生ごみ高速減容化システム


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 卸売市場で大量に発生する水分含有率が高い生ごみの減容化技術が望まれている

 青果、水産物などの生鮮食料品は国内において年間約3,300万トン流通している。これらの生鮮食料品が生産者から消費者へ流通する過程において、全国各地に開設されている卸売市場は、生鮮食料品を公正な取引で流通させる集散拠点として重要な役割を担っている。国内で流通する青果、水産物の約80%は卸売市場を介しており、中でも大都市に開設されている中央卸売市場は全流通量の約50%を取り扱っている。
 中央卸売市場では、流通に適さなくなった野菜や果物、水産物の加工により不用となった魚あらなどの動植物性残渣(生ごみ)が毎日大量に発生し、その量は年間25万トン程度と推測されている。現在これらの生ごみは、自治体のごみ焼却施設に可燃ごみとして搬入され焼却処理されているが、大量に発生する生ごみは、水分の含有率が90%程度と極めて高いため、燃焼しにくく処理コストもかさむため、焼却処理によらない生ごみの減容化技術の確立が求められている。市場で発生する生ごみの減容化の方法として、発酵槽を用いた微生物による分解が検討されている。しかし、市場の生ごみは、水分含有量が高く、発酵の進行と水分蒸発のために必要な有機物の発酵による熱発生が不十分であり、また、過熟や腐敗により粘性が増した果実、魚あらなど単一種のごみが一時的に大量に発生する傾向があるため、安定的に運転を持続させることが困難であった。

(内容) 微生物処理を行うロータリーキルン型発酵装置で生ごみを分解し1/10程度に減容化

 本新技術は中央卸売市場等から大量に排出され、水分の含有率が高く、性状が日々変動する生ごみを微生物処理により分解し、短期間で減容化するシステムに関するものである。本システムは、ロータリーキルン型発酵装置内に空気供給機構を設け発酵中に空気を十分に供給して好気性発酵を促進させるとともに、熱風供給機構を設け投入された生ごみの性状に応じて発酵槽内の温度・水分を制御して発酵の進行を安定化させることにより生ごみの高速減容化を実現するものである。
 本新技術に係る研究の成果として、これまでに、研究者らは、年間に約14,000トンの生ごみを排出する中央卸売市場のごみの性状を分析するとともに、市場内に小型の発酵槽を用いた実験装置を設置し、生ごみの性状が変動しても微生物による生ごみの発酵・分解を維持できる装置構成を検討した。さらに、この装置を長期間運転し、生ごみの減容化実験を行った。これにより、生ごみの性状に応じた装置の運転方法・条件を明らかにするとともに、生ごみを定常的に1/10程度に減容化できること明らかにした。
 本新技術による生ごみ減容化システムは、(1)生ごみ破砕設備、(2)発酵設備、(3)排出物搬送・貯留設備、(4)脱臭設備などにより構成され、その詳細は以下の通りである。

(1)生ごみ破砕設備  市場内で分別回収された野菜、果物、魚あら、加工食品などの生ごみを貯留ホッパに投入し、これらの生ごみを破砕機により発酵処理に適するサイズに破砕する。なお、ここで発生する臭気、汚水は、回収されて、それぞれ脱臭設備、発酵設備に導かれて処理される。
(2)発酵設備  本設備ではロータリーキルン型の発酵装置を用い、破砕した生ごみを微生物による好気性発酵により減容化を行う。具体的には、破砕した生ごみを円筒状のキルン内に供給するとともに、水分調整のため、市場内で廃棄物として発生する木製のパレットの粉砕物および発酵処理により生成した排出物を生ごみの性状に応じて適量加えて、キルンを回転させ、発酵による減容化を行う。
 本新技術によるロータリーキルン型の発酵装置は、円筒状のキルンの内周部分に掻き上げ板を配置する構造をとっており、これにより、キルンを回転させて投入物の切り返しを繰り返す際に、被処理物が次第に摩砕され、空気との接触面積が増大し好気性発酵に適する形状となる。
また、本装置では、発酵中に発生するCO2濃度を計測して発酵の進行状況を把握し、発酵に最適量の空気を内容物中に供給することにより、好気性発酵を促進させている。
 また、市場の生ごみの中にカロリーが低い野菜が多く含まれていると、十分な発酵熱が得られず、発酵分解や円滑な水分除去が抑制されるため、発酵装置内に熱風を供給する機構を設けている。これにより、投入物の発酵温度、水分含量を適正値に保つことができ、安定した発酵を可能としている。
(3)排出物搬送・貯留設備  発酵工程での排出物から夾雑物を除去し、貯留するとともにその一部を発酵装置に返送・供給する。
(4)脱臭設備  本システムは卸売市場内に設置されることが想定されるため、システム系外に臭気を出さないことが必要とされる。このため、本設備により生ごみ破砕設備、発酵設備などで発生した臭気を蓄熱式脱臭装置により加熱・分解する。
 本設備では、臭気を含むガスを、予め加熱されたハニカム状のセラミックス蓄熱体内を通過させて加熱し、さらにバーナーで加熱して臭気成分を分解し、脱臭する。脱臭された高温のガスはセラミックス蓄熱体で熱交換・冷却された後、系外に排出される。また、回収された熱は臭気を含むガスの予熱に再利用される。
(効果) 中央卸売市場などに付設するごみ処理システムとしての展開が期待

本新技術には、次のような特徴がある。

1. 発酵の進行状況に応じた空気供給を行って発酵を促進することにより、水分の含有率が高い大量の生ごみを短期間で減容化できる。
2. 日々変動する生ごみの性状に応じた発酵温度の制御、水分調整を行うことにより、安定した発酵を維持できる。
3. 臭気や排水を系外に排出しないため、中央卸売市場へ付設し生ごみを現場処理できる。
4. 減容化された生成物は堆肥としても利用できる。

などの特徴を持つため、本新技術による生ごみ減容化システムは、生ごみが毎日大量に排出される中央卸売市場などに付設するごみ処理システムなどへの展開が期待される。

(※)この発表についての問い合わせは、電話03(5214)8994蔵並または長谷川までご連絡下さい。

参考:本件に係る事前評価は、新技術審議会において行われ、評価結果などは別添の通りです。


This page updated on March 8, 1999

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