金属超微粒子担持光触媒の製造技術


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 望まれる、可視光域でも利用できる光触媒

 地球規模で環境問題が問われている現在の社会状況との関連から、光触媒技術が産業界から大変注目されている。特に、酸化チタン(TiO2)を光触媒とする技術の研究開発及び実用化が、抗菌や防汚、脱臭等の広い用途でなされている。
 酸化チタンは光半導体としての特性を持ち、ギャップエネルギーに相等する紫外線を吸収して価電子帯の電子が励起され、それらが表面で外部の物質と反応を起こすことを光触媒のメカニズムとしている。酸化チタン内に励起された電子と正孔は、外部で反応を起こす前に再結合して消滅する場合があり、これが光触媒効率を制限していることから、白金等の金属電極を酸化チタン上に担持し、酸化チタン表面に正孔を、金属電極表面に電子をそれぞれ分離させる方法が提案されていた。しかし、担持金属の粒径がミクロンサイズに留まっており、量子サイズ効果を発現できる範囲に担持金属の粒径を小さくすることが要求されていた。
 一方、酸化チタンは、一般には高温型のルチル型と低温型のアナターゼ型の2種類が使用され、熱的に安定なルチル型が塗料等の工業材料用として多く使用されているが、光触媒効率はルチル型よりもアナターゼ型が高いことから、従来から光触媒にはアナターゼ型単体が用いられている。しかし、アナターゼ型酸化チタンの光触媒反応が利用できる光は、紫外光に限られており、エネルギーの有効利用の観点からすると、可視光をも利用できる光触媒が望まれている。

(内容) 有機金属錯体コロイド溶液をルチル型酸化チタン微粒子に噴霧、焼成し、ナノスケールの金属超微粒子を高密度に担持、光触媒効率の高い光触媒を製造

 本研究者は、まず白金ブチルメルカプタンやバルサム白金等、加熱分解により有機金属化合物から金属だけが単離できる有機金属錯体を用い、そのコロイド溶液を酸化チタン微粒子に塗着し、乾燥・焼成させることにより、ナノスケールにまで極小化した金属超微粒子を酸化チタン微粒子に高密度に担持できることを見出した。次に、ルチル型酸化チタンのギャップエネルギーを波長に換算すると407nmと可視光域であり、この特徴を使用する励起光源の観点からみて、分光強度やスペクトル強度分布からの計算より、ルチル型酸化チタンの光触媒効率が、アナターゼ型酸化チタンと比して、太陽光利用において1.5倍、白色蛍光灯利用において4倍と推定されることに着目した。そして、ルチル型酸化チタンに白金超微粒子を担持させ、捕虫器用蛍光灯及び白色蛍光灯照射下でのアセトアルデヒドの酸化分解において、アナターゼ型酸化チタン単体と比して高い光触媒効率が得られることを確認した。特に、白色蛍光灯下での触媒効率向上の高いことが示されている。
 本新技術は、酸化チタン微粒子に白金等の金属超微粒子を担持させた光触媒を製造するものである。本光触媒の製造工程は、以下のとおりである

(1)原料調製: バルサム白金等の有機金属錯体の疎水コロイドを、アセトン等の親水性溶媒に分散させて、有機金属錯体コロイド溶液を調製する。このとき、コロイド中の有機金属錯体の含有濃度と親水性溶媒の量を変えることにより、担持する金属超微粒子の粒径や担持密度を適正に調整する。
(2)噴霧: マイクロスケールの酸化チタン微粒子と有機金属コロイド溶液を相互に対向状に噴霧して、酸化チタン微粒子上にコロイド粒子を付着させる。
(3)乾燥・焼成: コロイド粒子が付着した酸化チタン微粒子を加熱、乾燥させて溶剤をとばした後、コロイド付着微粒子をさらに高温で加熱、焼成して有機物を分解、金属超微粒子を酸化チタン微粒子上に配列して光触媒粉体を生成する。
(効果) 室内空気の清浄や抗菌・防汚、大気汚染防止、水の浄化等、屋内外にわたり幅広い用途での利用が期待

本新技術には、次のような特徴がある。

1. 従来のアナターゼ型酸化チタン単体と比して、高い光触媒効率を有する。
2. ルチル型酸化チタンを使用できるため、可視光域でも励起光源とすることができる。
3. 担持する金属の種類の選択や、粒径や担持密度の調整ができ、用途に応じた光触媒機能設計が可能である。
4. 粉体として製造できるため、多様な二次製品への展開が容易である。

従って、

1. 環境ホルモンやタバコ煙等室内空気の清浄材料
2. 建材やタイルに担持させての抗菌・防汚材料
3. NOx分解等大気汚染防止用材料
4. 水中有害物質の分解等、水の浄化処理用材料

等、屋内外にわたり幅広い用途での利用が期待される。

(※)この発表についての問い合わせは、電話03(5214)8995 佐藤または小泉までご連絡下さい。

参考:本件に係る事前評価は、新技術審議会において行われ、評価結果などは別添の通りです。


This page updated on March 4, 1999

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