科学技術振興機構 さきがけ エピジェネティクスの制御と生命機能 エピジェネティクスの制御と生命機能さきがけ独立行政法人科学技術振興機構

戦略目標

「細胞リプログラミングに立脚した幹細胞作製・制御による革新的医療基盤技術の創出」

研究領域の概要

本研究領域は、エピジェネティクスの制御と生命機能の解明という視点をもった研究を対象とします。より詳しくは、エピジェネティクスの制御機構の解明、様々な生命現象とエピジェネティクスの関わり、エピジェネティクスの多様性や異常がかかわる疾患の解析を対象とします。それらの研究を通してエピジェネティクスの生命機能としての分子基盤を明らかにする事で、細胞リプログラミングに立脚した幹細胞作製・制御による革新的医療基盤技術の創出を目指します。

具体的な研究内容としては、1)動植物を問わずさまざまなモデル生物を用いてエピジェネティクスの制御機構をいろいろな角度から追求し、明らかにする、2)エピジェネティクスの個体差・多様性を探るとともに、エピジェネティクスの異常にもとづく疾患の解析を行なう、3)エピジェネティクスの解析や制御に資する技術の開発を行う、といった課題が考えられます。

平成23年度新規採択の方針

研究総括の募集・選考・研究領域運営にあたっての方針

エピジェネティクスの関わる生命現象は、発生、分化、老化の調節、染色体の構造の安定化、遺伝子量の補償など多岐にわたる。 iPS細胞に代表される細胞のリプログラミング、核移植によるクローン細胞の作成、がんの治療などにおいてエピジェネティクスの重要性が認識され、その人為的な制御も重要な課題として浮かび上がってきています。このように生命現象のさまざまな場面でのエピジェネティクの関与は、この領域の研究が広範囲、かつ、喫緊の課題であることを示しています。 

この研究領域では、エピジェネティクスの制御と生命機能の解明という視点で、自由な発想による、創意に満ちた基礎的、応用的研究を対象とします。従って先ずエピジェネティクスの制御機構の解明を基盤とした研究が望まれます。近年 DNAやクロマチンへの化学修飾を通して細胞や個体の形質を変化させる機構が分かってきました。現在 DNAと結合蛋白との相互作用の研究が精力的に進められていますが、その中で DNAメチル化、様々なヒストン修飾、小分子 RNAを初めとする機能性非コード RNAなどの諸因子群の解析を通して、そのクロストーク、ネットワーク化による調節機構の統合的理解が求められています。一方、エピジェネティックな現象は細胞から細胞へと受け継がれる反面、一卵性双生児を通した研究などから環境の変化に伴う個体差・多様性があることも観察されています。多様性の頻度、その意義なども明らかにされるべき課題です。他方、エピジェネティクスの異常による疾患の解明は疾患そのものの解明のみならず、エピジェネティクスのメカニズムの解明の観点からも大いに貢献します。がんを初め、統合失調症、生活習慣病などでもエピジェネティクスの関与が報告されており、早急に取り組むべき課題と思 います。エピジェネティクスの研究の発展にはブレークスルーをもたらす技術開発も合わせて必要です。例えば、微量サンプルを扱う技術開発などです。 この研究領域は今回の募集で最後になります。制御機構の基盤的研究はもちろんのこ と、戦略目標でもあるiPS 細胞に代表される細胞リプログラミングのエピジェネティクス 制御、疾患のエピジェネティクスなどの提案、さらに大挑戦でエピジェネティクス解析に ブレークスルーをもたらす技術開発など多いに歓迎します。合わせて平成22 年度選考の 際の総評も参照下さい。