車載用磁気インピーダンスセンサ


本新技術の背景、内容、効果は次の通りである。

(背景) 望まれていた、検出感度の高い小型低消費電力の車載用磁気センサ

 自動車に搭載されている磁気センサは、部材の可動部分に取り付けた磁石による磁界信号の変化から、その部材の速度、変位、回転数等を計測するために用いられている。従来、磁界信号を検出するための手段としては、電磁誘導を利用したピックアップコイル型磁気センサや、多層薄膜の電気抵抗が外部磁界に依存して変化する磁気抵抗効果(MR効果)を利用したMRセンサが主に使用されている。
 しかしながら、自動車に搭載された磁気センサは、エンジンや動力系等から発する熱や振動、気象条件の変化等、車載特有の過酷な環境下で微弱磁界を検出しなければならず、検出感度は、静止安定状態での計測に比べ1/100と小さくなってしまう。このため、従来は、所定の信号源磁石とセンサとの間隔を1mm程度の微小な距離に保つように精密に制御し、位置決めのための補助的な機械機構を工夫して感度の不足を補う必要があった。この結果、センサの単価は低いものの、磁気センサシステム全体としては、複雑な機構や組立・調整が必要となるため、高価となり、また、システムの小型化、省電力化にも限界があった。このため過酷な車載環境での使用に適合する、小型、低消費電力で、信号源磁石と磁気センサの距離の検出許容範囲を大きくとれる高感度な磁気センサの開発が望まれていた。

(内容) 検出ヘッド用アモルファスワイヤと電子部品との接合技術を確立し、パルス通電用の電子回路に温度補償性を付与することで耐久性の高い磁気センサを実現

 本新技術は、鉄コバルト系アモルファスワイヤを検出部のヘッドに適用し、これにパルス電流通電等を行う電子回路で構成される車載用磁気インピーダンスセンサに関するものである。
 本研究者はパルス電流通電時の鉄コバルト系アモルファスワイヤのインピーダンスが、外部磁界の変化に鋭敏に応答する磁気インピーダンス(MI)効果を発見した。このMI効果は、アモルファスワイヤが、表層部に円周方向の磁化容易軸を有する磁区構造を持っており、パルス電流通電により表皮効果が生じることによるインピーダンス特性の大きな変化に起因して、外部磁界に対するワイヤ両端間電圧が、従来のMR素子の約100倍以上の変化を有する現象である。
 しかし、アモルファスワイヤはハンダぬれ性が悪いため、ヘッドとして構成したときに振動や熱に対して接合強度が弱く、また、MI効果に必須の高周波回路は一般に温度特性が不安定であるという問題があった。
 本新技術では、ワイヤヘッドを堅牢に固定化するためにNiめっきなどの表面改質を介した接合強度の改善や立体素子の微細加工技術を駆使し、耐振動性や耐冷熱サイクルを向上させるとともに信号処理を行う電子回路部に温度補償回路を付加することにより、温度変化に対する安定性を向上させている。こうした特徴から、機械振動や冷熱サイクルなどが付加される過酷な環境での使用が求められる車載用の高感度磁気センサとしての利用が期待される。本新技術による車載用MIセンサの概要は以下のとおりである。
(1)検出部
検出部は、センサヘッドであるアモルファスワイヤと、バイアスコイル、フィードバックコイル等でチップとして構成される。
(2)電子回路
電子回路は、マルチバイブレータパルス発振回路、定電流回路、ピークホールド回路、増幅回路で構成される。

(効果) 車載など過酷環境下での使用に耐える磁気センサとしての利用が期待

 本新技術による車載用磁気インピーダンスセンサは、

(1) 耐振動性や温度安定性に優れ、車載など過酷な環境下での高精度磁気センシングが可能である。
(2) 小型・軽量で消費電力が非常に小さい。
(3) センサと信号源磁石との距離を長くとれるため、取り付け工程を簡略化できる。

などの特徴を持つため、

(1) 各種車載用磁気センサ
(2) その他、過酷環境下で使用する高感度磁気センサ

などに利用されることが期待される。

(※)この発表についての問い合わせは、電話03(5214)8994 蔵並または山岸までご連絡下さい。

参考:本件に係る事前評価は、新技術審議会において行われ、評価結果などは別添の通りです。


This page updated on March 4, 1999

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