医用画像処理装置


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 医用画像をより見やすく

 人体内の臓器などを外部から無侵襲で画像としてとらえる医用画像装置は、現代の医療において各種疾患の早期発見や部位の特定などにかかせないものとなっている。代表的な医用画像装置には、X線撮影装置、X線CT装置、MRI(核磁気共鳴映像)装置、超音波画像装置などがある。この中でも超音波画像による生体計測技術は、手軽で無侵襲、生体軟部組織の観察が容易、リアルタイムで観察できることなどから、臓器の画像診断用として普及しているが、多重反射が起こるなどさまざまな偽りの映像が混じり合うことなどから目的とする生体組織を正確に読影することは、難しいものとなっている。現在、画像による診断基準は定性的なものであり、診断医のもつ個別の主観的判断に負うところが大きく、読影上のノウハウを得るには長期の年月と豊富な経験が必要となっている。このため、画像から病巣のありそうな場所を検出して表示し、見落としが起こらないように注意を喚起したり、臓器についての定量的な情報の提供を可能とする医用画像処理装置により、その結果を診断医の判断の助けにし、診断の正確度の向上、再現性の改善を図りたいという要望があった。

(内容) 新たな数理学的手法による画像処理方法により医用画像をより見やすくする医用画像処理装置を実現

 本新技術による医用画像処理装置は、複数の未知信号が混在する画像から独立した信号部分を分離抽出する方法としてブラインド・セパレーシヨン法を適用し、次に得られた各画像において、診断領域を指定して改良型エネルギー緩和法を適用し確度の高いエッジを抽出する。さらに、輪郭線の形状パターン(複雑度、尖度などの特徴量)を統計的に数値化し、対象部位の病態の評価の指標となるデータを提供する。
 ブラインド・セパレーシヨン法とは、観測された混合信号を分離して、混ざり合う前の元の信号を推定する数理的手法で、元の信号や混合の割合などを事前に知っている必要はない。また、改良型エネルギー緩和法とは、画像の輝度データに対して、輝度の濃淡差の大きい場所の位置、その連続・不連続性、輝度変化の滑らかさなどを考慮したエネルギー関数を定義し、この最小値を求めることで正確なエッジとして抽出する方法で、最小点を探索するにあたっては、極小値に陥いることを避けるため大局的に関数の最小点を見いだす工夫をしている。
 この医用画像処理装置は、高精細画像取込部、演算処理部、表示部からなり、既存の医用画像装置に接続して利用される。

(効果) 超音波画像、MRI等のコンピュータによる医用画像診断の支援装置への利用が期待

本新技術には、次のような特徴がある。

1. 観測される混合信号から複数の未知信号を分離し、各々の信号源を復元する機能に優れる。
2. 画質の悪い画像のなかに潜在する数多くの部位の輪郭を見やすくし、診断の高信頼化が可能。
3. 病巣か否かなどの定量的・客観的判断の基礎データの提供が可能。

 従って、超音波画像、MRI等のコンピュータによる医用画像診断の支援装置やコンピュータによる脳波判定装置への利用が期待される。

(※)この発表についての問い合わせは、電話03(5214)8995 佐藤または古賀までご連絡下さい。

参考:本件に係る事前評価は、新技術審議会において行われ、評価結果などは別添の通りです。


This page updated on March 8, 1999

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