・マネジメント体制の強化について
 中核機関である理化学研究所のマネジメント体制を一新し、事業管理と事業推進の責任者を分け、リサーチコンプレックス戦略室を強化したこと、さらなる事業推進と事業終了後のリサーチコンプレックスの自立化を見据えて副プログラムディレクタを配置したことは評価する。また、前述の通り「幹事会」の運営体制を再編し、自治体、提案機関が積極的に関与する組織としたことも評価する。今後は、自治体のイニシアティブのもとで幹事会機能を充実させ、また、中核機関、提案機関、参画機関によるビジョンの共有を進め、更に結束して拠点を形成することが求められる。
(2) ビジョン、計画の策定(KGI,KPI)について

 中核機関、自治体、提案機関が協力して、「ヘルスケアのエコシステムを神戸に創る」という目標を定め、エコシステム構築に向けた機能を設定したこと、機能の実現に向けたKey Goal Indicator(KGI)、Key Performance Indicator(KPI)を策定し、その実現のためのタスクフォースを設置する等体制を整備したことは評価する。

 今後は、拠点内でKGI、KPI を共有し、進捗管理をしながら事業を推進するとともに、KGI、KPIを随時見直して神戸に根付くエコシステムの構築に向けて取り組むことが求められる。

(3) リサーチコンプレックス事業ツールの進捗状況について
  • (i) 2年度をかけてリサーチコンプレックスにおける研究開発・事業化・人材育成・設備共同利用の実施に必要なインフラ・環境を着実に整備したことは評価する。今後は構築した環境を活用し、継続的に事業成果を創出するよう、拠点を運営することが求められる。
  • (ii) 研究開発と事業化が融合したモデルプロジェクトの推進、マッチングイベントの実施等、ヘルスケアのエコシステム構築に向けた取組に着手したことは評価する。しかし、これまでのところ、本リサーチコンプレックスの活動に起源を持つ成果の少ないことが懸念される。今後は、産学官金連携等の具体的な取組を更に進め、本リサーチコンプレックス発といえる成果を継続的に創出するエコシステムを構築することが求められる。
  • (iii) 人材育成カリキュラムの作成と実施、各種セミナー・シンポジウムの開催等を神戸大学・兵庫県立大学・理化学研究所等・担当機関が積極的に推進していることは評価する。しかし、事業化と融合研究開発のツール間の連携がやや乏しく、参画機関の巻き込みの弱い点が懸念される。今後は、エコシステムの構築・発展を担い、国内外でも活躍できる人材の育成に向けて、担当機関、参画機関が協力し、事業化、融合研究開発とも連携した取組を推進することが求められる。
(4) 将来構想について
 ヘルスケア・エコシステムの中核となる基幹事業として、「ヘルスデータHub事業」、「データ取得・解析/評価サービス事業」を設定し、神戸市・兵庫県の有する資源を活用して医療産業都市に根付き、発展させる仕組みを構想した点は評価し、大いに期待する。ただし、ヘルスデータの取得・運営管理・利活用の対象範囲の設定や運用体制の構築、事業像の確立等について、現時点では未確定の部分も多いことが懸念される。今後は、これらについて更に具体的で詳細な検討を進め、あわせてデータベース設計やAIを組み入れたシステムの設計等実際の活動に着手することにより、エコシステム構築に向けた取組を加速することが求められる。